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1|光の進み方
1 物体が見えるしくみ
太陽や電灯といった物体が見えるのは,そこから出た光が私たちの目に入るためである。それ自身は光を出していない本や机などの物体が見えるのは,本や机などの物体に当たった光が表面ではね返って私たちの目にとどくためである(図2)。
物体があっても真っ暗で光がない場合は,目が慣れて見えるようになることはない。また,物体と目の間で光がさえぎられる場合なども,見ることはできない。
2 光の直進
太陽や電灯などのように,自分で光を出す物体を光源という。図3(a)のように,小さな穴やすき間を通りぬけた光源からの光を見ると,光はまっすぐに進んでいることがわかる。これを光の直進という。光の進み方を調べるには,光の道筋を1本の光(光線)と考えるとわかりやすい。
太陽や電球のように,あらゆる方向に光が広がる光源であっても,「光線」を考えると直進している。たとえば,ブラインドを通して壁に当たった日光の明るい部分からは,太陽光線が直進することがわかる。光は空気中だけではなく,水やガラスなどの中や,宇宙空間でも直進する。
図3 光源から直進する光線
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3 光の反射
鏡に光を当てたときのように,光がはね返る現象を光の【反射】という。反射する前の光を【入射光】,反射したあとの光を【反射光】という。また,入射光や反射光が,鏡の面に垂直な線との間につくる角を,それぞれ【入射角】,【反射角】という(図5)。
光の反射にはどのような決まりがあるのだろうか。
探究1 光の反射の決まり
準備
鏡,洗たくばさみ(2),方眼紙,光源装置,分度器,ものさし
注意!! 光源からの光を直接見ない。
① 方眼紙に直線を十字に引く。
② 一方の直線に沿って鏡を方眼紙に垂直に立てる。
③ 光を十字の中心に当て,光の道筋に×印をつける。
④ 鏡をはずし,×印を線で結ぶ。入射角と反射角をはかる。
入射角を変えて反射角を測定します。
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4 反射の法則と鏡にうつる物体
前ページ「探究1」を行うと,光の入射角と反射角の大きさは等しいことがわかる。これを光の反射の法則という(図6)。
物体から反射した光が目に入ったとき,私たちは目に入ってきた光の延長線上に物体があると感じる。このとき,たとえ光の延長線上に物体がなくとも,私たちは物体が見えたと感じる。たとえば,鏡にうつった物体が見えたと感じるのは,鏡に反射した光が目に入るからである❶(図7)。
入射角=反射角
注意!! 説明のための実験である。強い光を直接見てはいけない。
Aの人は鏡の真上から見て,左の図をかいていると考えましょう。
Bの人からは,鏡にうつった光源の像が見えます。
「光源」から出て鏡で反射した光は,鏡をはさんで対称の位置にある「光源の像」から出てきたように見える。
図8 鏡にうつる物体(光源)の見え方
❶ 鏡の大きさや位置,光の入射角によっては反射した光が目に入らず,物体は見えない。
⇒補充資料p.228「資料 カーブミラーはどんな鏡?」
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.228>
資料 カーブミラーはどんな鏡?
道路の曲がり角などに設置されているカーブミラーを見ると,ものが小さくうつり,家庭によくある鏡(平面鏡)よりも広い範囲が見えます。
カーブミラーに使われている鏡は,表面が球面になってふくらんだ「凸面鏡」です。凸面鏡でも,反射の法則にしたがって,鏡の面に立てた垂直線に対する入射角と反射角が等しくなります(図(a))。ただし,球面になっているため,平面鏡に比べて広い範囲をうつして見ることができます。
カーブミラーで広い範囲が見えることは,交通安全に役立ちますが,うつった像は形がゆがみ,ものが小さくうつるため距離感がつかみづらいという短所もあります。また,鏡と同じように左右が反転して見えるため,カーブミラー上にうつった自動車などが,どちらへ曲がろうとしているか勘違いしやすいので注意しましょう(図(b))。
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物体から出た光が鏡にうつるとき,図8のように物体(光源)からの光が鏡で反射し,あたかも鏡をはさんだ対称❶の位置から光が直進してくるように見える。このように,実際にはそこにない物体があるように見えるとき,それを物体の【像】という。
5 乱反射
図9のように,スポットライトを浴びた舞台の人を,私たちはどの位置からでも見ることができる。しかし,光の反射の法則によれば,舞台の人で反射した光は決まった位置でしか見えないはずである。
私たちの身のまわりにある物体の表面は,なめらかに見えても,拡大して見るとでこぼこしている。このため,物体に当たった光は,その表面でいろいろな方向に反射される。このような反射を【乱反射】という(図10)。この乱反射によって,光はあらゆる方向に広がるため,どの位置からでも物体を見ることができる。
❶ 1本の直線を折り目にして2つに折ったとき,折り目の両側の形がきちんと重なり合う図形を「線対称」な図形という。(小学校6年)
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6 物体がずれて見えるとき
図12のように,厚いガラスを通した物体がずれて見えることがある。これは光の性質と,私たちが物体を見るしくみに関係している。
私たちは,図12(a)②のように,光の延長線上に物体がなくとも,そこに物体があるように感じる。これも,実際にはそこにない物体があるように見えるため,物体の像といえる。
厚いガラスを通して見た物体は,(a)②の部分のようにずれて見える。このとき,①のように通常見た状態で目にとどく光と,②の光で道筋が異なる。
図12 ずれて見える物体と光の関係
7 光の屈折
光が物質と物質の境界面を通りぬけるとき,境界面で折れ曲がって進むことがある。これを光の【屈折】といい,屈折した光を【屈折光】という。入射光が境界面に垂直な線との間につくる角を【入射角】,屈折光が境界面に垂直な線との間につくる角を【屈折角】という(図13)。
生花をしていたときに,こんな現象を見つけました。
真っ直ぐな茎を水に入れたら,曲がって見えました。
器に水を注いだら,底にある剣山❶が見えるようになりました。
❶ 生け花のときに植物を立てるための道具。
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8 光の屈折の決まり
「探究2」から,光が空気中からガラスに入るとき・出るとき,入射角と屈折角には次のような関係があることがわかる。また,水の場合もガラスと同じように屈折が起こる(図16)。
●空気→ガラス(水)のとき
入射角>屈折角
●ガラス(水)→空気のとき
入射角<屈折角
*境界面に垂直に光が入るときは,光は屈折せず直進する。
9 全反射
光が水中から空気中に進むとき,入射角をしだいに大きくしていくと,屈折角も大きくなる。そして,入射角がある角度を超えると,光は水と空気の境界面で全部反射される。このような反射を全反射という(図18)。
入射角が,全反射の起こる角度より小さい場合,アのように入射光の一部が反射する。
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資料 全反射の利用
光の全反射を利用して,光を遠方まで伝達できるように作られたのが光ファイバーです。光ファイバーは髪の毛ほどの太さで,2種類のガラスの繊維でできています。光ファイバーの中に光を通すと,光は2種類のガラスの境界面で全反射をくり返しながら進んでいきます。
光ファイバーは,光通信のケーブルなどに利用されています。
注意!! レーザー光を直接見ない。
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(a)のように,鉛筆の両端で反射した光が鏡に反射し,目に入ると考えると,物体をうつすのに必要な鏡の長さは,鉛筆の長さと同じである必要はありません。このように考えると,(b)で,自分の全身をうつすために必要な鏡の長さは,どのくらいになるでしょうか。
直角に2枚組み合わせた鏡で,実験してみましょう。光の進み方がわかります。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.112>
10 白色光と色の成分
太陽や電灯の光は白色光とよばれ,いろいろな色の光をふくんでいる。白色光をプリズム(三角柱のガラス)に通すと,いろいろな色の光が分かれる(図24(a))。これは,光の入射角が同じでも,色によって屈折角がわずかにちがうからである。
私たちが見ている色も,白色光にふくまれる色の光が関係している。図25(a) では,赤色の光が紙の表面で強く反射され,それ以外の色の光の多くは紙の表面で吸収される。このため,紙が赤色に見えている。
図25 物体の色と反射
(d)白色の紙は,すべての色を反射している。
ニュース
※科学ニュースの更新は2025年4月を目処にはじまります。
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- 【2100年の「虹予報」が発表される 虹が出る日は増加】 2023年3月1日大空には,さまざまな虹が現れます。鮮やかな色のアーチを描いて街の上にかかるものから,ホースで撒く水の中にかかる一瞬のものまで,サイズも場所もさまざま。けれどどの虹も,基本的には空気中の水滴で日光が屈折することで見える,ということは共通しています。 では,昨今問題となっている気候変動は,虹の見え方に影響を及ぼすのでしょうか。コンピュータモデルを用いて未来の虹の発生状況をシミュレートする研究が行われました。その結果,気候変動の影響により,地域によって虹が増えるところと減るところが出ることがわかりました。さらに,地球の温度が上がるほど,地球全体では雲が薄くなり,虹が出やすくなるという結果になりました。 もと記事リンク 論文