※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.109>
2|自然界における生物の増減
1 生物量
生物を有機物の集まりととらえ,ある範囲内で生きている生産者と消費者の生物量(生物の集まりを質量などで表した値)を比べてみる。すると,図11のように,一次消費者の生物量は生産者よりはるかに小さく,二次消費者の生物量は一次消費者より小さいことがわかる。このとき,それぞれの段階の生物量を食物連鎖の順に重ねていくと,全体の形はピラミッドのようになる(図12)。
図12のように,生産者(土中では落ち葉など)が非常に多くあり,森も海も土中も,ピラミッドのようになる点は共通しています。
生産者の量が減ってしまったら,消費者はどうなるのかな。
❶ 出典: W.M. Kemp, W.R. Boynton, Productivity, trophic structure, and energy flow in the steady-state ecosystems of Silver Springs, Florida, Ecological Modelling, 2004
※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.110>
2 生物量のつり合い
たとえば,動物のある種類について考えます。食物の量が十分にあると,個体がどんどん増えていくことが考えられます。すると,今度は食物が足りなくなり,同じ種類の個体の間で食物のうばい合いが生じます。個体が少なければ,食物が十分にあることになり,今度は増えやすくなります。このように,動物の食物1つとっても,生物量が増減することが考えられます。
動物の個体数は,さまざまな環境の要素のため変動している。このように,個体数からでもおおまかな生物量の変動を知ることができる。(ロイヤル島,アメリカ)
図13 個体数が変動する例❶
グラフの単位は千頭。カナダオオヤマネコの食物はカンジキウサギであり,それぞれの個体数の関係によりグラフのような変動が現れる。(カナダの調査)
図14 「食べる・食べられる」の 関係にある動物の個体数❷
※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.111>
生態系では,ある生物が大発生したり,大きく減ったりすることもあるが,そのような場合でも,図15のように生物量が増減して,再びつり合いのとれた状態になる❶。一般に,ある生物の生物量が増え続けたり,まったくなくなったりすることはなく,多くの種類の生物がたがいに影響し合いながら,1つの地域に共存している。
❶ 人間の活動によって,このつり合いがくずれることが問題になっている。くわしくは最終章であつかう。
※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.112>
SDGsを意識して脱炭素社会へ 炭素の大循環
光合成の原料(水や二酸化炭素を構成する水素,酸素,炭素)は,地球上に無尽蔵にあるわけではありません。これらの物質は,生物が地球上に発生して以降,生物や大地の変動などのはたらきによって地球上を循環しながら,生物に何度も使われているといえます。
炭素に注目すると,地層ができるような長い時間の中では,その一部は地球表層にたくわえられます。たとえば,石炭は植物に由来し,石油のもととなる原油は,海底に積もった生物の死がいに由来します。つまり,炭素が循環の途中で地層にとどまっていることになります。
しかし,炭素循環の途中で地層中にとどまっていた太古の有機物を,私たちはエネルギー資源(化石燃料)として大量消費し,二酸化炭素として大気中に排出しています。この二酸化炭素が地球温暖化の一因となっているため,私たちは化石燃料にたよらない社会を模索しています。
※ 出典:Encyclopedia of Paleoclimatology and Ancient Environments, Springer, 2009
ニュース
- 【沈んだクジラの骨が支える 鯨骨生物群集とは】 2023年3月1日1987年,深海の探査を行っていた研究者が,深海の海底に沈んだクジラの骨と,それに群がる特異な生物群集を偶然発見し,「鯨骨生物群集」と名付けました。 その後の研究で,クジラの死骸に腐肉を食べるサメなどの生物や,骨から栄養を取り出す貝類などが集まるのは最初の2年ほどで,その後はクジラの骨に含まれる油分などを栄養とする微生物から始まる特殊な生態系が成立し,数十年ほども続くことがわかりました。微生物がクジラの油を分解すると,副産物として硫化水素が発生します。このため,硫化水素をエネルギー源とできる特殊な生物しか生息できません。しかし,鯨骨生物群集の生物がどうやってこのような生態になったのかという謎は,まだ解明されていません。 もと記事リンク
- 【鯨骨生物群集が解き明かす!? 二つの「飛び石」仮説】 2023年3月1日クジラの骨を基盤として成り立つ「鯨骨生物群集」の生き物たちは,硫化水素をエネルギー源とするなど,特殊な生態をもちます。このような生物がどこから,どうやってクジラの骨にやってきたのかについて,二つの「飛び石仮説」が唱えられています。 ひとつは「地理的『飛び石』仮説」。深海には,熱水噴出孔など,酸素の代わりに硫化水素をエネルギー源とした生態系が成立している環境があります。そのような場所は飛び飛びに存在するものの,世界中で共通した種が発見されます。その理由は,クジラの骨を「飛び石」,つまり中継地点として生息を広げているから,という仮説です。 もうひとつは「進化的『飛び石』仮説」。沿岸に生息する生物のなかから,鯨骨を「飛び石」として,深海の熱水噴出孔に適応した生物が進化した,という仮説です。この仮説には,熱水噴出孔に適応した生物の方がクジラより古い時代に出現した,という弱点がありましたが,近年,クビナガリュウの骨でも「竜骨生物群集」と呼ぶべき生態系ができていたということがわかり,進化の道筋が解き明かされつつあります。 もと記事リンク
- 【カンジキウサギ,その知られざる生態】 2023年3月1日中学校理科でウサギと言えば,「カンジキウサギとオオヤマネコの個体数変動のグラフ」でしょう。 カンジキウサギは,北アメリカの雪深い地域に暮らすウサギです。カンジキの名前の通り,雪に沈みにくい大きな足裏をもち,強い脚で一日約8キロも駆け回ることができます。とはいえ厳冬期には木々も葉を落とし,草は分厚い雪の下。厳しい冬を乗り切るため,カンジキウサギはなんと肉食をします。狩りをするのではなく死体の肉を食べる腐肉食ですが,ときには天敵のオオヤマネコの肉を食べることもあるそうです。 近年の研究では,個体数が激増した後に減少する理由として,エサとなる植物の減少やオオヤマネコによる捕食に加えて,生息地に肉食獣が多いとストレスを感じてあまり繁殖しなくなるという説が唱えられています。 もと記事リンク
- 【化石を「食べる」生物が深海で見つかる】 2023年3月1日氷に覆われた北極海の真ん中の海底は,ほとんど生物の食べられるものが存在しない場所です。しかしそんな場所で,海底を覆い尽くすほどのカイメンの群れが発見されました。いったい何を食べているのか分析を重ねた結果,このカイメンはかつて海底火山のまわりで繁栄したチューブワームの化石を,体内の共生細菌の力を借りて食べていることがわかりました。このように化石を食べる生物が発見されたのは,世界で初めてです。 もと記事リンク 論文