※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.132>
1|電流・電圧・抵抗
モーターを導線で乾電池につなぐと,モーターが回る。これは,乾電池の+極から−極まで電流が流れる道すじができたからである。このような電流が流れる道すじを【回路(電気回路)】という(図1)。回路を図に表すとき,モデル図として,電気用図記号(図2)を用いる。このような記号で回路を表したものを【回路図】という。
図2 回路図の記号
2 電流と電圧
電流には流れる向きがあり,「電池の+ 極から出て−極に向かう」と考えるように決められている。たとえば,発光ダイオード(図3)は,豆電球とは異なり,端子に❶電池を正しい向きにつながないと光らない。また,モーターは,電池の向きを逆にしてつなぐと回転する向きも逆になる。
電流の大きさは電流計を使ってはかることができる。電流の単位には,【アンペア】(記号A)や【ミリアンペア】(記号mA)が使われ,1mAは1A の1000 分の1 である。
1 mA =1/1000A = 0.001A
❶ 電流の出入り口となる金具を端子という。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.133>
電池には「1.5V」などのような表示がされている(図4)。この「V」という記号はボルト(記号V)とよみ,電圧(回路に電流を流そうとするはたらき)の大きさを表している。電圧の大きさは電圧計ではかることができる。 電圧,電流の大きさをはかって調べてみよう。
探究1 電流と電圧の決まり
電池を出た電流は,豆電球で使われるから電池にもどってきたときは小さくなるのかな?
豆電球を流れる前とあとの電流の大きさをはかってみよう。
中学校では「電流計」「電圧計」という器具を使い,電流や電圧の大きさを正確にはかります。それぞれの使い方については,p.248,249 を見ましょう。
準備
豆電球(1),乾電池(1),クリップ付き導線,電流計,電圧計
① 豆電球1個,乾電池1個の回路で,豆電球の前後の電流の大きさをはかる。
② 豆電球,乾電池などの区間の電圧をはかる。
私の班の結果を見ると,豆電球を流れる前とあとで電流の値が変わってる。
誤差を考えましょう。クリップのつなぎ方ひとつで電流計の値は,わずかに変わるし,目盛りを読んだ人がちがえば,読み方のくせがちがうかもしれません。電流計自体にも誤差があります。数mAの差があったとしても,真の値(不正確さを仮に取り除いたとしたときの値)までもちがうとはかぎりません。
電流は回路のある点ではかりますが,電圧は区間ではかります。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.248>
基本操作 電流計の使い方
回路の電流や電圧をはかったとき,予想の値とずいぶんちがうなと思ったら,まずクリップのはさみかたを見直します。
クリップは端子にしっかりかんでいますか?
回路のスイッチを切った状態で,回路の電流の大きさを測定したい部分に,電流計をはさみこむようにつなぐ(このようなつなぎ方を「直列につなぐ」という)。
このとき,電流計の+端子を電源(電池)の+極側に,−端子を電源の−極側につなぐ。
ポイント
目盛りを正面から見て読み取る。
注意!! 電流計を電池だけに直接つないだり,豆電球の両端につないだりしない。大きな電流が流れてこわれてしまう。
注意!! 指針が反対向きにふれたら,すぐスイッチを切って,正しくつなぎ直す。正しくつながないと電流計がこわれてしまう。
注意!! 指針がふり切れたら,すぐスイッチを切って,正しくつなぎ直す。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.134>
3 電流と電圧
探究1から,電流は回路の中を回っていて,減るわけではないことがわかる。また,豆電球にかかっている(加わっている)電圧と乾電池の電圧は等しいことがわかる。
電圧が大きいほど,回路に電流を流すはたらきも大きくなる。図6 のように,電圧1.5V の電池をつないだときにほとんど点灯しない豆電球も,電圧9V の電池に取りかえると,回路に電流を流すはたらきが大きくなり,豆電球が明るく点灯する。このとき,豆電球にかかっている電圧が大きいという。
電流は,豆電球を過ぎて減るわけではないんだね。
導線だけのとき電圧はかからないんだね。
回路に流れる電流は水流のモデルにたとえることができる。このとき,乾電池の電圧は水をくみ上げるポンプにたとえることができ,豆電球にかかる電圧は,水の落差にたとえられる。
図6 電圧がちがうと電流を流すはたらきが異なる
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.135>
3 電気抵抗
豆電球は,種類により「電流の流れにくさ」が異なり,図7のように,同じ電圧でも豆電球によって明るさが異なる。これは,より電流の流れにくい豆電球Aでは,回路に流れる電流が少ないためである。このような「電流の流れにくさ」を【電気抵抗】または単に【抵抗】とよぶ。
電圧,電流,抵抗の関係を,どのように科学的に探究できるだろうか。
図7 豆電球を取りかえる
探究2 電圧と電流の関係
実際に回路の各部分に流れるのが「電流」,電圧は「電流を流そうとするはたらき」,抵抗は「電流の流れにくさ」,この3つに関係があるのかな?
豆電球の中には金属の線(フィラメント)が入っています。このフィラメントに抵抗があるのですね。
抵抗器にかかる電圧の大きさと,流れる電流の大きさには,どのような関係があるか。それを調べるために,どのような実験を行えばよいか。
「電流の流れにくさ」ということは,電圧と逆のはたらきなのかな。
電圧を大きくすると,豆電球は明るく光る。つまり電流も大きくなるのではないかな。
電流と電圧の関係に,抵抗の大きさがどのように影響するのだろう。
この実験では,電圧と電流の関係を正確に調べるため,電圧の大きさを細かく調節できる電源装置(→p.244)を使います。また,「電流の流れにくさ」を調べるのに適している「抵抗器」を使います。抵抗器には金属線が入っています。
1種類の抵抗器を使って,電圧の大きさを変化させながら電流の大きさをはかればいいね。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.136>
準備
電源装置,抵抗器(2種類以上),スイッチ,クリップつき導線,電流計,電圧計
デジタル電流計・電圧計を使ってもよいでしょう。
1.回路をつくる
図のような回路をつくり,電流計と電圧計をつなぐ。
注意!! 抵抗器や電熱線に電流を流すと発熱するので,やけどをしないように注意し,測定のときにだけ電流を流すようにする。
クリップと端子がしっかりつながっていないことがあります。クリップに端子をかませたあと,かみがあまくないか確かめます。
2.電圧と電流の大きさをはかる
電源装置の電圧調整つまみを回していき,電圧計の値を見ながら,電圧の大きさを,1.0V,2.0V,3.0Vと,6.0Vまで変えていく。それぞれのときの電圧と電流の大きさをはかる。
ポイント
電源装置で調整した電圧の値と,抵抗器にかかる実際の電圧の値はわずかに異なることがあるため,実験結果は電圧計で読み取った値を用いる。
3.抵抗器を取りかえる
抵抗器を取りかえて,2.と同じ実験を行う。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.244>
基本操作 電源装置の使い方
① 電圧調整つまみを0に合わせておく。
② 電源スイッチが切れていることを確認し,プラグをコンセントに接続する。(直流・交流(→p.174)の切りかえスイッチがある場合は,スイッチが直流になっていることを確認する)
③ 端子の+,−をまちがえないように回路につなぐ。
④ 回路の配線を点検してからスイッチを入れ,電圧調整つまみを動かして必要な大きさの電圧にする。
⑤ 実験が終わったら,電圧調整つまみを0に合わせて,スイッチを切る。
⑥ プラグをコンセントからぬく。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.248>
基本操作 電流計の使い方
回路の電流や電圧をはかったとき,予想の値とずいぶんちがうなと思ったら,まずクリップのはさみかたを見直します。
クリップは端子にしっかりかんでいますか?
回路のスイッチを切った状態で,回路の電流の大きさを測定したい部分に,電流計をはさみこむようにつなぐ(このようなつなぎ方を「直列につなぐ」という)。
このとき,電流計の+端子を電源(電池)の+極側に,−端子を電源の−極側につなぐ。
ポイント
目盛りを正面から見て読み取る。
注意!! 電流計を電池だけに直接つないだり,豆電球の両端につないだりしない。大きな電流が流れてこわれてしまう。
注意!! 指針が反対向きにふれたら,すぐスイッチを切って,正しくつなぎ直す。正しくつながないと電流計がこわれてしまう。
注意!! 指針がふり切れたら,すぐスイッチを切って,正しくつなぎ直す。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.249>
基本操作 電圧計の使い方
回路のスイッチを切った状態で,回路の電圧の大きさを測定したい部分に,電圧計を並列につなぐ。
このとき,電圧計の+端子を電源(電池)の+極側に,ー端子を電源のー極側につなぐ。
ポイント
目盛りを正面から見て読み取る。
注意!! 電圧計は回路に並列につなぐ。直列につなぐと,回路にはほとんど電流が流れなくなり,電圧をはかることができない。
注意!! 指針が反対向きにふれたり,指針がふり切れたりした場合,スイッチを切って,正しくつなぎ直す。
一般的な電流計,電圧計は,計測できる最大値に対して機器の誤差が約2.5%あります。たとえば,15Vの端子ではかった場合,誤差は 15 × 0.025 = 0.375 Vということです。
このような誤差も考えて探究の考察を進めましょう。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.137>
ポイント
① 測定した電圧と電流の大きさを表にまとめる。
② 横軸には人が変化させた量(電圧)を,縦軸には,それにともなって変化した量(電流)を取り,表にまとめた結果をグラフに表す。
「変化させる量」「変化する量」を意識しましょう。 グラフの横軸は「変化させ量」を,縦軸は「変化する量」を取ります。
ポイント
グラフから,抵抗器にかかる電圧の大きさと流れる電流の大きさにはどのような関係があるか。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.138>
探究2 結果から考察する
- 表1をもとにしたグラフ(図8)は原点を通る直線となり,電圧の大きさが2倍,3倍になると,電流の大きさも2倍,3倍になる。このことから,電圧の大きさと電流の大きさは比例の関係にあるといえる。
- 抵抗器アと抵抗器イに,たとえば同じ3Vの電圧をかけたとき,イの抵抗器に流れる電流が小さい。このことから,抵抗器にある電圧をかけたとき,抵抗器イは「電流の流れにくさ」が大きいということができる。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.139>
4 オームの法則
金属線(または抵抗器)も電気抵抗(抵抗)をもっている。一般に,金属線に流れる電流の大きさは,金属線にかかる電圧に比例する。この関係を【オームの法則】といい,次の式で表すことができる。
$$ 電流I〔A〕^{❶} =\frac{電圧 V〔V〕 }{抵抗 R〔Ω〕} $$
一般に変数𝑰,𝑽,𝑹には単位もふくまれていますが,ここでは説明のために単位〔A〕,〔V〕,〔Ω〕を書き加えてあります。
ここで,電流 𝑰 の単位はA,電圧 𝑽 の単位はV,抵抗 𝑹 の単位はΩ(オーム)である。 1Vの電圧で1Aの電流が流れる抵抗器の抵抗が1Ωと決められている。
また,上の式を変形すると次のようになる。
$$ 抵抗 R〔Ω〕 =\frac{電圧 V〔V〕 }{電流I〔A〕} $$
$$ 電圧V〔V〕 = 抵抗 R〔Ω〕 × 電流I〔A〕^{❷} $$
p.266の例題で,抵抗の計算に慣れておきましょう。
これらの式から,電流 𝑰 ,電圧 𝑽 ,抵抗 𝑹 のうち2つの値がわかれば,残りの1つの値が決まることがわかる(図9)。
図9 電圧・電流・抵抗の関係の例
19世紀に,ドイツの物理学者オームは,金属線に流れる電流は電圧に比例することを発見しました。発表したときは注目されませんでしたが,やがて評価され,後に抵抗の単位に名前が取り上げられます。なお,名前はOhmなので,単位はOとなるところですが,数字のゼロとまちがえやすくなるため,似た形のオメガ(Ω,ギリシア語)を使うことに決められました。
❶ 電流は文字 𝑰 ,電圧は文字 𝑽 ,抵抗は文字 𝑹 を使って表すことが多い。英語で「強さ」を表すIntensity of current,「電圧」を表すVoltage,「抵抗」を表すResistanceの頭文字である。
ニュース
※科学ニュースの更新は2025年4月を目処にはじまります。
- 【電気の力で塩味1.5倍! 減塩食品がおいしくなるスプーンとお椀が開発される】 2023年3月1日ラーメン,カレー,みそ汁など,おいしいものは味も濃い。日本人はWHO(世界保健機関)が掲げる食塩摂取基準に対し,平均で約2倍もの食塩を摂取しています。 そのため,塩分を控えた減塩食では,味に不満を感じることが多いようです。 今回発表されたスプーンとお椀は,そんな悩みに科学の力でアプローチした発明です。電源と制御用コンピュータの内蔵されたデバイスから,人体に影響しないごく微弱な電流を特殊な波形で流すことにより,脳が感じる食品の塩味を増強させます。実験では,減塩食の塩味を約1.5倍強く感じたという結果が出ているそうです。これを使えば,もし入院したときにも,薄味の病院食をおいしく感じられる,かも……? もと記事リンク