※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.170>
2|地層から過去を読みとる
1 堆積岩からわかること
堆積岩や,そこにふくまれる化石は,地層が堆積した当時の環境や年代を知る手がかりになる。
堆積岩の種類は,土砂が堆積する場所と関係がある。たとえば,地層がれき岩でできていれば,水の流れの速い場所であったと考えられる❶。地層が泥岩でできていれば,水の動きの少ない場所であったと考えられる❷(図12)。地層中に凝灰岩があれば,当時火山活動があったことがわかる。
図12 現在もつくられている地層
2 示相化石からわかること
堆積岩の中には,堆積した当時すんでいた生物の死がいや生活したあとなどが,【化石】となって残っていることがある(図13)。すんでいる環境の明らかな生物の化石(図14のイヌブナ,シジミ,サンゴなど)が堆積岩から見つかれば,地層がどのような環境で堆積したかがわかる。このように,地層が堆積した当時の環境を知る手がかりとなる化石を【示相化石】という。
図13 化石のでき方
❶ 扇状地,川底,陸地に近い海岸などの環境があてはまる。
❷ 沖合,湾,湖などの環境があてはまる。
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河川や河口でできた地層とその中の化石
浅い海でできた地層とその中の化石
❶ サンゴ礁は,サンゴというクラゲのなかまの動物がつくり,水温が25〜30℃のきれいな暖かく浅い海にできる。
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3 示準化石と地質年代
長い地球の歴史の中では,新しい生物が出現したり❶,栄えたり,絶滅したりしている❷。たとえば,サンヨウチュウやアンモナイトは,ある期間だけ世界中の海に広く分布していた。このような化石が地層にふくまれていれば,その地層の堆積した年代を推定できる。このような化石を【示準化石】という(図15)。
❶ 生物は,長い期間世代を重ねるうちに姿がかわり,新しい種類がうまれる。くわしくは3年生で学習する。
❷ ここでは,ある種類の生物が,地球上からまったくいなくなってしまうことを指している。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.173>
示準化石などをもとにして,地球の歴史はいくつかの時代に区分されている。これを【地質年代】という。地質年代は,古生代,中生代,新生代❶に分けられている。
古生代の初期の化石は,海にすむ生物のものしか見つからない。しかし,のちの時代になるにつれて,陸にすむ生物の化石も見つかるようになり,その種類は増えていく。
発展
❶ 中生代は,さらに三畳紀,ジュラ紀,白亜紀に分けられる。新生代は,さらに古第三紀,新第三紀,第四紀に分けられる。
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資料 昔は見つからないと言われていた
●中生代の地層から出る恐竜化石
恐竜は,中生代の約2億3000万年前に現れ,その後1億6000万年もの間世界中で栄えて,中生代の終わり(約6600万年前)とともに絶滅しました。
日本では恐竜化石は見つからないと,かつて考えられたときもありました。しかし,1978年に岩手県ではじめて発見され,その後日本各地の中生代の地層で恐竜化石が次々と発見されていきました。
その中でも,富山・石川・福井・岐阜の4県にまたがって,中生代にユーラシア大陸の沼地でできた日本で希少な地層があり,恐竜の全身骨格やあし跡など状態の良い化石が多く発掘されています。また,北海道の各地では,中生代に海底で堆積したと考えられる地層から多くの恐竜化石が発掘されてきました。さらに全国19道県にわたり,恐竜化石が発掘されています。
●趣味の発掘で発見された恐竜化石のボーンベッド
恐竜化石の発見は現在も続いています。2021年に鹿児島県の獅子島では,趣味で化石採集をしていた一般男性によって,は虫類の骨と思われる大量の化石をふくむ地層が発見されました。骨や骨の断片の化石を大量にふくむ地層は「ボーンベッド(bone bed,骨の地層)」とよばれます。大学の研究者が調べたところ,この層の化石の多くは恐竜であることがわかりました。
恐竜の化石が見つかった地層の多くは保護されて,一般の人が勝手に発掘することはできません。しかし,そのような地層でも,博物館などで化石発掘を体験できるもよおしを行うことがあります。実際に小学生や中学生が恐竜化石を発掘し,その化石が研究に重要なものであった例もあります。未発見の恐竜化石はまだまだ日本全国にうまっているようです。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.174>
4 地層の広がり
地層の重なりを柱のように表した図を【柱状図】という(図16)。
地層は,広く層状に堆積してできるので,水平方向にも広がっている。その広がりは,柱状図を比較することでわかる。
柱状図を比較したとき,特徴的な化石や岩石をふくむ層,または火山灰をふくむ層があると,離れた場所でも同じ時期に堆積した層であることを知る目印になる。このような目印になる層を【かぎ層】という。
同じかぎ層があれば離れた場所の地層のつながりがわかる。かぎ層や堆積岩の種類をもとに地層を調べると,その地層が堆積した当時の環境や,地層がいつ堆積したか,地層がどこまで広がっているかなどの過去のようすを復元することができる。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.236>
資料 海底はどこまで掘れる
地層などの調査には,地中に金属のパイプ(筒)を差しこんで,地中深くの試料を連続して採取するという技術が使われています。
●ボーリング調査
大きな建物を建てるときなどには,しっかりした地盤が必要です。また,地下に活断層があると地震が起きたときに直上の建物に大きな害をあたえるので,あらかじめ調べておく必要があります。地層のようすを調べるため,地面から地下にパイプをさして地層の試料を取り出す調査を「ボーリング調査」といい,取り出した試料を「ボーリング試料」といいます。
ボーリング試料は,行った地点の真下のようすしかわかりませんが,複数の地点のボーリング試料を得ると,地層の広がりを推定することもできます。通常のボーリング調査で調べられるのは,地下100m程度までの深さです。
●深海の地質調査
ボーリング調査のような地下を掘削して行う地質調査には,科学的な研究目的によって,海底下を対象として深くまで行われることもあります。中でも,日本の地球深部探査船「ちきゅう」は,陸上でのボーリング調査に比べて,桁ちがいの深さまで海底下を掘り,調査することができます。(図(b))。深い海底に巨大なパイプを下ろすための大きなやぐらや,掘削機器をつんでいて,海底下3000m以上の深さに到達した実績があります。
「ちきゅう」による海底下の地質調査により,2011年の東北地方太平洋沖地震を引き起こしたと考えられるプレート境界断層からの試料が採取されました。その試料やその他のデータの解析結果から,地震時のプレート境界断層がとてもすべりやすかったことがわかりました。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.176>
探究5 地域の過去を読みとる
この単元での今までの学習をいかして,地層から何が復元できるか。
私たちのすんでいる大地は,さまざまな種類の火成岩や堆積岩などが分布してできています。これまでに学んだことを活用し,あなたのすむ地域の大地を観察して,過去のようすを読みとりましょう。
準備
移植ごて,岩石ハンマー,軍手,保護眼鏡,採集用袋(びん),ルーペ,スケール(巻き尺),方位磁針,地形図,スケッチ用具など
注意!!
危険な場所には近づかない。
がけからの落石に注意する。
ハンマーを使うときは,軍手をして,保護めがねをつけ,まわりに人がいないか確認する。
試料の採取量は最少量にする。
1.観察地点を確認する
地形図上の露頭の場所に,印と日付などを書く。
2.遠くから地層を観察する
- 地層のようすを大まかにスケッチする。スケッチをするときは,必要なことだけをはっきりした線でかく。気づいたことをスケッチにかき加える。
- 断層やしゅう曲(→p.191)があれば,そのようすをスケッチする。
- カメラで撮影してもよい。
3.近くから地層を観察する
- 柱状図を作成し,それぞれの層の厚さ,色,堆積岩の粒の大きさなどをかく。
- 化石があれば,何がどのように埋まっているかなどをかく。
4.試料を採取する
- 採取した試料を袋に入れ,袋に地名,日付,地層のどの位置から採取したかをかく。
川岸や海岸に大きな露頭がよく見られるのは,侵食のはたらきが大きいためですね。そうでなくても,道路のわきにちょっとした崖があり,岩石が見られることもあります。そこでも観察できますよね。
- 地層の重なりをスケッチや柱状図で表す。
- 地層がどのような岩石でできているか,化石があるかなどを記録する。
観察した結果から,地層がどのようにできたか考える。
地層が曲がっていたり切れたりしていた場合は,観察している地層のできかたを考えてみましょう。
観察に行くときの服装は,長袖・長ズボンにして,危険な動植物にも気をつけます(→p.208)。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.208>
基本操作 野外調査の注意点
- 野外に出るときは,服装や危険な生物に注意する。服装は,長そで,長ズボン,ぼうしを身に着け,すり傷や虫(カやダニ)などを防ぐ。
- かぶれる植物を知り,さわらないようにする。
- ハチが飛んできても動かずにやりすごす。追いはらおうとしたり,走って逃げたりすると,ハチを刺激して刺される可能性が高まる。
- ヘビを見かけたら,近寄らずに迂回する。害のない種類がほとんどであるが,マムシやハブは特に危険である。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.209>
基本操作 ルーペの使い方
① レンズを目に近づけて固定する。
② 観察するものを前後に動かして,よく見える位置を探す。
観察するものが動かせないときには,顔を前後に移動させます。
注意!! ルーペで太陽を見たり,観察するものを太陽の方にかざしてルーペで見たりしてはいけない。失明の危険がある。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.177>
実際の地層を調べてまとめました。
<目的> 町内に貝化石が多く採取できる崖がある。そこで化石の種類や地層のようすを調べる。
<露頭の場所> 青森県おいらせ町
<結果> 露頭の幅は約200mで,高さは約19mであった。ほぼ水平に堆積していた。
<考察> いちばん下の層には,カキの化石が多かったので,この層がたまったときの環境は浅い内湾だと考えられる。
火山灰は,どこから運ばれたのだろう。火山灰を調べて,もとの火山をつきとめたいな。
シカの角はどのように地層にうもれたのだろう。化石のでき方を考えてみよう。
堆積物や化石から,もっとくわしい環境がわからないかな。
ニュース
※科学ニュースの更新は2025年4月を目処にはじまります。
- 【淡路島で発見された恐竜化石,新属新種の恐竜だった】 2023年3月1日2004年に淡路島(兵庫県洲本市)で発見された恐竜の化石が,原始的なハドロサウルス科の新属新種の恐竜であることが分かり,「Yamatosaurus izanagii ヤマトサウルス・イザナギイ(伊弉諾の倭竜という意)」と命名されました。 ハドロサウルスの仲間は,白亜紀後期の後半以降,非常に繁栄した恐竜です。 今回の研究により,北米東部やアジアで発祥したハドロサウルス科の恐竜のうち,北米にいたものは一度絶滅し,アジアから世界へ広がった可能性があること,また最初期(約9,500万年前)に大繁栄した原始的なハドロサウルス科の恐竜の一部が東アジアで生き残り,その後多様化したという進化の道筋が新たに示唆されました。 もと記事リンク 論文
- 【8億3000万年前から生き続けている? 古代の岩塩に閉じ込められた生物】 2023年3月1日アメリカのウェストバージニア大学のグループが非破壊的な方法で岩塩を調査したところ,岩塩の中に古代の生物らしき有機物の反応を発見しました。 有機物が発見された岩塩は,少量の液体を閉じ込めたまま結晶となっていました。この液体の中に発見された有機物の大きさ・形状や,紫外線を当てたときの蛍光反応を調べたところ,一部の有機物について原核生物や真核生物の細胞と特徴が一致することが分かりました。サンプルの岩塩の中には8億3000万年前のものもあり,岩塩の中にまだ生きている古代の微生物がいる可能性もあるとのことです。 もと記事リンク 論文
- 【肉食恐竜が、大型と小型なのはなぜ? ようやく解明】 2023年3月1日現生の肉食哺乳類は、体重4キロのオオミミギツネのような小型から体重190キロに達する大型のライオンまで、様々な大きさの種が存在します。しかし肉食恐竜は、大型と小型に二極化され、100~1000キロの中型の種が極めて少ないという現象が見られます。 これは長らく謎とされてきましたが,大型肉食恐竜は,成長途中で中型肉食恐竜と同じくらいの大きさとなる期間があり,餌を奪い合う関係となるため,中型肉食恐竜が存在できない,というシミュレーション結果が発表されました。 もと記事リンク
- 【世界最古の「貝の模様」,福井で見つかる】 2023年3月1日アサリなどで身近な二枚貝では,貝殻の模様が化石として残ることがあります。今回,福井で発見された白亜紀の淡水二枚貝の化石には,2枚の貝殻がくっついた部分から放射状に伸びる筋状の模様と,同心円状の黒い帯のような模様が見られます。このような模様,お味噌汁のアサリでもよく見かけませんか? この化石から,二枚貝の色彩パターンがずっと変わっていない可能性が示唆されました。 なお,模様の残っている淡水二枚貝の化石は,世界で2例目,日本初。これまで見つかっていた化石の記録(中新世)を1億年以上さかのぼり,世界最古の「模様」の発見です。 もと記事リンク 論文
- 【アングラ収蔵庫トーク ―博物館の裏側,見せちゃいます―】 2023年3月1日博物館の収蔵庫。それは一般に公開されない,博物館の裏側です。大阪の長居公園にある大阪市立自然史博物館の収蔵庫は,博物館の地下にあります。 その地下に眠っている大量の標本の中にダイブして,地下から引っ張り出した標本に光を当てる動画シリーズ「アングラ収蔵庫トーク」。ディープな内容に加えて,普段はなかなか入ることのできない収蔵庫からの配信なので,整然と……ばかりでもない,博物館の裏側を体感できる映像となっています。現在#17まで公開中です。 もと記事リンク