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※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.182>

2|地震のゆれ

 地震の発生と波

 地震の発生した地下の場所を【震源】といい,その真上の地表の地点を【震央】という(図5)。地震のゆれは波❶の1種であり,震源からのゆれが,岩石中を波として伝わることで広がる。

 地震のゆれのようすは地震計で記録される。その記録(図6)から,地震のゆれは大きく2つに分けられることがわかる。震源からはじめに伝わる小さなゆれを【初期微動】といい,その後に伝わる大きなゆれを【主要動】という。次の探究6で示す記録は初期微動のはじまった時刻である。

 この2つのゆれのちがいは,速さの異なる2種類の地震の波が震源から伝わることを表している。初期微動は速く伝わる波【P波】によるゆれであり,主要動は遅く伝わる波【S波】によるゆれである❷。また,P波とS波の到達時刻の差を初期微動継続時間という。

地震とともに地震計がゆれても,おもりと針だけはほとんど動かない。このため,記録紙に地震のゆれが記録できる。現在は電子機器で地震を記録している。

図4 地震計の原理

断層の破壊が始まった点が「震源」である。実際は一点でなく,ある程度の範囲があり,震源となった断層付近で,岩石が破壊された範囲を「震源域」という。報道などで使われる「震源の深さ」とは,震央と震源の距離のことである。また,ある観測地点と震源の距離(震源距離)という場合は,観測地点と震源の直線距離であり,観測地点と震央との距離とは異なることに気をつける。

図5 震源と震央

地震のはじめのカタカタという小さなゆれはP波による初期微動で,ユサユサという大きなゆれはS波による主要動である。震央が近いときは,初期微動は下からドンとつくようなゆれに感じられる。

図6 地震計による地震のゆれの記録

❶ 振動が伝わっていく現象を波という(→p.123)。

❷ P波の名はprimary wave(1番目の波),S波の名はsecondary wave(2番目の波)という意味である。

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※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.183>

 私たちは緊急地震速報を受け取ることがある。緊急地震速報は,震源に近い地震計がP波を観測し,その情報から各地でのS波の到達時刻と震度を予想して知らせるしくみである。地震の波はどのように震源からまわりに広がっていくか,どのように科学的に探究できるだろうか。

 探究6   地震の波の伝わり方
気づき

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地震が起こると,私たちはテレビやスマートフォンなどで情報を受け取ることができます。地震が起こってから,そのゆれはどのようにまわりに広がっていくのでしょうか。

図7 テレビの地震情報の例

課題

地震が起こり,その波が広がっていくとき,どのような決まりがあるか。

仮説

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波は最初速く広がるけど,だんだん広がり方が遅くなるのではないかな?

波の広がる速さは一定ではないかな。

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いちばん早くゆれはじめるのは震央だと思う。

結果

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1つの地震が起こったとき,どの地点で何時何分何秒にゆれがはじまったか,正確なデータがないかな。

ゆれが広がっていくようすを,中心からの距離と時間のグラフで表したらわかるんじゃないかな。

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ゆれの広がりを図で表したいな。どのような図をかけばいいだろう。

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※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.184>

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この実習はどんなことをするのかな?

「等時線」をかいて地震波の伝わり方を推測します。ここでいう等時線とは,初期微動がはじまった区切りのよい時刻の線です。実習A・Bの図は,各地のゆれはじめの時刻(初期微動)を〔分:秒〕で表しています。それぞれの初期微動が到達した時刻から,初期微動の「等時線」を見極めて,等時線をえがきます(右図)。

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等時線の考え方

方法

準備 

白地図(または下の図),筆記用具

 実 習 A   ゆれの伝わり方を調べる①

図は2008年6月14日,午前8時43分に発生した地震について,各地のゆれはじめの時刻を示している。

図の44分15秒の円にならって,43分55秒,44分05秒…と,ゆれがはじまったと思われる観測地点をなめらかな曲線で結ぶ。

地震波の伝わり方は,地下の構造によって一定とはかぎらず,きれいな等時線がえがけるわけではありません。大まかな傾向をつかみましょう。

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※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.185>

方法
 実 習 B   ゆれの伝わり方を調べる②

図は2018年6月18日,午前7時58分に発生した地震について,各地のゆれはじめの時刻を示している。

図の58分55秒の円にならって,58分40秒,58分45秒…と,ゆれがはじまったと思われる観測地点をなめらかな曲線で結ぶ。

結果


 ポイント 

① ゆれがはじまった時刻が同じ地点を結ぶと,どのような形になるか。

② ①の形の間隔は,どのように変化するか。

考察


 ポイント 

  • ゆれがもっとも早くはじまったと考えられる地点に×を記入する。
  • 地震のゆれはどのように伝わったといえるか。

×は,おおよその震央の位置だと考えられるね。

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※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.186>

 探究6   結果から考察する
結果

(a)実習A

(b)実習B

実習A も,B も,ゆれのはじまった時刻が同じ地点を結ぶと,ある地点を中心とした円になる。

図8 探究6の結果例

考察
  • すべての円の中心は,地震のゆれがもっとも早くはじまった地点だと考えられる。
  • 線と線の間隔がほぼ等しいことから,地震のゆれは,地震が発生した地点から一定の速さで広がっていくと考えられる。
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※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.187>

 初期微動継続時間の決まり

 探究6でわかるように,地震波は震源から同心円状に伝わる。このとき,図9のように,震源から離れるほど初期微動継続時間が長くなる。これは,震源から離れるにしたがって,P波とS波の到達する時刻の差が大きくなるからである(図10)。

図9 地震計の記録から見た初期微動継続時間のちがい

地表面では,地震のゆれは,震央を中心にほぼ同心円状にまわりに伝わる。これは,震源から発生した地震の波が,ほぼ一定の速さで岩石中を伝わるからである。

図10 P波とS波の広がり

 発展 

 P波とS波は,速さだけでなく波の性質が異なる。P波は音の波と同じ性質(→p.123図2)があるが,S波は横にゆれる波である。

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※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.188>

3 震度

 観測地点でのゆれの大きさは【震度】(震度階級)で表され,表1のように10段階に分けられている。地震のゆれは,一般に震源から離れるにしたがって小さくなる。

震度のおよその目安をゆれの感じ方などで表している。

表1 震度階級とゆれ

P波とS波の速さの差を利用し,大きなゆれをともなう主要動がくる前に,地震の発生を早く知らせるしくみが「緊急地震速報」である。日本全国の約1500か所に地震計が設置されていて,地震が発生したとき,震源に近い地震計がP波を観測すると,そのデータは気象庁に送られる。このデータから,震源の位置やマグニチュードをコンピュータで推定し,各地でのS波の到達時刻と震度を予想する。震度5弱以上が予想されれば,緊急地震速報(警報)が出される。緊急地震速報を受信してから主要動がくるまでの時間は数秒から数十秒と短く,震源に近い場所では速報が間に合わないこともある。しかし,わずかな時間でも,大きなゆれがくることがわかれば,机の下にかくれるなどの避難行動がとれる。 近年は緊急地震速報の際に「長周期地震動速報」も加わった。「長周期」とは,「『1回の振動』(→p.127)に要する時間が長い」ということであり,高層ビルなどを大きくゆっくりゆらす性質をもつ地震波である。

図11 緊急地震速報
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※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.189>

 マグニチュード

 震度はゆれの大きさの表し方であり,一方,地震そのものの大きさの表し方として【マグニチュード】❶(記号M)がある。マグニチュードは,M3.0やM5.5というように表される。

 図12は,震源がほぼ同じで,マグニチュードがちがう地震のゆれの分布である。マグニチュードの大きい地震の方が,広い範囲でゆれが観測され,震央付近のゆれが大きいことがわかる。また,マグニチュードが大きくても,観測値と震源の距離が大きい(震源が深い,または震源が離れている)ほど,観測地点のゆれは小さくなる。

(a)平成30年北海道胆振東部地震 (2018年9月6日3時)

(b)(a)の3日後の地震 (2018年9月9日22時)

図12 マグニチュードと震度の関係

この図は地表の主要動のゆれの強さを表しています。

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地下の震源付近はゆれが大きくても,それが地表まで到達する間に波が弱くなります。そのため,震源から遠いほどゆれは小さくなります。

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❶ マグニチュードが1大きくなると,地震で放出されるエネルギーは約32倍になる。たとえばM7の地震のエネルギーは,M5の地震の1000倍である。

ニュース

※科学ニュースの更新は2025年4月を目処にはじまります。

  • 【横波は本当に液体中を伝わらないのか】 2023年3月1日
    地震波のうち,P波は進行方向に密度の変化が伝わる縦波で,S波は進行方向に垂直に揺れる横波です。地震波は普通,震源から上に向かって伝わるので,地表ではP波は縦揺れ,S波は横揺れとして感じられます。高校の物理では「液体や気体では媒質を横に少しずらしたとき,復元力がはたらかないため,横波は固体中しか伝わらない」と学習します。しかし,液体の金属中のナノメートル単位の世界では横波音波が検出されています。 もと記事リンク 論文
  • 【メダカはインド亜大陸に乗ってやって来た!】 2023年3月1日
    理科でもおなじみのメダカの仲間は,東南アジアを中心に37種が広い範囲に分布しています。しかし,その共通祖先がいつ,どこで誕生したかはこれまで分かっていませんでした。 今回,世界中のメダカの仲間のDNAを調べて解析したところ,メダカの仲間は中生代後期,恐竜の時代にインド亜大陸にいた種から起源したという結果が得られました。 メダカはダツ目の魚です。サヨリ科,ダツ科などの海水魚から分かれたメダカの先祖は,インド亜大陸がユーラシア大陸と衝突した後に,陸続きになったアジアに広がっていったと考えられます。小さなメダカの壮大な旅が,DNAから明らかになりました。 もと記事リンク 論文

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