※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.4>
理路整然 どうする,探究の進め方
探究とは,「気づき」と「ふり返り」のサンドイッチ。「2課題設定〜7考察」の各段階で,何か気づくことや,ふり返って考えることがあるはずです。いつでも「1気づき」や「8ふり返り」を行き来しながら,探究を進めていきます。
探究レポートをかくときは,主として2〜7をまとめます。
この図を最初から理解する必要はありません。それぞれの単元内の探究を進めたら,ときどきここにもどって,自分がやったことをふり返りましょう。それをくり返していくと,だんだん探究の手順がイメージできるようになります。
ここでは探究の進め方の例を示しています。すべての探究活動がこのように進むわけではありません。たとえば,生物や地層などを対象にするとき,観察することから探究が始まり,それが同時に結果であり,その観察結果を分析・解釈するという流れもあります。
1 気づき
不思議を発見する気持ちをもって,身のまわりのものや現象を観察し,問題を発見しましょう。
どの過程にあっても,常にふり返りを行って改善することが大切です。
2 課題設定
発見した問題を,因果関係なども意識し,検証できる「課題」の形にします。先生と相談したり,資料を調べたりして課題づくりをしましょう。
○ 水は何℃で沸とうするか。
× 【現実的には行えない】水が沸とうする温度はどの場所でも同じか。
× 【危険がある】ヒトは「危ない!」と思ってから,どのくらいの速さで反応できるか。
3 仮 説
課題を明らかにするために,課題に関係する原因の見通しをもち,課題に対する結果を予想し,仮説をたてます。「どこを観察すれば,何が見えそうか」「何を変えると,それにともなって何が変わりそうか」「結果はどうなりそうか」など,具体的に考えていくことがコツです。
仮説を考えているとき,新たな気づきがあるかもしれません。
4 検証計画
どのようにしたら仮説が確かめられるかを計画します。「数で表すにはどうするか」「何を変えればよいか(何を変えてはだめか)」「何が変わりそうか」「どこを観察すればよいか」を考えて,必要な道具と方法を細かく具体的に考えます。
検証計画を考えているときに,仮説を修正することもあります。
5 観察・実験
実際に観察・実験を行います。このときの方法,見いだしたこと,気になったことはすべて記録します。
実際に行ってみたらうまくいかず,検証計画から考え直すこともあります。
6 結 果
結果を細かく記録し,整理します。表にまとめたり,スケッチしたりすることもあります。
考えた方法でも結果がうまく取れない場合は,検証計画や実験方法を見直すこともあります。
7 考 察
結果を「分析」して「解釈」し,どのようなことがいえるか,考えをまとめます。このとき,どのような結果を根拠にして何を考えたのか,わかるように書きましょう。
また,分析・解釈の結果,仮説が確かめられたかを考えましょう。
考察のときに,新たな疑問がうまれることもあります。そのときは,「10次の気づき」からはじめて,次の探究を計画していきましょう。
8 ふり返り
探究活動の途中でも,終わってからでも,自分がやっていることをふり返ります。
「ふり返り」とは,たとえば次のような内容です。
●探究活動の途中で,今やっていることが適切か考える。
●探究活動が終わったら,すべての過程が適切だったか考える。
〔たとえば〕
・調べようとした課題に対して手順は適切か?
・手順で明らかになった結果を正確に記録できているか?
・結果は整理されてまとめられているか?
・考察の内容は結果をもとにしているか?無理がないか?
・課題に対して,考察は適切か?
・仮説と,結果・考察はどのように異なったか?
●次の探究活動につながる「気づき」や「課題」を見出す。
9 伝える
2.〜7.までが整理できたら,内容をまとめ,レポートや発表でほかの人に知らせて,意見をもらいましょう。意見をもらうと考えが深まります。これが9.です。
9.のとき,あなたが行った探究活動をよく知っているのはあなただけで,ほかの人は知りません。知らない人でもわかるようにていねいにまとめることに気をつけます。
10 次の気づき
9.まで終わったら,必ず何か新しい問題が出ているはずです。それが「10.次の気づき」です。それをスタートにして,次の探究を進めましょう。
探究活動の注意点
◯ 観察・実験に興味や関心をもち,進んで取り組む。
◯ うまくいかなくても,くふうして取り組もうとする。
◯ ほかの人と協力して観察・実験を進める。
◯ 今やっていることをふり返り,改善しようとする。
✕ 自分で活動せず,ほかの人の結果を写す。
✕ 結果を自分で勝手につくり上げる。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.12>
理路整然 どうする,レポート
理科では観察したことをレポートにまとめていくことを目指します。レポートは,ほかの人が読むことが前提なので,できるだけわかりやすくかきます。自分だけがわかる表現になっていないか気をつけましょう。
また,レポートには「型」があります。下のような「課題」「準備」「方法」「結果」「考察」「ふり返り」といった項目を意識してまとめましょう。
レポートは,あなたが成長するにつれて,この先ますます大事になります。高校生,大学生,社会人,教科を問わず,レポートをかく機会はどんどん増えていきます。レポートづくりが上手になるには,たくさんレポートをかいて慣れることです。今から意識していきましょう。
どうしてそんなに細かく記録するんですか?
「自分が調べたことをほかの人に伝えること」が必要だからです。たとえば「大きかった」「丸かった」といっても,どのくらい大きいのか,どんな丸なのか,相手には伝わりません。数値で表せる大ききや重さをはかったり,数値で表せない形などはスケッチしたりして,だれが読んでもわかるように,ていねいにかきましょう。
「実験の結果」「観察した内容」は国語でいう「事実」です。だれもが確かめられることです。一方,「考察」は国語でいう「意見」に近く,結果を「分析・解釈」したことです。一人ひとり考えがちがう可能性があります。また,あなたの感情を説明すると,それは「感想」です。これら「結果」「考察」「感想」をしっかり区別しましょう。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.13>
理路整然 どうする,文章を書く
レポートでは,わかりやすい文章を書きましょう。
自分ではわかりやすく書いているつもりなんですけど…
わかりやすいって何だろう?わかりやすいがわからないなあ。
レポートでは,ひとつひとつの文章が大事な要素です。とはいえ,まずは細かいことを気にせずに書いてみましょう。その次に,自分の文章を見直して修正します。見直すときは,右の内容などに気をつけます。
一度書いたあと,少し時間をおいてから読み直すのもポイントです。新たに気がつくことも出てくるでしょう。
・主語があるか,明確か。
・主語と述語があっているか。
・単語を修飾する部分が長すぎないか。
・主語をできるだけ早く出せているか。
・指示語(これ,それ)の指す内容はすぐ見つけられるか。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.13>
理路整然 どうする,文章を読みとる
文章は,文字だけで情報が伝わる,優れた道具です。しかし,内容を読み取るにはコツがいります。
たとえば,右に示したような内容に注意して,それぞれの言葉や文の前後関係をとらえて読むなどです。すぐにわからなくても,文章の先を読むとわかることもあります。あせらずにじっくり読むことを意識しましょう。
・指示語(これ,それ)の指す内容は何か。
・省略されている言葉は何か。
・文章の中で,主語と述語は何か。
・修飾する言葉は,どの言葉にかかっているか。
・どのような接続詞(すると,しかし,たとえば,など)でつながっているか。
内容を正しく読み取る,誤解のないように書くって,実は難しいね。
自分勝手な解釈をしないように気をつけよう。
書いた文章,読み取った内容について,意見交換すると,考えが深まりますよ。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.14>
理路整然 どうする,写真とスケッチ
レポートで観察した生物の説明が必要なときは,写真,スケッチを多用しましょう。文章だけよりも伝わりやすくなります。
写真とスケッチは,それぞれどのような利点があるのでしょうか。写真は,ある場面の全体のようすを伝えるのに適しています。ただし,写真は1つの視点からの,かつ,ある一瞬の情報であり,たとえば葉に隠れた部分があってもわからないことがあります。
一方,スケッチは,伝えたい部分を取り出すことができるよさがあります。たとえば,葉の葉脈の形を説明するとき,写真よりもスケッチのほうがわかりやすくなることがあります(下図)。写真では表せなかった特徴をスケッチに文字として書きこんで,内容を整理することもできますし,自然とよく観察するようになる,という効果もあります。
それぞれを使い分けたり両方を示したりして,わかりやすいレポートづくりを目指しましょう。
「科学的」とは,どういうことですか?
「科学」のはじまりは「気づき」です。これは何だろう,不思議だな,どうしてだろう,知りたいな,そうしたものごとに,ふと立ち止まったとき,科学的な活動がはじまります。今,私たちが目にしているのは「ものごとが起きた結果」です。見えていることから,どのようなしくみでそれが起きたのか,なぜそうなったのかなど,見えない「原因」「決まり」などをつきとめていくのが,科学的な探究です。
科学的というには,一般に次の条件があります。
・いろいろな現象から決まりを見出す活動である。
・・試して確かめることができる。だれが試しても,条件 さえ一致していれば同じ結果になる。。
・根拠(事実)に基づいていて,筋道がとおっている状態である。
・おたがいに批判したり確かめたりして,より適切になる。
・「科学的に正しい」とは,「現時点で最も確からしい」ということで,これから変わる可能性がある。
幽霊っているんですか?「科学では証明できないこともある」って言い方しますよね。
世の中のものごとには,そもそも科学的に証明しづらい場合があります。あなたのまわりのものごとについて,先の「科学的といえる条件」にあてはまるか考えてみてください。その結果になる条件がはっきりせず,もう一度試せない。だれが試しても同じ結果になるわけではない。筋道のとおる説明ができない。このようなことがありませんか?
だれかが「幽霊を見た」「幽霊のせいで悪いことが起きた」と思っても,科学的にもっと確からしいほかの説明ができる場合があり,これまで人類が発見してきた科学の決まりをもとにすると,限りなく「幽霊はいない」といえます。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.15>
理路整然 どうする,伝える・伝わるコツ
理科では,あなたが探究した内容を発表する場合もあります。右のような方法で発表を組み立ててみましょう。自分が説明するまで 「相手は何も知らない」ということを忘れずに,どのように表現したらよいかを考えるのがポイントです。
ほかの人に伝えようとすることで,自分の考えがまとまることもよくあります。また,「自分の考えをほかの人に説明する」と「自分の考えに対するほかの人の意見を聞く」というのは,理解を深めるときの大事な過程です。なぜなら,ほかの人は,自分とちがう考えをもっていて,それを聞くことにより,自分の考えの適切でないところに気づいたり,新しいアイデアをもらったりすることができるからです。発表のときはもちろんですが,常に積極的に意見交換をするように心がけましょう。
相手の発表を聞いたら自分の考えを伝えることも忘れずに。説明されても「言うことがありません」では,聞いてなかったのか,考えてないのか,と思われてしまうこともありますからね。
レポートや発表などで,自分の活動を伝えるときは,「自分で調べたこと」なのか,「ほかの人が調べたこと」なのかをはっきり区別するように気をつけます。
本やインターネット上にあるほかの人の文章・図・写真などを使うことを「引用」といいます。「引用部分」は,ほかの人から見ても「自分自身で考えた内容」と区別できるように書きます。レポートでは引用部分の直後に,次のように注記を加えるとよいでしょう。
〜といわれている(人名,本の発行年)。
〜といわれている※1。(注記として※1の情報を加える)
レポートの最後に「出典」や「参考文献」として,引用部分を書いた人(著者)や本の題名,ウェブサイトの情報などを,正確に付記しておくことも必要です。
発表のしかた
●発表時間に合わせて話す内容を決めます。
●内容は以下のように構成します。発表時間は短いことが多いので,内容をかなりしぼる必要があります。
発表スライドのつくり方の例
①【はじめに】「何をして」「どのように考えたか」をまとめて,手短に先に伝えます。
②【目的や実験方法】あまり細かくは説明せず,ざっと内容がわかる程度にします。
③【結果と考察】考察にいたった考え方を説明します。
④【まとめ】全体を簡単にまとめて箇条書きにし,最後にもう一度紹介します。発表を聞いている人は,聞いているうちに前の話を忘れてしまいます。そのため,大事なことは何回か言う必要があります。
●使用する図や,写真などを大まかに決めます。
●発表する内容を大まかに決めたら,リハーサルをします。リハーサルで,ほかの人の意見を取り入れていくと,本番で多くの人にわかりやすい発表になります。
●リハーサルをくり返して,本番で話すための原稿や,図などを整えます。
積極的にパソコンを使い,発表スライドを作って発表しましょう。スライドをつくるときは,次のようなことにも気をつけます。
・字が小さすぎないか,多すぎないか。離れた人からもよく見えるか。
・写真の量は適切か。言いたいことに対して必要最小限にしておきます。言いたいことを意識して写真を撮ります。
・デザインを多用しすぎていないか。きれいにしようと飾りすぎると,見づらくなります。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.18>
理路整然 どうする,適切な観点
葉の緑色の度合いは,種類によっていろいろあるね。これを観点にできるかな。
緑色の度合いは,分け方が難しいよ。人によって基準があいまいになってしまう観点は,やめたほうがいいね。
そうですね。観点を問いにして「ある・ない」「はい・いいえ」で答えられると,適切だといえるでしょう。
観点と基準のもうけ方によって,グループのでき方も変わるよね。
目的によって,適切な分類方法が異なってくると思う。
そうですね。この単元では生物を「客観的な観点と基準で分類する」ことを意識しましょう。
探究を終えてから,自分のしてきたことをふり返ってみましょう。この探究であれば,「観点が適切だったか」という見方・考え方で,ふり返りができます。すると,改善したいところや,次に試してみたいことが自然と出てくるでしょう。
これからみなさんは,理科の授業でさまざまな探究を体験します。このとき,ふり返りを意識して進めてください。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.19>
理路整然 どうする,整理して表現する
生物をたくさん調べて,その特徴も取り出したけど,「分類のしかた」をどのように説明するとよいかな。口頭だけだと,うまく伝えられないな。
分類した方法を目でも見えるようにすれば,もっとわかりやすくなるね。
「分類のしかた」を次のような図や表にすると,相手が理解しやすくなります。これらの方法は,自分の考えや多様な意見をまとめるときにも便利です。
<表>
1行目と1列目に整理する項目を決め,それに合うように,それぞれのマスに内容や数値を書きこむ。項目は,1行目,1列目のどちらか一方のこともある。
項目を縦軸と横軸で整理することができ,共通しているところ・ちがうところがくらべやすい。
<ベン図>
円や囲みをグループと考える。下の図では,右の囲みと左の囲みが異なるグループで,左右の囲みが重なるところに左右のグループで共通する項目を書く。
共通する項目を見やすく表すことができる。
<概念地図>
囲みの中に内容を書き,さらに関連する囲みどうし,囲みと個別の項目を線でつなぐ。関係する内容どうしを見やすく示し,関係がよくわかる。
<樹形図>
たくさんの項目をふくむ1つの大きなグループを,ある観点と基準で細分化する。観点や基準ごとに何回も分けていくことができる。
表や図にすると,共通点やつながりがわかりやすくなるね。
表や図をレポートで使ったり,発表のときに聞き手に示すようにしたりすると効果的ですよ。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.49>
理路整然 どうする,物質の性質の考え方
ものが何からできているかは,古代からさまざまな考えがあり,ある哲学者は「ものを分割していくと,これ以上分割できない小さな粒になる」と考えました。これは思考のうえだけのもので,観察・実験による裏づけはありませんでしたが,のちの科学の発展に大きな影響をあたえました。
物体は物質からつくられていること,さらに,実際に物質は小さな粒でできていることにもとづいて(→p.65),この単元では,右図のように物体を粒の集まりとして考えていきます。なお,この粒については,中学2学年,さらに3学年でも学習を深めていきます。
タンブラー(物体)は,主に鉄(物質)という粒でできていると考えることができます。
❶ ステンレスは主に鉄でできている。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.53>
理路整然 どうする,結果と考察
この探究では,「ロウを燃やしたあとの空気を石灰水に通すと,石灰水が白くにごる」ことがわかりました。
この探究では,「ロウを燃やしたあと二酸化炭素が出る」ことがわかりました。
二人の言っていることがちがいますね?どちらも「わかったこと」ですが,実は区別できます。
探究では,自然と「わかったこと」が出てきます。「わかったこと」には,大きく分けて2種類あります。
1つは「結果」です。「結果」は「事実」です。事実とは実際に起こったことがらです。
この探究では,「ロウを燃やしたあとの空気を石灰水に通すと,石灰水が白くにごった」というのが事実です。だれがやっても同じように「白くにごる」からです。
「結果」の「わかったこと」では,「◯○という手順で実験を行い,△△ということがらが起きた」というように書きます。
もう1つの「わかったこと」は「考察」です。「考察」は,結果(事実)や,知識をもとに,あなたが「判断(分析・解釈)」したことです。
この探究では「ロウを燃やしたあとに二酸化炭素が出る」というのが考察です。このように,探究の手順としては,まず「結果」を明らかにして,さらに「結果」にもとづいて「考察」としての「わかったこと」を考えていく必要があります。
物質を燃やすと,「二酸化炭素が出る」なかまと,「二酸化炭素が出ない」なかまに分類できます。
そうか!「二酸化炭素が出てきた」のは,「見えた」わけでなく「そう判断した」んだ。判断は,人によってちがうかもしれない。だれが見ても同じ「結果」をもとに,自分が判断したことが「考察」なんだね。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.54>
探究を深める 理路整然 どうする,水の確認
集気びんの内側についた水滴のようなものが,水であるとはっきり確かめる方法はないでしょうか。
「塩化コバルト紙」で調べると,水であることが確かめられます。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.59>
理路整然 どうする,本当の値はわからない
私たちは,ものさしで物体の長さをはかったり,てんびんで物体の質量をはかったりします。実はこのとき,真の値(本当の値)はわかりません。測定器の精度や,人による計器の読み取りの精度など,いろいろな原因によって,測定値には不正確さが入ってきます。測定値と真の値の差を誤差といいます。
理科では,目盛りの読み方として「最小目盛りの1/10まで数値を読み取る」と決めています。たとえば1.mm目盛りのものさしで,図のように木材の長さをはかり,255.8.mmという測定値を得たとしましょう。255.8という測定値は,ものさしの目盛りを読み取って得た有意義な数字とされ,これを有効数字といいます。この場合,有効数字は4桁けたであるといい,最後の「8」という数字には,目分量で読み取った誤差がふくまれることになります。
有効数字は桁数で表現します。たとえば,ある棒の長さをcmの単位まではかり,350.cmという測定値を得たとします。この測定値をm単位で表し,かつ有効数字が3桁であることを示したいときは,3.50.mと書きます。
たとえば,教科書の厚さや質量をはかって,みんなで比べてみましょう。同じ本なので,同じになるはず?
発展
1/10.秒まではかれる時計で,ある人が.100m.を走る時間をはかったら,14.0.秒であったとする。このときの有効数字は3桁である。また,このときの速さは
100m÷14.0s=7.1428…m/s
となり,計算上は,いくらでも細かく求められることになる。
ここで,14.0という計測値は,14.05未満,13.95以上を意味する。そうすると,速さの上限と下限は,
100m÷14.0499…s=7.117…m/s
100m÷13.950…s=7.168…m/s
となり,商の3桁目に差が出てくる。商の上限と下限を考慮して平均を求めると,
(7.117…+7.168…)÷2=7.1425…
となる。つまり3桁目は「4」を基準として,その上下2程度の幅がある。ただし,幅があるものの「4」は十分目安になる。これをふまえて,測定値の有効数字が3桁だった場合,計算結果の有効数字も3桁までとするのが一般的である。細かく計算できるからといって,多くの桁を示すことに意味があるとは限らないのである。
さらに深めれば,距離も100mちょうどとは限らない。このように,測定値を用いた計算をするときは,「常に有効数字を考えておくこと」「測定値には常に誤差があること」などを意識する必要がある。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.60>
探究を深める 理路整然 どうする,式と単位
測定用おもりの数を2倍にして密度を求めてみたよ。密度が2倍になると予想したけど,実際はおもりが1つでも2つでも同じだった。
わかった!物質を粒と考えよう。たとえ粒が多くても,つまり体積が大きくても,密度を求めたら同じになるんだね。1つの粒が決まった密度をもっていると考えればよいね。
右図のように,同じ物質の体積が2倍,3倍になったとき,質量も2倍,3倍になります。つまり,体積は質量に比例しています。これを密度の式に当てはめると,体積と質量が2倍,3倍になったとき,割る数も割られる数も2倍,3倍になるので,密度の値は物質ごとに決まった値になることがわかります。
密度の式「質量÷体積」には,割り算によって,「体積の単位当たりの質量」を求めるという意味があります。質量の単位は〔g〕で,体積の単位は〔cm3〕なので,単位も割り算されて〔g/cm3〕となります。ここで,〔/cm3〕とは「1cm3当たり」という意味です。
また,〔g/cm3〕という単位は,そもそも「〔g〕÷〔cm3〕」という意味も表しています。
ここで,密度と体積の積を求めると,単位としては「〔g〕÷〔cm3〕×〔cm3〕」となり,単位は〔g〕だけになります。これは,「密度に体積をかけると,その体積での質量〔g〕が出てきますよ」と言いかえることもできます。
このように単位のつくりを意識して,意味や計算に生かしてみましょう。
数学で学習する比例の式を意識しましょう。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.66>
理路整然 どうする,濃度と薬品
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.71>
理路整然 どうする,測定器にも誤差
測定器自体にも誤差があります。たとえば,右の写真のように,湯の温度をいくつかの温度計で同時にはかると,その示す値は温度計ごとにわずかに異なってきます。また,温度計の長さにもばらつきがあります。これも誤差の一種で,器差とよんでいます。
温度計の製作過程で,外形や,液を入れる管の形のわずかなちがいは必ず生じます。そのため,温度を正確にはかった液体に,まだ目盛りのない温度計をひたすと,温度計ごとの液の伸びのようすが異なります。製造者は,そのちがいを見ながら目盛りをつけ,器差が少なくなるように調整しています。 誤差を完全に取り除くことはできませんが,それでも「誤差の範はん囲いを明確にしながら,できるだけ正確にはかる」という努力が科学的な探究には必要です。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.72>
探究を深める 理路整然 どうする,溶液を冷やして現れる溶質の質量
溶解度のグラフを用いて考えると,何℃まで温度を下げたときに何gの溶質が出てくるか,グラフを読み取り,計算して求めることができます。
例えば次のような問題です。「50℃の水100gに60gの硝酸カリウムが溶けている水溶液があります。この水溶液を20℃まで冷やしたとき,硝酸カリウムは何g現れるでしょうか。」
次ページ図13のように,20℃の水100gに硝酸カリウムは約32g溶けるので,出てくる質量は60g −32g=28gの計算により,約28gです。
これと同じようにして,この探究3でも計算できますね。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.74>
理路整然 どうする,気体の性質と集め方
気体は,一見あるかどうかわからないので,集めることが難しいように思えますね。気体の「捕集法」は,集める気体の密度と水への溶けやすさで決めます。主な気体の密度と水への溶けやすさは次の表の通りです。
それぞれの気体に適した捕集法を考えてみましょう。ただし,2つの方法が使える場合は,空気が混ざらない図14(a)を優先します。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.78>
探究を深める 理路整然 どうする,二酸化炭素は同じもの
探究4の気体Bを発生させた方法で,石灰石のかわりに卵の殻や貝殻を使ったときも,二酸化炭素が発生します。
卵の殻や貝殻を使ったとき発生した二酸化炭素は,探究4の気体Bと同じ二酸化炭素なのかな?ちがう物体から発生した気体は,ちがう気体なのではないかな?
探究4で学んだ確かめ方を当てはめてみれば,二酸化炭素であることが確かめられるね。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.94>
探究を深める 理路整然 どうする,融点・沸点が一定でない
上の3つのグラフ①,②,③は,
ア ロウの融点
イ 料理酒の沸点
ウ 食塩水の融点
のいずれかを表しています。それぞれを結びつけてみましょう。
また,なぜそのように考えたか,グラフの形から共通していえることはあるか,考えてみましょう。
料理酒はどのような成分からできているのかな。成分表示に書いてあるかな。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.126>
探究を深める 理路整然 どうする,音を見える化する
スマートフォンのオシロスコープアプリも利用できます。音をマイクロホンでオシロスコープに入力すると,目に見えない空気の振動のようすを波形として見ることができます。この実験を行うときは音さを使います。その波形は,音の大小,高低によって,次ページ図9のようになります。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.135>
理路整然 どうする,グラフの見極め
おもり0個のときは,のびが0と考えるので,原点は通ると思います。測定値の分布から,グラフは直線だと考えました。
おもり0個のときは,のびが0と考えるので,原点は通ると思います。測定値の分布から,グラフは曲線になると考えました。
測定値の分布から,グラフは直線だと考えました。原点は通りませんでした。
この探究では,力の大きさ,ばねの伸びといった結果の数値が得られます。その結果をもとにグラフ上に印を記入する(→p.214)のは,事実の範はん囲いです。印を記入するときに,人によるちがいはないからです。しかし,印の集まりを見て「どのような傾けい向こうがあるか」「どのような直線・曲線をえがくか」を考えるのは,「考察」であり,人によってちがうことがあります。
上の3人の例では,「おもりの数」と「ばねの伸び」にどのような関係があるか,意見が分かれました。3人のうち,だれが適切なのでしょうか。解決する方法のひとつは,結果を増やすことです。たとえば,同じ実験をくり返して結果を増やしていけば,同じ1.0Nの結果でも,数値にどのくらいのばらつきがあるか認識しやすくなり(下図①),傾向がはっきりするかもしれません。
あるいは,横よこ軸じくを,1.0N区切りから0.5N区切りと細かくして実験しなおすことも考えられます。すると,1.0N区切りのときにわかった結果の間をおぎなう数値がわかります(下図②)。このようにして,結果を増やすことで精度を上げ,傾向をつかみやすくするとよいでしょう。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.136>
探究を深める 理路整然 どうする,比例の関係の利用
探究7の「力の大きさ」と「ばねの伸び」のように2つが比例の関係とわかると,それにもとづいて測定していない値が予想できます。
ばねの「力の大きさ」と「ばねの伸び」を計測して,右図のようなグラフがかけたとします。グラフを通る点がx =1.0,y =0.8であることから,比例の式(y =a x)はy =0.8 xとなります。
この式があれば,「力の大きさ」と「ばねの伸び」のどちらか一方がわかれば,もう一方の値を求めることができます。たとえば,力の大きさ(x)が3Nなら,
$$ y =0.8 × x$$
を解くことでばねの伸びが予想できます。
このように比例の関係を利用していきましょう。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.160>
理路整然 どうする,スケールが大きすぎる
自然では,現象が起こる時間や距離の規模が極端に大きくなることがあります。たとえば,花こう岩ができるまでの時間は,マグマの体積などにもよりますが,現在の推定では,短くて数十万年,長いと1 千万年といわれます。また,花こう岩のかたまりの大きさも,数kmから大陸1つ分など,大きすぎてイメージしにくくなります。
このような規模の大きさについては,「スケール (尺度)」という言葉を使います。「スケールが大きい」などとよくいいますね。規模が大きすぎてわかりづらいときは,このスケールを変えて考えてみましょう。
たとえば,地球の半径は約6400kmで,地球の表面をおおうプレート(→ p.180)の厚さは約100kmです。両者の比を保ったまま,スケールを変えてみます。地球を直径22cmのバスケットボールにたとえると,プレートの厚さはどのくらいになるでしょうか。
時間でも考えてみましょう。地球が誕生してから約46億年,ヒトという種類が現れてからは約40万年経ったといわれています。地球のはじまりを1月1日0時,現在を1年後の1月1日0時とすると,ヒトが現れたのは何月何日の何時になるでしょうか。
このように比は同じまま,身近なものにスケールを近づけて,現象をとらえてみましょう。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.175>
理路整然 どうする,かくれた地層
地層は,その多くが地面の下にあり,ふつうは見ることはできません。実際は,露頭の情報から見えない地層の分布や傾きを推定していきます。
水平に堆積した地層でも,ほとんどの場合,大地の変動によって傾いています。図18①のような傾いた地層からなる大地が,②のような地形になったとしましょう。また,③のように,日本の場合,地表は植物におおわれているなかで,地層が観察できるのは窓のようにあいた崖(露頭)だけです。③の露頭A,B,Cで地層が観察できたとして,その結果を柱状図に表すと,④のようになります。露頭の向きと地層の傾きの関係によって,露頭に見える火山灰の傾きが一見異なることに気をつけましょう。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.186>
探究を深める 理路整然 どうする,初期微動継続時間
右の表は,図9の地震が発生したときのP波,S波の到達時刻の変化を表しています。この時刻の差が,初期微動継続時間です。
表から,初期微動継続時間について,どのような傾向が読み取れるでしょうか。震源との関係に注目しましょう。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.199>
理路整然 どうする,上手な検索
探究活動などで調べ物をするときには,本を調べたり,インターネット上の情報を検索したりします。
ここで大事になるのが,上手な検索方法です。探究の下調べ,探究に行きづまったときなど,探究の過程であなたは常にインターネットで調べものをするでしょう。効率よく,適切な情報を調べられるかどうかは,探究の根源に関わるテクニックなのです。自分のほしい情報がうまく出てくるような検索方法を意識しましょう。
<キーワード検索の一般的なコツ>
- 適切な情報が出てこなかったら,単語を追加したり,類語に置きかえたりします。
- 直接的な言葉ではなく,目的に応じた状況など,少しちがう単語も連想します。
- 単語の前に「ー(マイナス)」を入れると,その単語が入ってない情報を優先するなど,より細かな検索方法もあります。
- 英単語で検索します。一般に英語だとより専門的で多くの情報が得られます。
- あきらめずに,思いつく方法を試します。
たとえば,火山灰について調べたいとき,「火山灰」「火山灰とは」「桜島 火山灰」「火山灰 色 ちがい」などの単語で検索すると,出てくる情報はそれぞれちがいます。ためしてみましょう。
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理路整然 どうする,探究の手法とあなたの積極性
困っていること,解決したいこと,みんなのまわりに必ずあるよね。これを探究の課題ととらえて,自ら積極的に解決していこう!
これまで学んできた探究の手法をあてはめていこう。どんなふうに進められるかな?
●探究で,さらに疑問が出たら…その1
いろいろな物体の密度を求めてみよう。この木と岩塩の体積は,どうやってはかったらいいかなあ?
木は水に浮くよね。針金で水中へ押しこむのはどう?
でも,岩塩はどうしよう?
水に入れたら溶けちゃうよ。
いい課題が見つかったね。「水で体積をはかる」という方法自体も考え直してみよう。
●探究で,さらに疑問が出たら…その2
窒素を確かめる実験は,教科書であつかわなかったね。気体が窒素かどうか調べたいとき,どうしたらいいかな?
二酸化炭素,水素,酸素,アンモニアでないことがわかれば,それは窒素といえるんじゃないかな?
いい課題が見つかったね。でも,気体は,その4つ以外もあるんじゃない?
●機器の調子が悪かったら…
あれ,スマートフォンの充電ができていない。こわれたかな?
コンセントがぬけていた,ケーブルが切れていた……,理由はたくさん考えられるね。
原因として思いつくことを,一つひとつ確認していかなくちゃね。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.201>
●ちょっと高い買い物のとき…
こっちとこっちのリュック,どっちがいいかなあ。迷うなあ。
値段・使いやすさ・デザインなど,いろいろな観点で比較してみたらいいよ。重視したいことも,そうでないこともあるよね?
比べて整理することは,課題を解決するときに便利だね!
●テストの準備…?
本をたくさんもっている中学生は,成績が良いんだって。じゃあ,次の定期テストのために本を増やして読むぞ。
※出典:令和3年度 全国学力・学習状況調査問題 報告書
ん?読書をすれば成績が上がるの?何の本を読むの?
成績を上げるには,直接勉強するのがいちばんだと思うけど…。
「本の数」と「成績」は関連しているかもしれないけど,それって「原因と結果」の関係なのかな?
●家の人と仕事の話でも…
学校の理科の授業では,探究のはじめで,仮説を考えるんだよね。結構苦労してて…。
へえ,仮説を決めるのはいいじゃない。仕事では,だいたいそこからはじめるよ。資料はこう書いたらうまく伝わるかな,とか。
そうだね。話題の食材を取り入れたら,もっと売れないかな,とか。
探究のようなことって日常でも行ってるんだね。
そう!探究の手順って,今でも,大人になっても,ずっと使えるすごく便利な方法なんだ。あなたが将来ついてみたい仕事でも,きっと役立つよ!