※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.27>
2|原子モデルをいかした仮説
1 化学変化
分子からできている物質の化学変化について,どのように科学的に探究できるだろうか。
探究3 水の分解
電気分解装置を使って水に電流を流すと,写真のようになります。電気分解装置の電極で,電源装置の+極につないだ電極を「陽極」,−極につないだ電極を「陰極」といいます。
電極付近から気体が発生しているよ。
この気体は,水蒸気(水)かな。
図17 水に電流を流したときの変化
水の電気分解では,陽極と陰極から何が発生するか。原子のモデルから仮説を立て,実験で確かめる。
水分子1個は,水素原子2個と酸素原子1個からできているね。
状態変化では,水分子そのものは変わらず,水分子の集まり方が変わるだけです。
気体の見当がついていれば,確かめ方もわかるね。
この実験で使う水酸化ナトリウムは,あつかうときに注意が必要です。水に水酸化ナトリウムを加えるのは,電流を流しやすくするためです。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.28>
準備
水酸化ナトリウム水溶液(5%),電気分解装置,電源装置,導線,バット,マッチ,線香,保護めがね
1.装置に水を入れて電流を流す
水(水酸化ナトリウム水溶液)を入れた装置の電極を電源装置につなぎ,6Vで電流を流す。
注意!! 液が目に入ると危険なので,保護めがねをかける。水酸化ナトリウム水溶液が手や服についたら,すぐに多量の水で洗う。
2.発生した気体を調べる
① 気体がたまったら電流を流すのをやめ,発生した気体の体積を比べる。
② 陰極側と陽極側にたまった気体の性質を調べる。
ポイント
① 陰極側と陽極側にたまった気体の体積の比は,およそ何対何になったか。
② 気体にマッチの炎を近づけるとどうなったか。
③ 気体に火のついた線香を入れるとどうなったか。
マッチの炎や線香を,装置に近づけすぎないように注意しましょう。
ポイント
- 陰極側,陽極側に発生した気体はそれぞれ何か。
- 水に電流を流すと,水はどのように変化したといえるか。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.244>
基本操作 電気分解装置の使い方
④ 気体がたまったら,電源を切ってからゴムせんをとり,気体の性質を調べる。
注意!! 水酸化ナトリウムをあつかうときは,必ずゴム手袋と保護めがねを着用する。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.244>
基本操作 電源装置の使い方
① 電圧調整つまみを0に合わせておく。
② 電源スイッチが切れていることを確認し,プラグをコンセントに接続する。(直流・交流(→p.174)の切りかえスイッチがある場合は,スイッチが直流になっていることを確認する)
③ 端子の+,−をまちがえないように回路につなぐ。
④ 回路の配線を点検してからスイッチを入れ,電圧調整つまみを動かして必要な大きさの電圧にする。
⑤ 実験が終わったら,電圧調整つまみを0に合わせて,スイッチを切る。
⑥ プラグをコンセントからぬく。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.30>
探究3 結果から考察する
① 陰極側と陽極側にたまった気体の体積の比は,陰極側:陽極側= 2 : 1になる。
② 陰極側にマッチの炎を近づけると,ポンと音を立てて爆発的に燃えた。
③ 陽極側に火のついた線香を入れると,線香が炎を上げて激しく燃えた。
図18 探究3の結果例
- 陰極側にたまった気体は,マッチの炎を近づけたときの燃え方から水素であることがわかる。
- 陽極側にたまった気体は,線香の燃え方から酸素であることがわかる。
- これらのことから,水は電流を流すことによって,水素と酸素に分けられることがわかる。
発生する水素と酸素の気体の体積の比が2 : 1になるのは,水素分子2個に対して酸素分子1個ができるからです。くわしくは,p.44で学習します。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.31>
水は,その分子のつくりから,水素と酸素に分けられるという仮説を立て,その結果を確かめた。ではほかの物質も同じように仮説を立て,科学的に探究できるだろうか。
探究4 炭酸水素ナトリウムの分解
ホットケーキは,水でといた小麦粉に卵や牛乳などを混ぜた生地を焼いてつくります。生地に炭酸水素ナトリウムを入れて加熱すると,ふっくらとしたホットケーキができます。しかし,生地に炭酸水素ナトリウムを入れないものはふくらみません。
図19 生地に炭酸水素ナトリウムを入れた場合,入れない場合
炭酸水素ナトリウムを加熱すると何が生じるか。原子のモデルから仮説を立て,実験で確かめる。
炭酸水素ナトリウムを加熱して,固体から気体になったのではないかな。
炭酸水素ナトリウムは,加熱しても固体のままだね。
炭酸水素ナトリウムの化学式NaHCO₃から予想してみましょう。
ホットケーキの例を考えると,炭酸水素ナトリウムを加熱したら化学変化が起こるのかな。加熱の方法を考えよう。
予想した気体に応じて,気体の集め方や確認のしかたも考えてみよう。
気体以外の物質もできるのではないかな。どうやって確かめようか。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.32>
この探究の方法2では,4種類の確認方法をとっています。それぞれ酸素,水素,二酸化炭素,水を確かめるための方法です。これは,この4種類の物質が発生するのではないかと仮説を立てたからです。もちろん,発生すると予想した物質が変われば,確認の方法も変わってきます。
準備
炭酸水素ナトリウム(約2g),石灰水,水そう,試験管(6),試験管立て,一穴ゴムせん,ゴムせん(3),ゴム管,ガラス管,スタンド,加熱器具,ピンセット,スポイト,線香,マッチ,塩化コバルト紙,フェノールフタレイン溶液,ゴム手袋,保護めがね
注意!! 必ずゴム手袋と保護めがねを着用する。
1.実験装置を組み立て,気体を集める
炭酸水素ナトリウムをかわいた試験管に入れて弱火で加熱し,発生する気体を水上置換法で3本の試験管に集める。
気体の発生が止まったら,L字形ガラス管の先を水から取り出し,そのあと火を消す。
ポイント
水上置換法で1本目の試験管に集まった気体のほとんどは,加熱した試験管の中にあった空気なので,捨てる。
注意!! 試験管の口もとを少し下げる。加熱してできた液体が試験管の底に流れると,試験管が割れることがある。
注意!! ガスバーナーの火を消すときは,先にL字形ガラス管を水から出しておく。ガラス管の先を水に入れたまま火を消すと,加熱していた試験管に水が流れこんで,試験管が割れることがある。
2.発生した気体や液体を調べる
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.33>
3.加熱前後の物質を比べる
炭酸水素ナトリウムと,加熱後に試験管に残った物質をそれぞれ水に入れ,溶け方を比べる。
それぞれの試験管にフェノールフタレイン溶液を数滴加えて,色の変化をみる。
フェノールフタレイン溶液は,アルカリ性の水溶液に入れると赤色になります。くわしくは補充資料p.245で。
ポイント
① 発生した気体には,どのような性質があったか。
② 加熱した試験管の口もとについた液体に塩化コバルト紙をつけると,色は変化したか。
③ 炭酸水素ナトリウム,および試験管に残った物質の水に対する溶け方はどうだったか。また,その水溶液にフェノールフタレイン溶液を入れると,色は変化したか。
ポイント
① 加熱によって発生した気体は何か。その理由は何か。
② 加熱した試験管の口もとについた液体は何か。その理由は何か。
③ 加熱後,試験管に残った物質は,もとの炭酸水素ナトリウムと同じ物質か。そう考えた理由は何か。
● 炭酸水素ナトリウムは,加熱によってどのように変化したといえるか。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.245>
基本操作 物質を調べるいろいろな試薬・試験紙・方法
フェノールフタレイン溶液は,中性や酸性のときは無色,アルカリ性のときは赤色になる。
塩化コバルト紙は,かわいた状態では青色であるが,水に触れるとうすい赤色に変わる。
ベネジクト液は,麦芽糖(→p.99)などの物質を検出する試薬である。これらをふくむ溶液にベネジクト液を加えて加熱すると,溶液は赤褐色に変化する。デンプンはベネジクト液には反応しない。
デンプン溶液にヨウ素液を加えると青紫色になる。
二酸化炭素
石灰水に通すと,石灰水が白くにごる。
酸素
火のついた線香が激しく燃える。
水素
気体が音を立てて燃える。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.34>
探究4 結果から考察する
①発生した気体の性質
- 火のついた線香を入れたら,火は消えた。
- マッチの炎を近づけても燃えなかった。
- 石灰水を白くにごらせた。
②試験管の口もとの液体に塩化コバルト紙をつけると,うすい赤色に変わった。
③炭酸水素ナトリウムと加熱後の物質のちがい
- 炭酸水素ナトリウムは水に少し溶け,フェノールフタレイン溶液がわずかに赤色になった。
- 加熱後の物質は水によく溶けて,フェノールフタレイン溶液が赤色になった。
① 線香の火が消え,また,気体が燃えなかったことから,発生した気体は酸素でも水素でもないことがわかる。そして,石灰水を白くにごらせたことから,発生した気体は二酸化炭素であることがわかる。
② 試験管の口もとについた液体は,塩化コバルト紙をうすい赤色に変えたことから,水であることがわかる。
③ 試験管に残った白い粉末の固体は,水に溶けるようすやフェノールフタレイン溶液を入れたときのようすから,もとの炭酸水素ナトリウムとはちがう物質であることがわかる。
● 以上のことから,炭酸水素ナトリウムを加熱すると,二酸化炭素,水,もとの炭酸水素ナトリウムとは異なる白い粉末に分かれるといえる。
p.30の「理路整然」のように原子カードでも考えてみましょう。うまく説明できるでしょうか。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.35>
2 物質の分解
水から水素と酸素ができたように,1種類の物質から,2種類以上の物質ができる化学変化を【分解】といい,電流によって物質を分解することを【電気分解】という。
炭酸水素ナトリウムを加熱すると,炭酸ナトリウム,二酸化炭素,水の3種類の物質に分解する。加熱したときに起こる分解を【熱分解】という。
これも熱分解の一例です。生じた固体の特徴,気体の特徴から,何と何に分解されたと考えられるでしょうか。
加熱後の固体には,金属の特徴がみられるね。
線香を入れると,炎を上げて激しく燃えた。これは何を表すかな。