※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.98>
1|消化のしくみ
1 消化器官
植物は光合成で養分を自らつくることができるが,動物の場合は食物を食べて養分を取り入れる。ヒトの場合,まず食物は歯でかみくだかれて飲みこまれる。その後,食物は,ひとつながりになっている長い管である【消化管】を通って,最後には肛門から便として出される(図1)。
ヒトの消化管は口,食道,胃,小腸,大腸などの【消化器官】に分けられる。消化管の中では,主に養分を吸収するはたらきをもつ小腸が最も長い。消化管につながっているすい臓,肝臓なども消化器官であり,消化に関わる器官などをまとめて【消化系】という。
2 消化と消化液
食物は,消化管を通りぬけるうちにしだいに分解されて,体内に取りこまれやすい形になる。これを【消化】という。
食物が歯でかみくだかれ,だ液とまじりあうところから消化ははじまっている。だ液のように,消化器官が出す液を【消化液】という。消化液に消化酵素がふくまれている場合,これが食物を分解し,吸収されやすい形に変える。たとえば,だ液にふくまれる消化酵素はアミラーゼとよばれる。
食物は消化管の中を通りぬけるうちに消化され,最終的には体内に取りこまれる。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.99>
3 デンプンの消化
デンプンは,ブドウ糖の分子が多数連なってできた大きな分子である。アミラーゼが,デンプン中の分子のつなぎ目を切ることで,デンプンはより小さな分子(麦芽糖❶など)になる(図2)。デンプンが分解されてできた分子は,消化管の中でそのほかの消化酵素によって最終的にブドウ糖にまで分解される。
4 タンパク質や脂肪の消化
アミラーゼはデンプンを分解するはたらきをもつが,タンパク質や脂肪にははたらかない。タンパク質は,胃液にふくまれるペプシンと,すい液にふくまれるトリプシンという消化酵素によって分解され,最終的にアミノ酸になる。脂肪は,すい液にふくまれるリパーゼによって,脂肪酸とモノグリセリドに分解される。このように,それぞれの消化酵素は,はたらく対象が決まっている。
それぞれの消化器官と消化液の組み合わせを理解しましょう。
❶ 水あめの主な成分である。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.257>
資料 デンプンと麦芽糖の分子の大きさ比べ
❶ セロファンには,目に見えない小さな穴(直径0.000002mm)があいている。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.101>
5 だ液のはたらきを確かめる
デンプンはアミラーゼにより分解されて,麦芽糖などに変化する。これを確認するために,どのように科学的に探究できるだろうか。変える条件,そろえる条件を意識して,実験計画を立ててみよう。
探究6 だ液のはたらき
米をすりつぶしたら,麦芽糖などになるのですか?
いいえ,すりつぶすだけではそうなりません。消化にはアミラーゼが必要です。だ液の主成分は水で,アミラーゼがふくまれています。
だ液中のアミラーゼによってデンプンが変化することは,どのような実験で確かめられるか。
アミラーゼのはたらきでデンプンがほかの物質に変わるということだね。
アミラーゼがなければ,デンプンは変化しないともいえるね。
洗濯洗剤に使うような酵素は,寒いときはたらきが悪いらしいよ。アミラーゼもそうかな?
デンプンがあるかないかは,ヨウ素液を使えばわかるよ。麦芽糖などができたことは,確かめなくていいのかな?
ベネジクト液(→p.243)という試薬を使うと,麦芽糖などがあるかを調べることができます。
変える条件とそろえる条件を整理しよう。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.245>
基本操作 物質を調べるいろいろな試薬・試験紙・方法
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.102>
【仮説】
デンプンにアミラーゼを加えると,デンプンがなくなるはず。代わりに麦芽糖などができるはず。
【計画】
・ デンプンがあることを確かめる試薬は「ヨウ素液」
・ 麦芽糖などがあることを確かめる試薬は「ベネジクト液」
【計画】
デンプンを変化させる原因が,アミラーゼをふくむ水(だ液)だとすると,アミラーゼと水があるという条件の場合が「本実験」。
ただし,単に水だけを加えてもデンプンが変化するという可能性が考えられる。これを否定するためには,アミラーゼをふくまない水(ただの水)を使う「対照実験」が必要だね。
2つの実験で変える条件は,アミラーゼがあるかないか。それ以外の条件はそろえよう。
準備
だ液,デンプン溶液(濃度0.5%),ヨウ素液,ベネジクト液,試験管(6),試験管立て,試験管ばさみ,スポイト(4),沸とう石,加熱器具
1.デンプン溶液にだ液と水を加えて,温める
2.A,Bの溶液を分ける
試験管A,Bの溶液をそれぞれ2つに分け,A㋐,A㋑,B㋐,B㋑とする。
1で同じようにあたためたAとBを,それぞれ分けるんだね。これも条件をそろえるためだね。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.103>
3.ヨウ素液を加える
A㋐,B㋐にヨウ素液数滴を加え,色の変化を見る。
4.ベネジクト液を加えて加熱する
ポイント
ヨウ素液,ベネジクト液の色の変化を表にまとめる。
ポイント
・デンプン溶液に水を入れた試験管Bを用意した理由は何か。
・デンプンは何に変化したか。
●デンプンを変化させたものは何か。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.104>
探究6 結果から考察する
・A㋐とB㋐を比べると,水だけ加えて温めてもデンプンは変化せず,だ液を加えたことでデンプンがなくなったことがわかる。
・A㋑とB㋑を比べると,水だけ加えてあたためても麦芽糖などはできず,だ液を加えてあたためることで麦芽糖などができたことがわかる。
●これらのことから,だ液がデンプンを麦芽糖などに変化させたということができる。
この実験で,水だけを加えた試験管を準備したのはなぜでしたっけ?
水だけ加えた試験管は「対照実験」です。
対照実験があることによって,デンプンを変化させた原因は「アミラーゼをふくむ水(だ液)」と結論づけることができます。
本実験は?…デンプンにだ液を加えた試験管
対照実験は?… デンプンに水だけ加えた試験管
本実験では「ヨウ素デンプン反応が起こらないはず。 ベネジクト液に反応するはず」
対照実験では,「ヨウ素デンプン反応が起こるはず。 ベネジクト液には反応しないはず」
と考えて行った実験です。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.106>
6 吸収
消化管で分解されてできたブドウ糖やアミノ酸などは,小腸内側の壁にある【柔毛】から体内に取りこまれる。このとき,ブドウ糖やアミノ酸などは,柔毛をつくる細胞の細胞膜を通りぬける。このように,物質が細胞膜を通して体内に取りこまれることを【吸収】という。
柔毛の中には,毛細血管やリンパ管がある。ブドウ糖やアミノ酸は,柔毛で吸収されて毛細血管に入る。モノグリセリドと脂肪酸は,柔毛から吸収されたあと,再び脂肪に合成されてリンパ管に入る(図8)。水分は主に小腸で吸収され,残りは大腸で吸収される。消化されなかった食物中の繊維などは,便として肛門から排出される。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.257>
資料 便と尿のちがい
便と尿はどちらも食物からつくられ体外へ出されるが,出されるまでのしくみが異なる。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.107>
7 養分の運搬と貯蔵
毛細血管に入ったブドウ糖やアミノ酸は,血液とともに肝臓をへて全身に運ばれる(図11)。
ブドウ糖の一部は,肝臓でグリコーゲンという物質に合成されて一時たくわえられる(図9)。グリコーゲンは必要に応じて再びブドウ糖に分解され,全身に運ばれる。
アミノ酸の一部は,肝臓でタンパク質に合成されて全身に運ばれる。脂肪を取りこんだ小腸のリンパ管❶は,やがて血管と合流し,血液中に入った脂肪は,細胞で消費されたり,脂肪としてたくわえられたりする。
肝臓にたくわえられるのは,主にブドウ糖から変化したグリコーゲンです。
❶ 血管とリンパ管については,p.108〜109を参照。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.258>
資料 肝臓のはたらき
① 養分の貯蔵…小腸で吸収されたブドウ糖は血液によって肝臓に運ばれ,そこでグリコーゲンに合成されて,たくわえられる。ほかにビタミンなどもたくわえられる。
② タンパク質の合成…小腸で吸収されたアミノ酸から,からだをつくるタンパク質を合成する。
③ 解毒…細胞で生じたアンモニアを尿素に変える。また,アルコールなど体内に入ってきた毒物を分解する。
④ 廃棄物の処理…古くなった赤血球などを分解する。
⑤ 胆汁の生成…分解された赤血球の一部から胆汁がつくられ,胆のうにたくわえられる。
⑥ 発熱…肝臓で行われるさまざまな化学変化にともなって熱が出る。その熱が体温を保つのに利用される。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.258>
資料 ヒトの消化系・循環系のまとめ
ニュース
- 【もち米とうるち米を一緒に育てるとどうなる?】 2023年3月1日お正月の定番,お餅。餅に使うもち米は,胚乳に含むデンプンのほぼ100%が,グルコースが枝分かれしながらつながった「アミロペクチン」です。 水を含むと枝分かれした鎖が絡み合うので,もちもちネバネバの食感になります。一方のうるち米のデンプンは,グルコースが一本鎖につながった「アミロース」を15~30%含み,もち米ほどは粘りません。 では,もち米とうるち米を混ぜて育てたら,どうなるでしょう? イネは基本的には開く前に花の中で自家受粉するので,ほとんどの種子(米)は親株と同じ性質になるはずです。しかし交雑が起こった場合,被子植物であるイネでは,胚も胚乳も花粉の精細胞と受精してできます。もちとうるちでは,顕性なのはうるち性なので,交雑した粒はすべて胚乳でアミロースをつくるうるち米になります。 もと記事リンク
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