※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.113>
4|養分や酸素のゆくえ
1 血液中の成分
血液に取りこまれた養分や酸素は,血液中の成分によって全身に運ばれる。ヒトの血液は,【赤血球・白血球・血小板】という固形の成分と,【血しょう】という透明な液体の成分からなっている(図22)。
図22 ヒトの血液の成分
2 赤血球
赤血球には,赤い色をしている【ヘモグロビン】とよばれる物質がふくまれている。ヘモグロビンには,肺などの酸素の多いところでは酸素と結びつき,筋肉などの酸素の少ないところでは,反対に酸素をはなすという性質がある(図23)。このようにして,血液はからだ中に酸素を運ぶはたらきがある。
注意!! すばやく観察して水そうにもどす。
メダカを水といっしょにチャックつきポリエチレンの袋に入れる。 ポリエチレンの袋ごと顕微鏡のステージにのせて,尾びれの血管や血管の中に見えるもの,血液の流れを観察する。
図24 メダカの尾びれの観察
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.114>
3 組織液
血液が毛細血管の中を流れるとき,血しょうの一部が毛細血管からしみ出して細胞のすき間を満たす。これを【組織液】という。組織液は,1つひとつの細胞を包むように,細胞の間をゆるやかに流れている。
4 組織液のはたらき
組織液には,肺で取りこまれた酸素や小腸で取りこまれた養分などが溶けていて,細胞は,組織液を通して酸素と養分を受け取ることができる。また,細胞は,細胞呼吸によって生じる二酸化炭素や水など,不要となった物質を組織液に排出している。組織液は毛細血管からしみ出したり,しみこんだりしているので,組織液は常に新しく取りかえられ,細胞の生命活動を維持している(図25)。
組織液の多くは毛細血管にもどって血しょうとなり,静脈に入るが,一部はリンパ管にも入る。リンパ管に入った組織液はリンパ液❶とよばれる。
❶ リンパ管は首の下の血管に合流する(→p.109)。ここでリンパ液は再び血しょうとなる。
発展
リンパ液の中には白血球が多くふくまれている。リンパ液の流れるリンパ管の途中にいくつもあるリンパ節は,病原体や異物,自身の不要な細胞を排除し,からだを守るはたらきに関わっている。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.115>
5 不要物の排出
細胞呼吸によって生じた二酸化炭素は,血しょうにより肺に運ばれ体外に出される。
細胞の活動では,二酸化炭素以外にもいろいろな不要物ができて体外に排出される。たとえば,細胞でアミノ酸が分解されると,二酸化炭素や水のほかに,有害な【アンモニア】が生じる。アンモニアは血液に取りこまれて肝臓に運ばれ,【尿素】という害の少ない物質に変えられて,再び血液によって運ばれる。血液中の尿素は,【腎臓】でこしとられて【尿】として排出される。
腎臓は,血液中にあるよぶんな水分や塩分をこしとって,尿の中に排出している(図27)。尿は輸尿管を通ってぼうこうに集められ,ある程度たまると体外に出される。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.257>
資料 便と尿のちがい
(a)胃液と混ぜ合わされた食物は,2〜4時間ほどかかって消化される。次に,食物は小腸に送られ,4〜5時間かかって消化・吸収される(①)。吸収されたブドウ糖の一部は,肝臓で貯蔵される(②)。その後,必要に応じて全身に運ばれ消費される(③)。アミノ酸も全身に運ばれ消費される。小腸で吸収されなかった成分(食物中の繊維など)は大腸へと送られる。この成分は,肛門の手前までくる間に水分を吸収されて固められ,肛門から便として出される。
(b)食物の中のタンパク質は消化されてアミノ酸になり,小腸で吸収される。アミノ酸は細胞で分解されると有害なアンモニアを生じる(①)。アンモニアは毛細血管に取りこまれて肝臓に運ばれ,肝臓で,害の少ない物質である尿素に変えられる(②)。尿素は,血液に取りこまれる。そして,血液中の尿素は,腎臓でこしとられて尿として出される(③)。
便と尿はどちらも食物からつくられ体外へ出されるが,出されるまでのしくみが異なる。
ニュース
※科学ニュースの更新は2025年4月を目処にはじまります。
- 【ネコの腎臓病を防ぐ!? 夢の研究に寄付が集まる】 2023年3月1日ペットのネコ(イエネコ)の死因のトップは腎臓病です。このネコの腎臓病の治療薬となりうるタンパク質が東京大学の宮崎徹教授により発見されました。 血液中に存在するその物質(AIM)は,体内に死んだ細胞があるとくっつきます。くっついたAIMが「旗」のような役割を果たし,AIMめがけてマクロファージなどのほかの細胞がやってきて,死んだ細胞を食べて取り除きます。 しかしネコはこのAIMが正常に働かないため,腎臓内部の死細胞が取り除かれず,腎不全が起きるのです。正常なAIMを薬として投与すれば,ネコにとって致死的な腎臓病を防ぐことが可能となるかもしれません。 多くのネコ好きの期待を集めた発見でしたが,コロナ禍の資金難により治験薬の製造直前でストップがかかっていました。しかし,資金難が報道されると,研究への寄付が殺到。研究の再開が期待されています。 もと記事リンク 論文
- 【ビッグサンダーマウンテンで腎臓結石が治る!?】 2023年3月1日腎臓結石をもつ患者の間で,「ジェットコースターに乗った後,結石の症状が和らぐ」という噂がありました。 そこで,ミシガン州立大学の研究者は,腎臓や尿路を正確に再現したシリコンの模型を使い,この噂を科学的に検証しました。 実際に患者から取り出した結石を,尿を模した液体を満たした模型に浮かべ,ディズニーランドのビッグサンダーマウンテンにのべ60回乗車。特に後部の車両に乗ったとき,腎臓の上の方にある小さな結石が排出されやすくなるということを確かめました。この研究は,2018年にイグノーベル医学賞を受賞しました。 もと記事リンク 論文
- 【3Dプリンターで「霜降り培養肉」を作製!】 2023年3月1日「3Dプリント金太郎飴技術」という新しい技術により,3Dプリンターで霜降りの牛肉を作成することに成功したと,大阪大学などの共同研究グループが発表しました。 カギとなったのは,培養肉で作る肉の組織構造。通常の培養肉では主に筋肉の細胞からミンチ状の肉を作りますが,今回の研究では筋肉や脂肪,血管の細胞をもとに,それぞれファイバー状の培養肉を作成し,それらを束ねて結合させることで,「サシ」の入った「霜降り培養肉」を再現しました。 もと記事リンク
- 【日本人の寿命は,なぜ大正10年に突然伸び始めたのか】 2023年3月1日現在,日本人は世界でももっとも長寿の国のひとつです。しかし,大正10年頃の平均寿命は42歳。しかも明治末期から大正10年頃まで,平均寿命が徐々に短くなっていました。 なぜ日本人の寿命が大正10年頃を境に一転して長寿になっていったのか。そのカギは,なんと水道水にありました。上水道が作られ始めた頃,水道水は消毒されていなかったのです。大正10年に,当時の新技術だった液体塩素による水道水の消毒が始められると,乳幼児死亡率が劇的に改善し,平均寿命を変えるほどの影響をもたらしました。 「水道水の消毒」という身近なことに潜んでいた謎。本文では,軍事用の発明だったはずの液体塩素が公衆衛生のために使われるようになった奇跡的な巡りあわせも紐解いています。ぜひじっくり読んでいただきたい記事です。 もと記事リンク
- 【世界で最も古いサメ襲撃の証拠が発見される】 2023年3月1日1919年に岡山県の津雲貝塚から約3000年前の縄文時代の人骨が多数発見されました。 その中のひとつに,右足や左手などが欠損し,骨に無数の傷跡がある人骨がありました。 この人骨の傷の謎が今回,解明されました。骨には全身で少なくとも790の傷跡が残っており,治癒の経過が認められていません。また,骨に残された傷にはサメの咬み跡に共通する特徴が認められること,攻撃を受けた部位や咬まれ方がサメの咬傷被害のパターンとよく一致することから,この人物はサメに襲われて死亡したのだと特定されました。 今回の発見は,人類史に残る最古のサメ襲撃事件となります。 もと記事リンク 論文