※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.140>
1|直列・並列回路
1 直列回路,並列回路
図10(a)のように豆電球2つが枝分かれしないでつながっている回路を【直列回路】という。一方,(b)のように途中で枝分かれしてつながっている回路を【並列回路】という❶。それぞれ回路図では図(a2,b2)のように表される。
図10 豆電球2つを使った回路
豆電球は大きな電流が流れるほど明るく光る。ここで,抵抗の異なる豆電球2つを使って豆電球の直列回路と並列回路を組み,スイッチを入れて豆電球の明るさに注目すると,豆電球の明るさが異なることがわかる(図11)。
中学校では,電池の並列つなぎ,直列つなぎを区別しないので気をつけましょう。電池がどのような状態であっても,電気用図記号の「電源1つ」で表します。
図11 豆電球の明るさのちがい
❶ このときの豆電球のつなぎ方を,それぞれ直列つなぎ,並列つなぎとよぶ。
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並列回路,直列回路について,流れる電流や各区間の電圧の関係を,どのように科学的に探究できるだろうか。
探究3 直列・並列回路の決まり
豆電球の前後で電流は変わらないはずだよね。電流が同じなら, 図11(a) の直列回路で,豆電球A と豆電球B の明るさは同じはずなのに。なぜだろう?
並列回路では,電流が2つに分かれたはずなのに,2つの豆電球で明るさがちがうよ。どのような決まりなんだろう?
抵抗器の直列回路や並列回路を流れる電流の大きさ,各区間の電圧には,どのような決まりがあるか。
図12 抵抗器の直列回路・並列回路
豆電球の前後で電流の大きさは等しいから,どちらの回路でも,導線のどの部分でも電流の大きさは同じじゃないかな?
図11では,2つの豆電球の明るさがちがうみたい。ということは,電流の大きさがちがうのかな?
準備する器具を考えよう。電流計が必要だね。
それぞれの豆電球に流れる電流の大きさをはかるには,電流計をどのようにつなげばよいかな?
実験前に電流計のつなぎ方を考えておこうよ。そうすれば,つなぎ方に時間を取られずにすみそう。
回路の電流や電圧を正確に調べるために,ここでは,10Ωと20Ωの抵抗器を使いましょう。
抵抗器の直列回路と並列回路をつくるんですね。
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準備
抵抗器(4,たとえば10Ωと20Ωそれぞれ2個),スイッチ,クリップつき導線,端子(2),電流計,電圧計,電源装置
実験A 直列回路
1.回路をつくる
抵抗器2個の直列回路をつくる。電源装置の電圧調整つまみは,3V程度を目安にする。
2.電圧,電流の大きさをはかる
回路の各点を右のようにA〜Eとしたとき,AB間,BC間,CD間,BD間,AE間,DE間の電圧の大きさをはかる。
回路の各点を右のようにX〜Zとしたとき,X点,Y点,Z点の電流の大きさをはかる。
ここでは,デジタル計測器を使った例を示しています。BC間の電圧をはかるときは,こうですね。
Xの電流をはかるときは,こうですね。
ポイント
ポイント
・各区間の電圧の大きさには,どのような関係があるか。
・X,Y,Zの各点を流れる電流の大きさには,どのような関係があるか。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.244>
基本操作 電源装置の使い方
① 電圧調整つまみを0に合わせておく。
② 電源スイッチが切れていることを確認し,プラグをコンセントに接続する。(直流・交流(→p.174)の切りかえスイッチがある場合は,スイッチが直流になっていることを確認する)
③ 端子の+,−をまちがえないように回路につなぐ。
④ 回路の配線を点検してからスイッチを入れ,電圧調整つまみを動かして必要な大きさの電圧にする。
⑤ 実験が終わったら,電圧調整つまみを0に合わせて,スイッチを切る。
⑥ プラグをコンセントからぬく。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.248>
基本操作 電流計の使い方
回路の電流や電圧をはかったとき,予想の値とずいぶんちがうなと思ったら,まずクリップのはさみかたを見直します。
クリップは端子にしっかりかんでいますか?
回路のスイッチを切った状態で,回路の電流の大きさを測定したい部分に,電流計をはさみこむようにつなぐ(このようなつなぎ方を「直列につなぐ」という)。
このとき,電流計の+端子を電源(電池)の+極側に,−端子を電源の−極側につなぐ。
ポイント
目盛りを正面から見て読み取る。
注意!! 電流計を電池だけに直接つないだり,豆電球の両端につないだりしない。大きな電流が流れてこわれてしまう。
注意!! 指針が反対向きにふれたら,すぐスイッチを切って,正しくつなぎ直す。正しくつながないと電流計がこわれてしまう。
注意!! 指針がふり切れたら,すぐスイッチを切って,正しくつなぎ直す。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.249>
基本操作 電圧計の使い方
回路のスイッチを切った状態で,回路の電圧の大きさを測定したい部分に,電圧計を並列につなぐ。
このとき,電圧計の+端子を電源(電池)の+極側に,ー端子を電源のー極側につなぐ。
ポイント
目盛りを正面から見て読み取る。
注意!! 電圧計は回路に並列につなぐ。直列につなぐと,回路にはほとんど電流が流れなくなり,電圧をはかることができない。
注意!! 指針が反対向きにふれたり,指針がふり切れたりした場合,スイッチを切って,正しくつなぎ直す。
一般的な電流計,電圧計は,計測できる最大値に対して機器の誤差が約2.5%あります。たとえば,15Vの端子ではかった場合,誤差は 15 ✕ 0.025 = 0.375 Vということです。
このような誤差も考えて探究の考察を進めましょう。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.143>
実験B 並列回路
1.回路をつくる
抵抗器2 個の並列回路をつくる。電源装置の電圧調整つまみは,3V 程度を目安にする。
2.電圧,電流の大きさをはかる
回路の各点を右のようにa〜fとしたとき,ab間,bc間,de間,af間,cf間の電圧の大きさをはかる。
回路の各点を右のようにw〜zとしたとき,w点,x点,y点,z点を流れる電流の大きさをはかる。
BC間の電圧をはかるときは,こうですね。
xの電流をはかるときは,こうですね。
ポイント
ポイント
・各区間の電圧の大きさには,どのような関係があるか。
・w,x,y,zの各点に流れる電流の大きさには,どのような関係があるか。
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探究3 結果から考察する
- 直列回路の電圧:抵抗器にかかる電圧の大きさの和が,回路全体にかかる電圧の大きさになる。
- 直列回路の電流:電流の大きさはどこも同じになる。
- 並列回路の電流:抵抗器を流れる電流の大きさの和が,回路全体に流れる電流の大きさになる。
- 並列回路の電圧:どの抵抗器にかかる電圧の大きさも同じで,電圧の大きさは回路のどこでも同じになる。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.145>
2 直列回路の電圧と電流
直列回路の各区間の電圧の大きさと,各点に流れる電流の大きさには,図13,14のような決まりがある。
直列回路では,各区間にかかる電圧の大きさの和は,電源の電圧の大きさに等しい。
【電圧の大きさの関係】
$$ V = V_{BC} ^{❶}+V_{CD} $$
直列回路では,電流の大きさはどこも同じである。
【電流の大きさの関係】
$$ I_{X} = I_{Y}+I_{Z} $$
回路を水路と水流のモデルでたとえたとき,電圧は,水路を真横からみて(視点①),高さを考えていることになります。
電流は,水路を真上からみて(視点②),水の流れの量を考えていることになります。
❶ ここでは,回路内の電圧や電流を区別するために,右下に小さなアルファベットを使っている。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.259>
資料 回路のくふう -三路スイッチ-
あなたの家では,階段付近の1階と2階に,あるいは廊下の両端にスイッチがあるでしょうか。多くの場合,どちらのスイッチを操作しても,1つの電灯をつけたり消したりすることができ,「三路スイッチ」とよばれるしくみが利用されています。学校の実験で用いる回路のスイッチは,入れたり切ったりするだけしかできませんが,三路スイッチは何が異なるのでしょう。
三路スイッチでは,右図のように①,②のスイッチが2つの導線の間で切りかえられるようになっています。どちらのスイッチを操作しても,回路が成り立ったり(電灯がついたり),回路が切れたり(電灯が消えたり)することがわかります。
階段に使われる「三路スイッチ」の例です。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.259>
資料 3つの抵抗器がある回路
右図のように抵抗器を3つつないだ回路で,各部に流れる電流やかかる電圧を求めるには次のように考えます。
① 回路の左側の並列つなぎの合成抵抗R〔Ω〕を求める。
$$ \frac{1}{R}=\frac{1}{20Ω}+\frac{1}{30Ω}=\frac{1}{12Ω} $$
$$ R=12Ω $$
② 回路全体の合成抵抗を求める。
$$ 12Ω+8Ω=20Ω $$
③ 回路全体に流れる電流を求める。
$$ \frac{10V}{20Ω}=0.5A $$
④ 8Ωの抵抗器にかかる電圧を求める。
$$ 8Ω×0.5A=4V $$
⑤ 並列部分にかかる電圧を求める。
$$ 10V−4V=6V $$
⑥ 20Ωの抵抗器に流れる電流を求める。
$$ \frac{6V}{20Ω}=0.3A $$
⑦ 30Ωの抵抗器に流れる電流を求める。
$$ 0.5A−0.3A=0.2A $$
抵抗3つの全体の抵抗を求めるには,まず抵抗2つの合成抵抗を求め,求めた抵抗と残りの抵抗をもう一度合成します。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.146>
3 並列回路の電圧と電流
並列回路の各区間の電圧の大きさと,各点に流れる電流の大きさには,図16,17のような決まりがある。
並列回路では,枝分かれした各区間にかかる電圧の大きさは,電源の電圧の大きさに等しい。
【電圧の大きさの関係】
$$ V = V_{bc}+V_{de} $$
並列回路では,枝分かれする前の電流の大きさは,枝分かれしたあとの電流の和に等しく,再び合流したときの電流の大きさとも等しい。
【電流の大きさの関係】
$$ I_{w}=I_{x}+I_{y}=I_{z} $$
ここでもp.145図15と同じように
電圧は水路を真横からみたときの(視点①)高さ,
電流は水路を真上からみたときの(視点②)水の流れの量
と考えましょう。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.147>
4 直列・並列回路の抵抗
探究3の「実験A」2つの抵抗器の直列回路の結果(表2(a))と,「実験B」2つの抵抗器の並列回路の結果(表2(b))を比べる。すると,どちらも電源の電圧は同じ約3.0Vであるのに対して,直列回路の導線Z 点の電流は約90mA であり,並列回路の導線z 点の電流は約400mAと,異なっている。つまり,電源の電圧が同じで,同じく2種類の抵抗器を使っていても,抵抗器のつなぎ方によって,回路全体の電流の流れやすさが変わる(回路全体の抵抗が変わる)ことがわかる(図19)。
注意!! テスターで抵抗をはかるときは,電流を流さないようにする。
テスター(抵抗などをはかる機器)で,抵抗器の直列回路(a) と,並列回路(b) の全体の抵抗をはかった場合。端子とクリップをつないだ部分などに抵抗が発生し,実際の抵抗の値は理想的な値より高めになる。
図19 全体の抵抗と個々の抵抗
直列回路にかかる電圧の関係
$$ V = V_{1}+V_{2} ……①$$
オームの法則より,
$$ V = RI,V_{1} = R_{1}I,V_{2} = R_{2}I ……②$$
②を①に代入すると,
$$ RI = R_{1}I + R_{2} I $$
両辺を \(\displaystyle I\) で割ると,
$$ R = R_{1} + R_{2} $$
並列つなぎにすると,電流の流れる道筋が増えて流れやすくなり,合成抵抗は,ひとつひとつの抵抗よりも小さくなります。
R<R₁,R<R₂
並列回路を流れる電流の関係
$$ I = I_{1} + I_{2} ……① $$
オームの法則より,
$$ I =\frac{V}{R},I_{1} =\frac{V_{1}}{R_{1}},I_{2} =\frac{V_{2}}{R_{2}} ……②$$
②を①に代入すると,
$$ \frac{V}{R}=\frac{V}{R_{1}}+\frac{V}{R_{2}}$$
両辺を \(\displaystyle V\)で割ると,
$$ \frac{1}{R}=\frac{1}{R_{1}}+\frac{1}{R_{2}}$$
直列つなぎにすると,抵抗のあるところを長い距離流れるので,合成抵抗は,ひとつひとつの抵抗よりも大きくなります。
R>R₁,R>R₂
複数の抵抗器をつないだときの全体の電気抵抗の大きさを合成抵抗という。また,2 つの抵抗器を並列または直列につないだときは,2つの抵抗器R 1,R 2をまとめた全体の抵抗R という考え方ができる。そのとき全体の抵抗と,個々の抵抗の関係は上図のように求めることができる。
図20 合成抵抗の考え方