※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.148>
3|電気エネルギー
1 電気エネルギー
電気は,いろいろな電気器具を通して,熱(アイロン)や光(蛍光灯),音(スピーカー)を発生させたり,運動(モーター)を起こしたりする能力がある。このような能力は一般にエネルギーとよばれ,特に電気のもつエネルギーを【電気エネルギー】という。
2 電力
電気器具には,「W」という表示が必ず見られる(図21)。この値は,それぞれの電気器具がはたらくとき,1秒間当たりに消費される電気エネルギーを表しており,これを【電力】❶という。電力の大きさは,電気器具にかかる電圧と,そのとき流れる電流の積に等しく,単位はワット(記号W)が使われる。
$$ 電力P〔W〕 = 電圧V〔V〕 × 電流I〔A〕 $$
電気器具では,1Vの電圧で1Aの電流が流れるとき消費する電力が1Wと決められている。
家庭用の電圧は一般に100Vです。これを電力の式にあてはめると,電気器具の消費電力が1200Wとある場合,電流を 𝓍 として,
1200 W=100 V × 𝓍 A
となり,その電気器具には,12Aの電流が流れるように設計されているということです。
3 電熱線の熱
ドライヤーを使うとき,ドライヤーからあたたかい空気が出るのは,中の電熱線で電気エネルギーが熱になり,その熱で空気があたためられるからである。
日常では,「熱」と「温度」を区別せずに使うこともあるが,理科では,これらは使い分ける。熱はエネルギーの一種で,物体が熱エネルギーを受けると温度が上がる。温度は「℃」などの単位で表される。一方,熱エネルギーの量は【熱量】で表し,単位はジュール(記号J)が用いられる❶。
❶ 熱量の単位には,「カロリー(記号cal)」もある。カロリーは,食品のもつエネルギーを表すためにも使われている。1cal の熱量は,1g の水の温度を1℃上昇させる。また,カロリーはジュールに換算でき,1cal は約4.2J である。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.149>
電気器具を使う時間が長いほど,発生する熱量は大きくなることが予想できる。それ以外に熱量が大きくなる原因として何が考えられるだろうか。熱量に関わる要素について,どのように科学的に探究できるだろうか。
探究4 発熱と電力・時間
100Wと500Wの電熱線に,同じ電圧で同じ時間通電したとき,何が異なるでしょうか。
注意!! これは説明のための写真である。抵抗器は非常に熱くなるので,長時間通電させない。
❶ 電熱線は抵抗器の一種である。
電熱線のはたらきは,電力や時間とどのような関係にあるか。それを調べるために,どのような実験を行えばよいか。
電熱線で消費する電力が大きいほど,または時間が長いほど,電熱線で発生する熱は多くなりそうだね。でも正確な関係は実験しないとわからない。
変える条件を決めよう。電力を一定にする方法と,時間を一定にする方法が考えられるかな?
電熱線に電流を流して発熱させるだけでは,熱を数値としてはかることができません。そこで探究4では,電熱線を水に入れ,「水の上昇温度」を調べることにします。
こちらの班は「電力を一定」にして時間をはかりながら,「時間と水の上昇温度の関係」を調べよう。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.150>
これはどういう考えで計画した実験なのかな。
ここでは「熱量」「電力」「時間」の関係を求めます。
実験A 同じ実験装置で,電圧を6Vと一定にしたまま(電力を一定にしたまま),はかる時間を長くしながら熱量の変化を調べます。
実験B 同じ実験装置で,時間を5分と決め,電圧を変えて(電力を変えて)何回か実験し,熱量の変化を調べます。
実験A,B で, 変化させる量,変化する量を意識しましょう。実験A の場合, グラフの横軸(変化させる量)は時間です。実験B の場合, グラフの横軸(変化させる量)は電力です。
準備
発泡ポリスチレンの容器と板,実験用ヒーター,電流計,電圧計,電源装置,クリップつき導線,スイッチ,温度計,スタンド,メスシリンダー,ガラス棒,時計
1.実験装置を組み立てる
光学台を組み立て,凸レンズの焦点距離の位置と,焦点距離の2倍の位置に印をつける。
① 2Ωの実験用ヒーターを用意する。
② 発泡ポリスチレンの容器に水を100cm³(100g)入れて,室温と同じくらいになるまで放置してから温度をはかる。
③ 下の図のように装置を組み立てる。
注意!! 容器や温度計に実験用ヒーターがつかないようにする。熱で発泡ポリスチレンの容器がとける。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.244>
基本操作 電源装置の使い方
① 電圧調整つまみを0に合わせておく。
② 電源スイッチが切れていることを確認し,プラグをコンセントに接続する。(直流・交流(→p.174)の切りかえスイッチがある場合は,スイッチが直流になっていることを確認する)
③ 端子の+,−をまちがえないように回路につなぐ。
④ 回路の配線を点検してからスイッチを入れ,電圧調整つまみを動かして必要な大きさの電圧にする。
⑤ 実験が終わったら,電圧調整つまみを0に合わせて,スイッチを切る。
⑥ プラグをコンセントからぬく。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.248>
基本操作 電流計の使い方
回路の電流や電圧をはかったとき,予想の値とずいぶんちがうなと思ったら,まずクリップのはさみかたを見直します。
クリップは端子にしっかりかんでいますか?
回路のスイッチを切った状態で,回路の電流の大きさを測定したい部分に,電流計をはさみこむようにつなぐ(このようなつなぎ方を「直列につなぐ」という)。
このとき,電流計の+端子を電源(電池)の+極側に,−端子を電源の−極側につなぐ。
ポイント
目盛りを正面から見て読み取る。
注意!! 電流計を電池だけに直接つないだり,豆電球の両端につないだりしない。大きな電流が流れてこわれてしまう。
注意!! 指針が反対向きにふれたら,すぐスイッチを切って,正しくつなぎ直す。正しくつながないと電流計がこわれてしまう。
注意!! 指針がふり切れたら,すぐスイッチを切って,正しくつなぎ直す。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.249>
基本操作 電圧計の使い方
回路のスイッチを切った状態で,回路の電圧の大きさを測定したい部分に,電圧計を並列につなぐ。
このとき,電圧計の+端子を電源(電池)の+極側に,ー端子を電源のー極側につなぐ。
ポイント
目盛りを正面から見て読み取る。
注意!! 電圧計は回路に並列につなぐ。直列につなぐと,回路にはほとんど電流が流れなくなり,電圧をはかることができない。
注意!! 指針が反対向きにふれたり,指針がふり切れたりした場合,スイッチを切って,正しくつなぎ直す。
一般的な電流計,電圧計は,計測できる最大値に対して機器の誤差が約2.5%あります。たとえば,15Vの端子ではかった場合,誤差は 15 ✕ 0.025 = 0.375 Vということです。
このような誤差も考えて探究の考察を進めましょう。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.151>
実験A 電力を一定にして水の温度を調べる
① 2Ωの実験用ヒーターに6.0Vの電圧をかけて,そのときの電流の大きさをはかる。
② 電圧と電流の大きさを一定にしたまま,ときどきガラス棒で水をゆっくりかき混ぜ,1分ごとに5分後までの水の温度をはかる。
測定したヒーターの電力,および,時間と水の上昇温度を右のような表にする。
① 2Ωの実験用ヒーターに3.0Vの電圧をかけ,そのときの電流の大きさをはかる。ときどきガラス棒で水をゆっくりかき混ぜ,5分後の水の温度をはかる。
② 2Ωの実験用ヒーターに4.5Vの電圧をかけ,そのときの電流の大きさをはかる。ときどきガラス棒で水をゆっくりかき混ぜ,5分後の水の温度をはかる。
③ 2Ωの実験用ヒーターに6.0Vの電圧をかけ,そのときの電流の大きさをはかる。ときどきガラス棒で水をゆっくりかき混ぜ,5分後の水の温度をはかる。
実験B 時間を一定にして水の温度を調べる
ポイント
方法①,②,③の結果を右のような表にする。
考察
ポイント
- A,Bの結果をそれぞれグラフにする。
- 実験Aを行った班のグラフと,実験Bを行った班のグラフをもとに,電力,時間,水の上昇温度の関係を求められるか。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.152>
探究4 結果から考察する
実験A
電力を一定にして求めた結果から,時間と水の上昇温度の関係をグラフにすると,図23のようになる。
実験B
時間を一定にして求めた結果から,電力と水の上昇温度の関係をグラフにすると,図24のようになる。
- 図23から,電力という条件を一定にした場合に,上昇温度は,電流を流した時間に比例することがわかる。
- 図24から,5分間という時間の条件を一定にした場合,上昇温度は電力に比例することがわかる。
- すなわち,「水の上昇温度」は,「電熱線に電流を流した時間」にも「電力」にも比例するといえる。
𝓎 という値(上昇温度)が,𝓍(電力)にも比例していて,𝓏(時間)にも比例していた。比例の式で考えると,
𝓎 = a 𝓍
でも,本来なら定数である a が,𝓏 によって変わってしまうんだね。𝓎 はどういう式になるんだろう?
4Ωや6Ωの実験用ヒーターを使っても同じ関係になるかやってみよう。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.153>
4 電熱線の熱量
電熱線の熱量は,電流を流した時間と電力に比例し,これをジュールの法則という。
$$ 熱量Q〔J〕= 電力P〔W〕× 時間t〔s〕^{❶} $$
p.267の例題で,熱量の計算に慣れておきましょう。
5 電力量〜消費された電気エネルギーの総量〜
電力は1秒間当たりに消費される電気エネルギーであるから,「電力〔W〕×時間〔s〕」は,その時間に消費された電気エネルギーの総量を表し,これを【電力量】という。
電力量の文字Wは「Work(仕事)」の意味です。電力量を表す文字Wと,電力の単位である「W」は同じ文字を使うので,まちがえないようにしましょう。
$$ 電力量W〔J〕=電力P〔W〕×時間t〔s〕 $$
電力量の単位は,熱量と同じようにジュールであるが,【ワット秒】(記号Ws)も使われる。1J = 1Wsである。
ここでジュールの法則と電力量の式の右辺を考える。
熱量𝑸〔 J 〕 = 電力𝑷〔W〕× 時間𝒕〔s〕と
電力量𝑾〔 J 〕 = 電力𝑷〔W〕× 時間𝒕〔s〕より
熱量𝑸〔 J 〕 = 電力量𝑾〔 J 〕である。
つまり,電熱線では,消費された電力量(電気エネルギー)すべてが熱に変わるということである(図25)。電熱線だけでなく,いろいろな電気製品で消費された電気エネルギーの総量も,電力量で表される。
この式から,電熱線で1Wの電力を1秒間消費すると,電力量は1Jであり,いいかえると1Jの熱量が発生することがわかります。また,太さや長さが異なる電熱線を使っても,それらが消費する電力が同じであれば,同じ時間で発生する熱量は同じになるということです。
熱量は時間にも比例するので,長時間使った分だけ熱量は増える。
図25 熱量と電力量の関係を電気器具でたとえる
❶ 「s」は「秒」を表す英語のsecondの頭文字である。
ニュース
※科学ニュースの更新は2025年4月を目処にはじまります。
- 2-3-1-3 2023年1月1日この節に関わるニュースはまだありません。