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※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.218>

2|前線と天気の変化

 気団と前線

 海洋上や大陸上などの広い場所に同じ空気が長い時間とどまると,地表の影響を受け,その空気の温度や湿度が一様になる。一様な性質をもつ大規模な空気のかたまりを気団という(図5)。

(a)北極付近や南極付近は,1年を通して温度が低い。一方,赤道付近は1年中温度が高い。このため,高緯度には冷たい気団ができ,低緯度には暖かい気団ができる。

(b)海洋では蒸発する水蒸気により,しめった気団ができる。一方大陸では水蒸気の供給が少ないため,空気にふくまれる水蒸気は比較的少ない。

図5 気団の性質

図6 前線のモデルをつくる実験

 前線の種類と変化

 冷たい気団(寒気団)と暖かい気団(暖気団)が接すると,急には混じり合わず,両者の間に境界面ができる(図6)。この境界面を【前線面】といい,前線面が地表と交わるところを【前線】という。 前線には,寒冷前線,温暖前線,停滞前線などがあり,天気図では図7の記号で表す。

図7 前線を表す記号

●寒冷前線 … 寒気が暖気側に進んでいく前線(図9下)。温度が低く密度の大きい寒気が,温度が高く密度の小さい暖気の下にもぐりこみ,暖気を急激に押し上げる。そのため,急な上昇気流による積乱雲(→p.265)が発達する。雲の範囲がせまいので,雨の降る時間は比較的短いが,大粒の雨が降り,しばしば雷や突風❶をともなう。

❶ 急にふく強い風をいう。

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※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.219>

●温暖前線 … 暖気が寒気側に進んでいく前線(図9上)。暖気が寒気の上にのり上げ,広い範囲でゆるやかに上昇するため,層状の乱層雲や高層雲など(→p.264)が生じる。雨の降る時間は比較的長く,降り方はおだやかである。

●停滞前線 … ほぼ同じ勢力の寒気と暖気がぶつかるときにできる前線(図10 ①)で,進む方向が定まらず,あまり動かない。

●閉塞前線 … 停滞前線が波打つと,寒冷前線と温暖前線ができる(図10 ②)。また,風がうずを巻く中心に低気圧(温帯低気圧)が発達することがある(図10③)。このときできた寒冷前線は,進む速さが温暖前線よりも速く,やがて温暖前線に追いついて重なり,閉塞前線になる(図10 ④)。

閉塞前線ができると,雲のうずが発達することがある。台風(→p.232)と似ているが,このうずは,前線をともない,発生のしくみも異なる。

図8 低気圧の中心
温暖前線のモデル
寒冷前線のモデル

① 暖気と寒気がぶつかって停滞前線ができる。

② 停滞前線が波打ち温暖前線と寒冷前線ができる。

③ 暖気と寒気の大きなうずができ,低気圧が発達する。

④ やがて閉塞前線ができ,低気圧は弱まる。

図9 停滞前線の変化と低気圧

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※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.264>

資料 前線にともなう雲の種類
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※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.220>

 前線の通過と天気の変化

 図11は,低気圧が日本周辺を通過したときの天気図である。天気図をならべてみると,低気圧は西から東へ移動していることがわかる。日本のある中緯度付近では,低気圧やそれにともなう前線が西から東へと移動するため, 天気もそれとともに西から東へと移り変わっていくことが多い。

4月12日
4月13日
4月14日

図11 低気圧の移動 (いずれも9時の雲画像と天気図)

❶ 低気圧が西から東に移動するのは偏西風(→p.224)が原因である。高気圧も西から東へと移動することが多い。

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※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.221>

●寒冷前線が通過するときの変化 … それまで地表をおおっていた暖気が寒気におきかわるため,気温が急激に下がる。また,大粒の雨が降り始め,風向が急に変わる。

●温暖前線が通過するときの変化 … 接近中に雨が降り,通過すると寒気から暖気におきかわるため,気温が上がる。また,降り続いた雨もやんで,天気が回復する。

 低気圧が通過するときは,気圧が下がり,一般に天気はくもりや雨になることが多い。それにともなって気温は下がる。一方,高気圧が通過するときは,一般に気圧が上がり,晴れになる。それにともなって気温は上がる。

グラフを見て,次のことが考えられる。

① 短時間に前線が通過したとしたら,寒冷前線か温暖前線の可能性がある。

② グラフではっきりしているのは,11時前後の気温の急な低下である。

③ ②の特徴に当てはまりそうなのは,寒冷前線である。

④ 11時を境に,風向は急に南から北に変化し,そのしばらく前から天気は雨に変わっている。この特徴も寒冷前線の特徴と矛盾しない。

図12 前線が通過したときの気温・風向・天気の変化

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※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.263>

資料 経験則も科学で説明できる

 現在のような天気予報が行われるようになったのは,情報通信技術や人工衛星による観測技術の発達したごく最近のことです。昔の人びとは,雲のようすを観察したり,空の色,朝焼けや夕焼けの色,太陽や月の見え方などを調べたりして,長い経験から地域の天気を予想し,その経験をことわざに残しています。

 たとえば,「夕焼けに鎌を研げ」ということわざは,夕焼けが見られた翌日は晴れて農作業がやりやすいから,鎌を研いで作業に備えるという意味です。夕焼けが現れるときは,自分のいる地域より西の方に太陽をさえぎる雲がないときです。天気が西から東へ移り変わることを考えると,晴れの予想が成り立ちます。

 また,「山がかさをかぶると雨」ということわざも全国に広く見られます。これは,山の斜面による上昇気流で雲が発生しているようすを表します。雲ができない日に比べて,しめった空気が入りこんでいることが考えられ,雨が近いという予想が成り立ちます。

 このように,昔の人びとの知恵として伝えられる天気のことわざの中には,現在でも通用するものがあります。

佐渡ヶ島越しの夕焼け(新潟県新潟市)
山頂にできた雲(新潟県 弥彦山)
笠雲(青森県 岩木山)

練習問題

ニュース

  • 【夕暮れの空に波打つ「ケルビン・ヘルムホルツ不安定性の雲」現れる】 2023年3月1日
    12月3日の夕方,福岡で,くるりくるりとたくさんの渦が並ぶような不思議な形の雲が観測されました。葛飾北斎の描く波のようにも,何かの動物が列をなして首をもたげているようにも見えるこれは「ケルビン・ヘルムホルツ不安定性の雲」と呼ばれる雲で,空気の層の境目が不安定な状態になることによって,このような波打った形になります。なかなか見られない珍しい形の雲,ぜひ写真をご覧ください。 もと記事リンク
  • 【世界の終わり!? サウスダコタ州の空全体が緑色に染まる】 2023年3月1日
    7月5日の午後,激しい嵐に見舞われた後のサウスダコタ州東部で,空が緑色に染まるという不気味な現象が観測されました。 記事にある画像を見ると,暗視ゴーグルを通したかのような,あらゆるものが緑色に染まる異様な風景が広がっています。 奇妙な現象の原因は,人為的なものではなく,自然現象。巨大な積乱雲に含まれる大量の水分が光を散乱させるので,雲を通した光は青色の光が多くなり,夕方近くなって太陽高度が下がったことで,雲の下から夕陽(赤色の光)が差し込んで,結果緑色に見えたのではないか,とのことです。 もと記事リンク

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