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2|四季の天気
1 冬の天気
冬には,日本の西の大陸上にあるシベリア高気圧が勢力を増し,それにともなって発達する冷たいシベリア気団の影響を強く受ける。また,大陸に比べてあたたかい太平洋上には低気圧が発生する。このため,日本付近では,図9のように西が高く東が低い【西高東低】の気圧配置になり,等圧線が南北方向に引かれ,せまい間隔でならんだ形になる。この気圧配置が原因となって,シベリア高気圧から強い北西の季節風がふく。
西高東低型の気圧配置。冬に「天気が荒れている」ときは,等圧線が南北にならび,その間隔がせまく,すじ状の雲ができることが特徴的である。(1月25日12時)
図9 冬の天気図と雲画像
シベリア高気圧からの季節風は冷たく乾燥している。しかし,日本海をわたるときに,比較的温度の高い海水から大量の水蒸気を供給されてしめり,雲を生じさせるようになる。季節風が日本列島に達すると,日本の中央部の山脈に当たって上昇気流となる。この上昇気流によって,日本海で生じて流されてきた雲が積乱雲へと発達し,日本海側に大雪をもたらす❶(図10)。
❶ 雪を降らせた空気は,山脈をこえて太平洋側にふき下りてくる。この空気は雪を降らせたあとのため,乾燥しており,太平洋側では晴天で乾燥した日が多くなる。
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2 春の天気
春は,シベリア高気圧の勢力が弱まり,大陸上にあたたかく乾燥した空気をともなう移動性の高気圧【移動性高気圧】が発生し,日本にやってくる。この高気圧におおわれている間は,あたたかくおだやかな天気が続く。しかし,西から低気圧が近づいてくると,天気はしだいにくもりに変わり,雨となる。
このように,移動性高気圧と低気圧が交互に西から東に通過していくため,晴れと雨の天気が,一般に4〜6日の周期でくり返されることが多い(図12)。
低気圧と高気圧が交互にならぶことが多く,また,低気圧も高気圧も移動性で,大陸から日本にやってくる。これらが春の天気の特徴である。
図12 観察地図の例
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初夏になると,日本の南の海上の太平洋高気圧と北の海上のオホーツク海高気圧が勢力を増しはじめる。これらの高気圧からできる南北の気団は,勢力がほぼつり合って境界があまり動かず,日本列島付近に【梅雨前線】とよばれる停滞前線を生じさせる。また,これらの気団はしめっているため,雲が生じやすくなる(図13)。こうして,毎年6〜7月❶に起こる雨やくもりの日が多い時期を梅雨❷という。
前線の北側に沿って雲が細長くのびている。(6月26日9時)梅雨は,停滞前線が日本にいすわっていて,雨が多いことが特徴である。
図13 梅雨の天気図と雲画像
図のような過程で,次々に発生した積乱雲が線状(長さ50〜300km程度・幅20〜50km程度)にならぶことによって,同じ場所で長時間続く極端な集中豪雨をもたらす。近年,そのしくみが明らかになるにつれて数多く報告されており(2017年の九州北部豪雨,2018年の西日本豪雨,2020年の熊本豪雨など),甚大な被害が生じている。
図14 線状降水帯
❶ 沖縄地域では5月に梅雨がはじまる。また,北海道には梅雨がない。
❷ 梅雨は「ばいう」とも読む。
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4 夏の天気
7月後半,太平洋高気圧は,勢力をさらに増し,梅雨前線を北に押し上げたり消滅させたりして,日本の広範囲をおおうようになる(図15)。
日本付近の気圧配置は,南の海上に太平洋高気圧があり,大陸上には低気圧があることが多い❶。この気圧配置によって,南の海上からあたたかくしめった季節風がふき,蒸し暑くなる。太平洋高気圧におおわれると晴れとなるが,強い日ざしによって地表付近の空気があたためられて上昇するので,午後になると積乱雲が発生し❷,一時的な雷雨になることもある。
日本には雲が少ない(8月5日9時)。夏は,日本全域が高気圧におおわれ,一時的な雷雨が起こりやすいことなどが特徴である。
図15 夏の天気図と雲画像
夏は,風が山を越えてふくときに,気温が上がりやすくなるフェーン現象(→p.263)が起こったり,コンクリートやアスファルトの面積が多い都市部で,1日中気温が下がりにくくなるヒートアイランド現象が起こったりして,特に暑くなることがある。
図16 夏のようす
❶ この気圧配置を南高北低ということがある。このときの季節風は,冬の北西の季節風のように強い風ではなく,ときには無風に近くなることも多い。
❷ 上空に通常より冷たい空気があるとき,地表のあたたかい空気は極めて上昇しやすい。このときの状態を「大気の状態が不安定」という。このようなときに積乱雲が発生しやすく,特に夏の午後に発生する積乱雲による雷雨は「夕立」とよばれる。
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資料 山を越えて空気があつくなる
しめった空気が山を越えたときに,山の風下側の空気が乾燥し,気温が上昇する現象を「フェーン現象」といいます。下の図のように,風上の日本海側のしめった空気が高い山を越えるとき,雲をつくって雨を降らせ,風下の太平洋側にふき下りたときには,日本海側よりも乾燥して高温の空気になります。
もともと空気の温度が高いときに,フェーン現象が重なると非常に高温になることがあり,日本の夏の最高気温で40℃を超えた例があります。
※ フェーン現象は,日本海側で起こることもある。
発展
上昇する空気の温度は,100mごとに約1℃下がります。しかし,露点以下になって雲ができはじめると,水蒸気が水滴に変わるときに出す熱のため,空気の温度は100m上昇するごとに約0.5℃しか下がりません。
一方,上昇した空気が下降するときは,常に100mごとに約1℃温度が上がります。これにより,山の風下側の方が気温が高くなります。
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5 秋の天気
秋のはじめ,太平洋高気圧の勢力が弱くなると,日本付近は南の暖気と北の寒気の境目になり,【秋雨前線】とよばれる停滞前線ができて,雨の日が多くなる(図18(a))。
雨の多い時期が過ぎると,秋は春と同じように,移動性高気圧と低気圧が交互にやってきて,晴れの日と雨の日をくり返す。東西に長い移動性高気圧がやってきたときは,晴れの日が長続きすることもある(図18(b))。秋の終わりになると,しだいに冬型の気圧配置が現れるようになる。
秋は,春から夏にかけてあたたかくなるときと逆のような天気の変化が起こり,やがて冬の天気に移り変わってゆく。
図18 秋の天気図と雲画像
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6 台風
低緯度の熱帯の海上では,強い日ざしにより上昇気流が活発に生じる。このとき,温度の高い海から豊富な水蒸気が供給されるため,発達した積乱雲が多数できる。そして,これらが集まると,熱帯低気圧とよばれる低気圧が発生する。熱帯低気圧が発達し,最大風速が17.2m/s以上になると台風とよばれる(図20)。
天気図で見た台風は,同心円状の等圧線によって囲まれている(図21)。中心に近いほど等圧線の間隔がせまく,強い風がふく。また,温帯低気圧と異なり,一般に前線をともなわない。
低緯度で発生した台風は,しだいに北上する。台風の進路は季節によって変わり,日本に接近または上陸して暴風と大雨による災害をもたらすのは,8月や9月に多い(図22)。
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台風が南から接近している。(8月5日)
図20 台風の天気図と雲画像
台風の東側は,南よりの風がふき,西側は北よりの風がふきます。台風の南よりの風は,台風の進行方向の風と合わさって,より強くなる傾向があります。
❶ 出典: 大内和良ら,気象集誌,84 巻 2 号,2006
ニュース
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