人間が移動する手段として,「車輪」は非常によく使われています。しかし,生物の中で移動手段として車輪を採用しているものはなぜかほとんど存在しません。
その理由としてよく言われるのが「車輪はデコボコ道が苦手だから」ですが,デコボコのない空中を飛ぶ動物に,プロペラで飛ぶものはいるでしょうか? 実際に車輪などの回転構造をもつ生物としては,べん毛をスクリューのように回転させる大腸菌や,魚の表皮にあるケラトサイト(細胞内にラグビーボールのような構造があり,それが回転することで動く)などが挙げられます。このような回転構造の致命的な弱点は,血管をつないで酸素や養分を送ることができないこと。だからこそ,回転構造をもつ生物は,微小なものに限られているのでしょう。