2007年,スペイン風邪ウイルスの遺伝子からウイルスを人工合成し,その強い病原性の原因を調べた研究の結果が発表されました。
スペイン風邪はH1N1型のA型インフルエンザウイルス感染症で,第一次世界大戦中の1918年に流行が始まり,全世界で2000万~4000万人の死者が出たといわれています。このような大きな犠牲が出た理由を,人工合成したウイルスをサルに感染させて検証したところ,このウイルスが致死性の肺炎を起こす上,ウイルスに対する自然免疫反応の調節にも異常を引き起こすことが分かりました。 現代のインフルエンザにはこのような強い病原性はないものの,強病原性の鳥インフルエンザウイルスが同様の免疫反応の調整異常を引き起こすことが知られており,今後の感染防止対策や治療法の確立などに研究の成果が活かされることが期待されています。