ヒトをはじめ,多くの生物は左右相称の体制をもっています。左右相称な生物は,発生過程で頭から尾に向かう軸ができ,通常この軸は分岐しません。しかし,環形生物のシリス科では,頭が一つで体軸が分岐し複数の尾部をもつ生物がこれまでに2種知られていました。
今回,新潟県佐渡ヶ島の海での潜水調査で,体軸が分岐しているシリス科の新種の生物が発見され,怪獣・キングギドラにちなんでキングギドラシリスRamisyllis. kingghidorahiと命名されました。キングギドラシリスはカイメンの体内に生息し,途中から幾度も枝分かれする体を宿主の体内にめぐらせています。 なぜこのような生物学の常識を逸脱した姿をしているかは謎に包まれていますが,カイメンから効率よく栄養を吸収したり,分岐した体の一部を切り離して繁殖を行ったりするなどの適応ではないかと考えられています。