1987年,深海の探査を行っていた研究者が,深海の海底に沈んだクジラの骨と,それに群がる特異な生物群集を偶然発見し,「鯨骨生物群集」と名付けました。
その後の研究で,クジラの死骸に腐肉を食べるサメなどの生物や,骨から栄養を取り出す貝類などが集まるのは最初の2年ほどで,その後はクジラの骨に含まれる油分などを栄養とする微生物から始まる特殊な生態系が成立し,数十年ほども続くことがわかりました。微生物がクジラの油を分解すると,副産物として硫化水素が発生します。このため,硫化水素をエネルギー源とできる特殊な生物しか生息できません。しかし,鯨骨生物群集の生物がどうやってこのような生態になったのかという謎は,まだ解明されていません。