リグニンは,植物の細胞壁などに多く含まれ,セルロースやヘミセルロースを固めて植物の体を支える重要な役割をはたす物質です。
落ち葉が水中で腐ると葉脈だけが残るように,リグニンの沈着した細胞壁は,なかなか分解されません。 このリグニンを分解する酵素をもつのが,白色腐朽菌と呼ばれるきのこのなかまです。さまざまなきのこのゲノムを調べたところ,担子菌類の一部がリグニンを分解する能力を獲得した時期と,石炭紀が終わりペルム紀へと移行する時期が,ほぼ一致することが分かりました。 はるか昔,分解されずに堆積した植物が石炭となったといわれていますが,現在の地球上で新たに石炭がつくられることがないのは,きのこが植物のリグニンを分解する能力を身に着けたから,という,興味深い研究です。以前から同様の考えは出されていましたが,今回遺伝子からもそれが支持されました。