Logo

寄生カマキリはアスファルトという「進化的トラップ」に引っかかる

カマキリのなかまに寄生するハリガネムシは,宿主の行動を操作し,自らの生息に適する水辺へと誘導することが知られています。では,『水辺のように見える場所』はどうでしょうか?京都大学の研究チームは,秋になるとアスファルトの道路で死んでいるハラビロカマキリが多いことに注目し,「アスファルトの道路はカマキリにとって水辺のように見えているのでは?」という点に着目した研究を行いました。その結果,アスファルトの道路は,カマキリの目には『水辺のように見える場所』であることがわかり,また,そこに姿を現すカマキリは,高い頻度でハリガネムシに寄生されていることも判明しました。今回の研究では,人工物であるアスファルトで反射された光が,自然環境では水辺で生じる水平偏光と近いものとなっていることが原因と結論づけています。
この現象は,本来ハリガネムシにとって有利となる偏光への適応が,人工物の急速な普及に対応しきれず,かえって不利な結果をもたらしてしまっており,「進化的トラップ」の一例といえます。自身が直接的に環境を感知するのではない寄生生物にとっても,人工物による進化的トラップが影響をおよぼす実例として,生物多様性保全の観点からも示唆に富むものです。

もと記事リンク(外部サイトに繋がります。公開から時間がたつと繋がらない場合があります)

論文リンク

読み取り中...