コインを投げる(コイントスをする)とき,表が出るか,裏が出るかの確率は,どちらも50%である―これは中学校段階でもよく目にする,確率の最も基本的な事例です。しかし実物のコインは,刻印や厚さなどの影響により,表面と裏面とで仕様が異なるのがふつうです。また,コイントスは人間が行う以上,操作にばらつきが生じることも容易に想像できます。誰でも一度は,”表裏が出るのって本当に同じ確率…?”と疑問を抱いたことがあるのではないでしょうか。
実は学術的な観点からも,コイントスの結果の確率に微妙な偏りが生じる可能性は,大まじめに指摘されています。2007年,数学者のグループは,「コイントスをする前と同じ面が出る確率は,理論上約51%」とする先行研究結果を発表しています。これを受けて今回,オランダのアムステルダム大学のグループを筆頭に,ヨーロッパ中の研究者が,実に48人がかりで350,757回という途方もない回数のコイントスに挑みました。その結果,「コイントスをする前と同じ面が出る確率は,50.8%」となり,理論と一致することが実際に確かめられたのです。コイントスで何かを決める場面では,しれっと同じ面を選んでおくのがお得かもしれませんね。
今回の研究手法は,理論と現実を比較するため,ただひたすらに事実を積み上げ,真理へと泥臭く一歩ずつ近づいていく,科学の本質がわかりやすく表された素晴らしい好例といえるものです。
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