たとえば,近所のスーパーに買い物に行き,食品を見るだけで,産地や消費期限,オススメの調理法までもが一緒に視界に映る…。こんな世界も,スマートコンタクトレンズを組み合わせた拡張現実(AR)技術の発展により,夢物語ではなくなってきています。しかし,このスマートデバイスは,眼球に直接装着するコンタクトレンズである以上,小型化・軽量化の問題をクリアすることが必須であり,特に,他のパーツに比べて小型軽量化の難しい電力供給システムをどうするかが,大きな課題となっていました。
この課題を解決すべく,米ユタ大学の研究チームは,スマートコンタクトレンズで機能する2種類の発電システムを開発しました。1つは,まばたきの際に生じる涙を利用するもので,涙にふくまれる電解質とレンズ表面の金属が触れることで起こる化学反応を利用し,電気を取り出すしくみです。まばたきという,誰にでも必ず起こる生理現象を利用していることは,ほぼノーコストで電気をつくり出せる非常に優れた着眼点といえるでしょう。もう1つの発電システムは,柔軟性のあるシリコン太陽電池を利用したものです。太陽電池は,まぶたに直接接することがないようコーティングが施され,太陽光以外の光源からも電力を得ることができます。「まばたき発電」と太陽光発電を組み合わせることで,まばたきをしているときにも,していないときにも,効率よく電力を得ることが可能とされています。
現時点ではまだ小さな電力しか生み出すことができませんが,さらなる改良によって実用化が期待されており,一見すると裸眼に見える人が,スマートコンタクトレンズを通じて電子の海から情報を得る未来は近づいているかもしれません。
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