磁石の同じ極どうしの間にはしりぞけ合う磁力がはたらき,たがいに反発することは,おもちゃからリニアモーターカーにまで利用される身近な現象です。これをうまく利用すると,下側からの磁力によって,上側の磁石を浮かび上がらせることができます。これが「磁気浮上現象」とよばれるものですが,原理がシンプルなこともあり,この現象はおおよそ調べつくされたと考えられていました。しかし,ごく最近になって,新たな磁気浮上現象が発見されました。2つの磁石を用意し,一方の磁石を回転させると,その影響でもう一方の磁石が空間に固定されることが判明したのです。従来の磁気浮上とは異なり,単に重力と逆向きの力を発生させるのではなく,特定の位置に維持されるしくみです。
この新たな磁気浮上現象は,実は簡単に再現することが可能なのもポイントで,2つの磁石と,毎分1万回転程度の家庭用の電動ドリルという,ごく簡単な装置で試すことができます。こんな簡単な装置でも,浮かんだ磁石は,直感に反する見たことのない挙動をしますので,ぜひリンクから動画を見ていただきたく思います。
なお,この新たな磁気浮上現象を引き起こす原理は難解なうえ,まだ研究途上段階にあるため,今後の詳細な調査が待たれるところですが,興味深い結果として,『小さな』磁石を浮かび上がらせるときのほうが,回転する側の磁石をより速く回す必要があり,さらに,空間に固定される位置はより『遠く』になることがわかっています。『大きな』磁石を『近く』に浮かばせるほうが,より速く回転させるエネルギーが必要となりそうなものですが,ここでも直感に反した挙動となることは,非常に面白いものといえるでしょう。
この磁気浮上現象は,非接触式のロボットアームや磁気スプリングなどの工業的な応用にも適しており,さらなる研究が期待されています。
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