再生医療の大きな目標のひとつに,「脳をはじめとする中枢神経系の再生」があげられます。この目標に到達すべく,スイス連邦工科大学チューリッヒ校の研究チームは,ウーパールーパーの終脳(人間の大脳に相当する部分)における細胞再生と遺伝子活性を解析しました。ウーパールーパーは,失った部位を完全には再生できない哺乳類と異なり,手足だけでなく脳や脊髄といった中枢神経系までも再生する能力をもっており,また,終脳には哺乳類の脳と同じような細胞が存在していることがわかっています。
終脳が取り除かれた部位が再生するようすを解析した結果,脳再生は,前駆細胞の急増→前駆細胞の神経芽細胞への分化→神経芽細胞のニューロンへの変化,のように進行することが確認でき,最終的には残っていた脳の部位との神経接続も回復していました。このことは,再生された領域が単に穴埋めされただけでなく,もとの機能を取り戻している可能性を示します。
また,再生の過程で活性化する遺伝子は,カエルの発生やプラナリアの再生でも見られる,生物間で比較的一般性の高いものであることも確認されました。そのため,ウーパールーパーをモデルとした本研究は,人間の脳再生を目指した再生医療の発展にも貢献する可能性があると研究チームは結論づけています。
わたしたちも将来的には,手足や消化器などだけでなく,記憶を失うことなく脳自体を交換する…といった,SFのような治療を受けることが現実になるかもしれません。
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