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宇宙からの脅威に核兵器は効果があるか?

核兵器は,その発明から80年以上が経過した現代であっても,地球上において最大級の威力をもつ兵器であることは,疑いの余地はありません。そのせいもあってか,宇宙からの脅威が描かれたSF作品では,地球をおびやかす宇宙人に対する切り札として核兵器が使用されたり,飛来する隕石が核兵器によって破壊されたりしています。しかし,『地球上において』と書いたように,核兵器の破壊力は,爆発時の熱で一瞬のうちに膨張した空気がもたらす衝撃波による部分が大きくなっています。そのため,空気の存在しない宇宙では衝撃波も発生せず,核兵器の破壊力は地球上にくらべ,熱や放射線による限定的なものとなります。SFの世界の話だけで済めばよいのですが,実際に地球に小惑星が落下する…となったときの対策として,核ミサイルをぶつけてその軌道をそらすという計画には,懐疑的な意見も多く見られます。
米サンディア国立研究所では,宇宙空間における熱や放射線の効果を検証するために,石英などからなる,隕石を模した小石に,強力なX線を照射する実験を行いました。その結果,6.6ナノ秒間という極短時間の照射にもかかわらず,小石は照射された側と反対側へ,高速でふき飛んでいきました。これは,非常に大きなエネルギーをもつ放射線の照射によって,小石の表面が瞬間的に蒸発して気体に変化し,そのときの体積の膨張にともなう圧力が,小石の残った固体部分を強く押したためと分析されます。実験では,小石は約250km/hにまで加速されており,この結果をもとに計算すると,直径4kmの小惑星の軌道をそらすことが可能であると研究者らは考察しています。仮に,直径4kmの小惑星が地球に落下すると,人類の存続に致命的な影響をおよぼすことは間違いないため,この規模の小惑星の被害を食い止められる可能性があると示唆されたことは,大きな成果といえるでしょう。
今回の実験は,地球上で,宇宙空間を想定した環境で行われたものですが,研究チームは,2022年にNASAが人工衛星を小惑星に衝突させたダートミッションのように,実際の小惑星を用いた検証を行いたいと今後の展望を述べています。

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