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遡上の切り札『鮭大砲』

急なダム建設で実家の川に帰れない…! そんなサケのみなさまに朗報です。

サケのなかまは,淡水の川で生まれたあと,成長すると海へ移動して数年間回遊し,ふたたび産卵のために自らが生まれた川へと戻るという生活サイクルをもっています。このとき,海から川,特に険しい上流への遡上(そじょう)は,命がけの旅路となることも多く,サケの遡上は,感動的なエピソードとして取り上げられることがしばしばあります。しかし,20世紀以降は,数多くのダムの建設によってこの遡上が阻害され,サケの個体数の減少や,サケの属する生態系への影響が問題となっています。
アメリカの企業が開発した『鮭大砲』は,ダムで分断されてしまった川であっても,サケを安全に上流へと運ぶための切り札です。『大砲』とはぶっそうな名前ですが,これはもちろん比ゆ的な表現で,実際には『トンネル』のイメージとなります。この装置は,直径30cmほどのシリコン製チューブを下流から上流までつなげ,低圧の空気と少量の水によって,サケを傷つけることなく滑らかに上流へと輸送します。輸送速度は5~10m/秒程度なので,かなりのスピード感です。
現在,『鮭大砲』はすでに改良版もリリースされており,人間の手でサケをチューブに押しこむのではなく,サケを自然にチューブの入口へ誘導するためのくふうがなされているほか,AIと画像解析技術による自動選別を行い,外来種を送り出してしまうようなことは避け,目的とするサケのみを選択的に輸送することもできます。アメリカのダムではすでに導入されているところもあり,サケの遡上を支援しながら生態系の保護にも貢献しています。『鮭大砲』は,人間とサケが手を取り合うための秘密兵器となるかもしれません。

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