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極限まで薄い金箔を作る

「金箔」は,料理をゴージャスに見せる目的のためや,仏像や工芸品の装飾用として使われます。この金箔は,実は想像以上に薄く,一般にその厚さは0.0001mmほどです。ただそれでも,これは金原子500個分程度の厚さとなります。この金箔を,金原子1個分の厚さで作り出す試みに,スウェーデンのリンショーピング大学に所属する柏屋駿氏らの研究チームが成功しました。今回完成した,原子1個分の厚さしかない極限まで薄い金シートは,「Goldene」と名づけられました。
金箔を原子1個分の厚さにできると,どんないいことがあるのでしょうか?わかりやすいメリットは,貴重な元素である金を節約できるということです。また,炭素の研究から判明した現象なのですが,物質はその厚さが原子1個分になると,無数の原子が集まっている通常の状態と比べ,電気伝導性が飛躍的に高まるなど,異なる化学的性質を示すことがあり,この性質を利用できる可能性があることもメリットといえます。この,原子1個分の厚さしかない状態のシート状の物質は,特に2次元物質ともよばれます。
Goldeneを作るにあたっては,あつかいの難しい金の層を傷つけずに分離する方法が焦点となりました。この分離の操作には,1918年に東北大学の村上武次郎氏が開発した「村上試薬」が活用されたことも,注目すべき点といえるでしょう。
Goldeneには水素を生成する触媒としての有用な可能性が示唆されており,今後はその特性を活かした応用が期待されます。

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