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南極の氷の下のすがた

地球温暖化によって地球の温度は上昇しており,このままでは極地の氷がとけてしまう――。このような話は,誰でも一度は耳にしたことがあると思います。では,実際に氷がとけると,その下にはどのような陸地が広がっているのでしょうか?
南極の氷床は,長年にわたる積雪と氷の圧縮によって形成され,厚さ数千mにも達する,地球上で最も分厚い氷の層となっています。氷床の下には陸地がありますが,この陸地の地形によって水の流れが決まり,また,水の流れを理解することは,氷床の安定性や融解メカニズムを解明する際に重要となります。すなわち,氷の下の陸地を知ることは,南極の地質や過去の環境を知る手がかりにもなり得るのです。そこで2001年から,英国南極調査局では,南極の地図を作成するプロジェクトを進めています。地図はつねに更新されており,今回は3回目となる地図「Bedmap3」が完成しました。作成には衛星や地震波探査などの最新機器が活用されているほか,航空機や船舶による実地調査も行われます。実地調査では,なんと犬ぞりも活用されています。あらゆる手段で得たデータから氷床の厚さや地形を精密に測定し,高精度のグリッドマップが統合・再構築されました。
この地図により,南極の氷床下に隠された山脈や古代の河川跡,海面より低い盆地などが明確に示されました。また,南極の氷の総量は2717万km3で,平均の厚さは1948mにもおよび,地域によっては4000mを超える厚さとなることが確認されました。
研究成果は,氷床の動きのモデル化だけでなく,将来の海面上昇の予測にも活用され,最大58mの海面上昇の可能性が示唆されています。また,外界と隔絶された氷床下の湖には,未知の生物がいる可能性もあり,生物学の分野からも注目を集めています。Bedmap3は,南極の理解を深める鍵となることでしょう。

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