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オスの蚊も血を吸っていた?―嫌われ者の進化学

暑いシーズンになるとどこからともなく現れ,血を吸い,吸ったあとにかゆみを残すことで嫌われがちな蚊。吸血行動をとるのは,産卵に多くの栄養を必要とするメスのみなのですが,その一方で,吸血に使用する口のつくりは,もともと花の蜜などを吸うためにもっていた,メス・オスに共通のつくりが進化したような構造をしています。とすると,「どちらも共通してもっているつくりなのに,メスだけが都合よく進化をとげた」というストーリーは不自然なことがわかるでしょうか。そのため,吸血を行うことができるオスの蚊がかつて存在したことは,蚊の進化,ひいては,蚊が関わる生態系全体の進化を裏づける強い証拠となり得るため,発見が期待されていました。
今回,レバノンで産出された,白亜紀(およそ1億4500万年前~6600万年前)初期の琥珀にふくまれるオスの蚊の化石からは,さまざまなことが明らかとなりました。まず今回の発見によって,蚊の起源が,これまでの最古の証拠であった白亜紀中期のものから白亜紀前期にまで,約3000万年ほどさかのぼることが判明しました。また,化石の蚊のオスには,吸血用の口器が確認されました。これは,オスの蚊もかつて吸血していた可能性を示しています。さらに,この琥珀ができた時期は,花をつける植物の出現期と一致するものであり,花の蜜を吸うために飛び回る蚊に花粉を運んでもらう植物の進化の証拠としても重要な意味をもっています。
研究チームは,今後の課題として,かつてオスも吸血していた理由や,口器が退化した経緯についての解明をあげています。

※琥珀(こはく)…樹木などから出る樹液が固まり,樹脂の化石となったもの。まれに,昆虫などの小動物を取りこんだ状態で固まることがある。

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