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※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.68>

1|生物の生殖と細胞

 生殖

 これまでに,多くの動物は卵でふえ,植物は種子や胞子でふえることを学習した。このように生物が子をつくることを【生殖】という。一方,生物によっては,からだ(親)から直接新しい個体(子)が生じることがある(図1)。これも生殖という現象のひとつである。

図1 ベンケイソウのふえ方

 探究1   いろいろな生殖と親子の特徴
方法

右の例などを参考にして,次のような観点でまとめる。

  • その生物の親はどのような特徴をもっているか。
  • その生物は,どのような生殖の方法をとっているか。
  • その生物の子はどのような特徴をもっているか。
  • 一人ひとりで調べる生物を決めたあと,それぞれが調べた結果をもちよって,生殖方法や,親と子,子どうしの特徴を整理する。

さまざまな生物について,生殖の方法と,親子の特徴を調べましょう。

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(a)ハムスターの親子

(b)球根でふやしたチューリップ

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メダカの生殖のしかたは,小学校で学習したね。

植物の生殖のしかたは,中学1年で学習したね。

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じゃがいもやさつまいもの いも は,種子ではないけど,新しい個体になるよ。

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※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.69>

 「探究1」などから,生殖には,雄と雌,おしべとめしべが関わる場合と,それらが関わらない場合があることがわかる。

 動物の受精と発生

 多くの動物には雄と雌があり,雄は【精子】を,雌は卵をつくる。精子や卵は生殖のための特別な細胞で,これを【生殖細胞】という❶。雄と雌,おしべとめしべが関わる生殖を【有性生殖】という。

 卵と精子の核が合体することを【受精】といい,受精した卵を【受精卵】という。受精卵からからだがつくられていく過程を【発生】といい,発生がはじまってから,自分で食物をとりはじめるまでの間を特に【胚】とよぶ(図2)。

 また,生物のもつ形や性質(たとえば動物のからだの大きさや毛の色,植物の大きさや花の色・形など)を【形質】という。有性生殖では,子の形質は親とまったく同じになるとはかぎらない。

図2 カエルの受精と発生❷

❶ 生殖細胞以外を体細胞という。体細胞と生殖細胞では,細胞の中の染色体の数が異なる(→p.83図3,4)。

❷ カエルなどの場合,雌が水中に産んだ卵に雄が精子をかけ,精子が水中を泳いで卵にたどりつく。陸上にすむは虫類,鳥類,哺乳類などでは,精子は雌の体内に放出されて,雌の体内にある卵と受精する。

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※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.70>

 被子植物の受精と発生

 アサガオやアブラナなどの被子植物が種子を残すには,おしべとめしべが必要である。柱頭に花粉がつくことを【受粉】という。受粉すると,やがて子房やその内部の胚珠は大きく成長し,子房は【果実】に,胚珠は【種子】になる(図4)。そして,種子はいろいろな方法で散布される。散布された種子は,発芽に必要な条件(水や温度など)がそろうと発芽し,成長する。

 被子植物の生殖細胞は,花粉の中でつくられる【精細胞】と胚珠の中でつくられる【卵細胞】である。精細胞と卵細胞が受精することで受精卵ができ,やがて種子や果実ができる。このように被子植物も有性生殖でふえる。

図3 植物のふえ方の例

中学1学年では,受粉ののち果実や種子ができることを学びました。ただし,植物にはそれ以外のふえ方もあります。ジャガイモの②矢印の部分,タマネギの④矢印の部分は,おしべ・めしべが関わらずにでき,果実や種子ではありませんが,成長して植物のからだができていきます。一方,ラッカセイの⑤矢印の部分は,②,④のように土中にできますが,これは果実です。

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図4 花が果実になるまでの変化(サクラの例)
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※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.71>

 探究2   被子植物の受精の方法
方法

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受粉したとき,精細胞と卵細胞は図5のような位置関係にあります。どのようにして受精が起こるのでしょうか。

動物の場合,動くのは精子で,卵は動かないよね。植物も同じように考えると,精細胞が動くのかな?

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図5 被子植物の生殖細胞

準備 

インパチエンス・ホウセンカなどの花,ショ糖水溶液(10%❿),細い筆,つまようじ,顕微鏡観察用具

① スライドガラスにスポイトでショ糖水溶液を1滴落とす。

② ショ糖水溶液におしべの花粉を落として,カバーガラスをかぶせ,プレパラートをつくる。

③ プレパラートをステージに置いたまま,5分ごとに花粉のようすを顕微鏡(100〜200倍)で観察する。

結果

花粉をショ糖水溶液に落とすと,すぐに花粉から管が伸びはじめた。10分後には,花粉の長さの何倍にも管が伸びた。

図6 花粉から管が伸びるようす
考察

花粉から管が伸びることを考えると,この管が卵細胞まで伸びていくと考えられる。精細胞はこの管の中を通って,卵細胞まで移動することができるのだろう。

❶ 質量パーセント濃度

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※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.72>

 「探究2」で観察できるように,受粉した花粉は❶,めしべの中に花粉管を伸ばす。このとき,精細胞はその中を先端に向かって運ばれていく。精細胞は胚珠に達し,精細胞の核と胚珠の中にある卵細胞の核が合体して,受精卵ができる。

 受精卵はやがて,根のもと(幼根)や子葉などをそなえたつくりになる。このつくりを【胚】という。胚をふくむ胚珠全体は種子になり,やがて発芽する(図7)。動物(→p.69)と同様に植物の場合も,受精卵から個体のからだがつくられていく過程を発生という。

図7 被子植物の受精と発生
花粉管の中を移動する 精細胞(ホウセンカ) 試料を染色してある。
胚珠のようす(ユリ)

❶  柱頭からは,糖などの養分や水分が混じった液体が出ていて,柱頭についた花粉は,この液体を吸収し花粉管を伸ばす。この液体の濃度は種類ごとに異なり,花粉管が伸びやすい状態になっている。

 発展 

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被子植物以外,たとえば裸子植物もふえ方は同じですか?

いえ,イチョウでは,花粉から精子を出すことが知られています。シダ植物,コケ植物も精子が関わっています。

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生殖のときに精子が関わるのは動物だけでないということです。

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※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.251>

発展 シダ植物,コケ植物の有性生殖は精子と卵細胞が関わる

 シダ植物やコケ植物は,生殖するときに,しめった場所や雨などの水が必要である。それは,これらの植物が精子をつくり,その精子が水中を泳いで卵細胞にたどりついて受精が起こるからである。

 一方,被子植物は,進化の過程で花粉管を伸ばして受精するようになったことで,シダ植物やコケ植物とは異なり,乾燥した地域でもふえることができるようになった。

(a)イヌワラビのふえ方
(b)ゼニゴケのふえ方

ニュース

※科学ニュースの更新は2025年4月を目処にはじまります。

  • 【海中で海草や海藻の受精を助ける「海のハナバチ」がいた!】 2023年3月1日
    植物に花が咲き,そこに蜜などを目当てにハチなどの動物がやってきて,植物の受粉を媒介する。このような仕組みは,最近まで,陸上にのみ存在すると考えられてきました。 しかし,近年,浅い海に生育するタートルグラス(Thalassia testudinum)の花粉がぜん虫や甲殻類によって運ばれている例や,潮だまりの紅藻類グラシラリア・グラシリス(Gracilaria gracilis)では,遊泳能力のない精子が,紅藻の粘液を食べにくるワラジムシの仲間によって運ばれている例が発見されました。 海草は陸上植物から進化した植物ですが,藻類は違います。一連の発見は,「送粉共生」が植物の誕生よりも早く生まれた可能性をも示唆しているのです。 もと記事リンク 論文(海草) 論文(海藻)
  • 【フロリゲンの正体】 2023年3月1日
    フロリゲンは,1936年に花芽をつくる植物ホルモンとして存在を提唱されていたものの,長らく正体がわからず,教科書にも「未知の物質」などと書かれてきました。 しかし,1999年以降さまざまな発見が相次ぎ,フロリゲンの正体はFLOWERING LOCUS T (FT )と呼ばれる遺伝子にコードされたタンパク質(FT/Hd3a)であることが判明しています。ジベレリンなどほかの植物ホルモンは低分子の化合物やペプチドですが,フロリゲンはそれらと比べ非常に大きいタンパク質がまるごと植物ホルモンとしてはたらきます。 また,フロリゲンは葉で作られた後,茎頂に輸送されて花芽形成を誘導しますが,その際にほかのタンパク質と合体して複合体をつくり,それがDNAに結合して花芽をつくるために必要な遺伝子を活性化させるという花芽形成の仕組みも明らかになりつつあります。 もと記事リンク

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