※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.82>
1|遺伝
1 染色体と遺伝子
親の形質が子孫に現れることを【遺伝】という。親から子へと伝わる形質(図1)を決める要素は【遺伝子】とよばれ,遺伝子は染色体にある。
1つ1つの体細胞❶がもつ染色体の数は,生物の種類によって決まっていて,偶数である(表1)。また,大きさと形が同じ染色体が2本ずつある(図2)。
図1 生物の形質の例
図2 ヒトの染色体の大きさと形(女性の例)
❶ →p.69側注❶。
※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.83>
2 無性生殖のときの染色体の伝わり方
無性生殖では,親のからだの一部から子ができる。このときは体細胞分裂が起こる(図3)。体細胞分裂では,染色体は複製されて,数が2倍になってから分裂し,新しい2個の細胞に等しく分かれる。このため,親と子の細胞がもつ染色体の数と,その染色体にある遺伝子は同じになる。その結果,親と子のすべての形質は同じになる。
3 有性生殖のときの染色体の伝わり方
有性生殖では,生殖細胞ができるときに,親の細胞で対をなすそれぞれの染色体が,別べつの生殖細胞に入る(図4)。こうしてできた生殖細胞の染色体の数は,親の細胞の半分になる。このような細胞分裂を減数分裂という。減数分裂でできた2つの細胞が1つになると,子の染色体の数は親と同じになる(図5)。
※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.250>
資料 無性生殖にも欠点がある
無性生殖をする生物には,1つの個体だけですぐにふえることができるという長所がある。では,無性生殖に短所はないのだろうか。歴史上有名な事件を紹介しよう。19世紀のアイルランドでは,ジャガイモが主な食物だった。ところが,このころ,ジャガイモがすぐに腐ってしまう病気が広まってジャガイモが保存できなくなり,大ききんが起こった。
この原因は無性生殖の特徴と関係していた。当時も今と変わらず,ジャガイモは,いもの無性生殖でふやしていた。そのため,もとになったジャガイモの形質が,そのまま子孫のジャガイモに受けつがれたのである。ところが,もとになったジャガイモには,ある病気に弱いという形質があり,ふやしたジャガイモはその形質を受けついでいた。その結果,ジャガイモが同じ形質ばかりになり,病気が広まりやすくなってしまったと考えられている。
無性生殖では,子孫の形質が親と同じになるため,このような短所がある。一方,有性生殖では,子孫の形質がさまざまになり,それらの中には環境の変化に耐える個体がいる可能性がある。一般的なジャガイモの種類は花をつけても種子ができないが,本来ジャガイモも有性生殖により種子でふえる。
※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.250>
資料 農業を変えた無性生殖「接ぎ木」
ある種類の植物の一部を別の種類につなぎ合わせる「接ぎ木」という技術を用いると,2種類の植物の長所をもった木や苗を,たくさん作ることができます。
たとえば,病気に強い形質をもつ種類を土台として使い,花がさいて果実のできる枝は,味のよい形質をもつ種類を使って育てます。この方法は,1930 年前後から日本の一部の地域で実用化されはじめたといわれています。近年では,スイカの94%,キュウリの93%,ナスの79%,トマトの58%が接ぎ木栽培で育てられ,海外でも急速に普及しています。
接ぎ木は現在の私たちの食料を支える大切な技術になりました。
ニュース
※科学ニュースの更新は2025年4月を目処にはじまります。
- 【Y染色体がない哺乳類でオスが生まれる仕組みを解明!】 2023年3月1日哺乳類はメスがXX,オスがXYの性染色体をもちます。しかし奄美大島に生息するアマミトゲネズミは,進化の過程でY染色体を失い,オスもメスもX染色体を1本しかもたず,どのように性別が決まるのかは長年の謎でした。 今回,北海道大学などの研究者による研究チームがアマミトゲネズミの遺伝子すべてを網羅的に調べたところ,雌雄差のある部分が見つかりました。それは1本だけ残されたX染色体ではなく,3番目の常染色体の上にありました。Y染色体の消失にともない,常染色体の1本が進化して新たな性染色体になったと考えられています。 ヒトのY染色体も将来的に退化するという予想がありますが,その場合でも,トゲネズミのように常染色体が変異することで,「男性」という性は残っていくのかもしれません。 もと記事リンク
- 【6本の性染色体をもつカエルを発見:広島大学】 2023年3月1日生物の雌雄を決める性染色体は,通常1対2本。私たちヒトも,2本の性染色体をもっています。 しかし,台湾に生息するスインホーハナサキガエルについて新しい手法で解析したところ,このカエルはオスが3本のX染色体と3本のY染色体,メスが6本のX染色体をもっていることが分かりました。また,この6本の性染色体については,もともと3本の染色体が三つ巴式に融合した結果,性染色体が6本に増えたのだということも明らかになりました。 もと記事リンク
- 【「かわいいカモの親子が話題」と放送予定 専門家から「ちょっと待った!」のワケ】 2023年3月1日野鳥の子育ての時期になり,メディアでも愛らしい野鳥の親子が取り上げられています。親鳥の後をふわふわのひなが何羽もついて歩くマガモやカルガモは,特に人気の話題です。 しかし,今回撮影された動画に,専門家から待ったがかかりました。 問題の動画は,福山市で撮影された「カモの親子」。一見するとマガモのようですが,実は家禽の「アヒル」の品種のひとつ「アイガモ」と「野生のマガモ」が交配して生まれた,「雑種のアヒル」だったのです。 本来ならば自然界にあるべきではない「雑種のアヒル」。同様の個体は,福山だけでなく,各地で報告されているそうです。ほほえましい親子の光景……と報じるだけではすまされない問題をはらんだ映像です。 もと記事リンク