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※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.254>

発展 再生医療への期待

● 失ったからだを再生できるイモリ

「幹細胞」とは,細胞分裂が可能で,かつ,さまざまな種類の細胞になる能力をもっている(分化できる)細胞である。動物の場合,受精卵は,からだのどのような組織,器官にもなれる万能な幹細胞である。しかし,一般にこの能力は,胚が成長するにつれて失われてしまう。幹細胞は,いったん特定の細胞に分化すると,幹細胞にもどることはない。

 ただし例外も知られている。イモリは,あしを失っても,切り口からもとの形と機能をもったあしが再生する(図(a))。これは,傷口周辺の細胞が,分化した状態から,幹細胞に変わることができるためである。

傷口に細胞が集まってきて,組織・器官ができてゆく。

(a)再生中のイモリの足

●iPS細胞の発見と医療への応用

 ヒトの受精卵からできた胚の一部を取り出して培養したものは,さまざまな組織や器官に成長させることができ,「ES細胞」とよばれる。ES細胞の医療への応用が考えられたが,ヒトの受精卵を使うことから倫理的な問題があった。

 山中伸弥教授らは,ES細胞の能力をもたらす遺伝子を研究する中で,ヒトの皮ふの細胞にいくつかの遺伝子を入れる遺伝子組換え技術により,その細胞が,からだのさまざまな細胞になる能力をもつようになることを発見し(2007年),この細胞をiPS細胞(人工多能性幹細胞)と名づけた。

 iPS細胞の技術を用いると,ある組織の細胞から,別の組織や器官をつくり,患者に移植する治療(再生医療)が実現する。また,iPS細胞からつくったヒトの組織は,開発中の薬の効果や副作用の研究に利用することもできる。

 現在,世界中の機関・企業がiPS細胞を使った再生医療の実用化を目指し,その中でも日本では先進的な研究が行われている。たとえば,目の組織,肝臓の組織,神経の組織をつくって移植したり,血小板をつくって輸血したりするなどの研究であり,一刻も早い実用化へ向け,取り組みが続けられている。

再生医療の原理
ヒトiPS細胞の集合体
ヒトiPS細胞をもとに作製された神経細胞(着色してある)

(b) iPS細胞を使った再生医療

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