※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.168>
1|太陽系の天体
1 太陽系
太陽,地球,月など,宇宙空間にある物体をまとめて【天体】という。また,太陽を中心とした天体の集まりを【太陽系】という。
太陽系には,太陽のまわりをまわっている大きな天体が8つ(水星,金星,地球,火星,木星,土星,天王星,海王星)あり,これらを【惑星】という。
図6のように,それぞれの惑星では,直径,質量,密度,構成する物質などに大きなちがいがある。
探究3 火成岩のつくり
天体がどのような環境をもっているか,図6の資料を読み取りながらまとめましょう。それぞれの天体の大きさは,実際はp.166のように異なりますが,ここで示している写真では,すべて同じ大きさで示しています。
表面のようすがずいぶんちがうね。
すべての天体で,地球のような地面があるのかと思ったけど,ちがうようだね。
ここでは比較のために地球の月を載せています。月は惑星ではありません(→p.172)。
図6 太陽系の惑星と月
数値は主に理科年表2023 による。
※ 写真の上半分は雲を取り除いた地表のようすである。
❶ 地球の赤道半径は約6400kmである。
❷ 地球の質量は約6×1024kgである。
❸ 地球と太陽の平均距離は約1.5億kmである。
❹ 昼夜の温度差が大きい天体は,平均でなく温度の幅を示す。
※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.170>
2 惑星
惑星は,それぞれ決まった道すじ(軌道)を通って,一定の時間をかけて太陽のまわりを回っている(図7)。このように天体がほかの天体のまわりを回ることを【公転】という。
太陽系の惑星のうち,太陽と距離が近い水星・金星・地球・火星の4つは,どれも比較的小さく質量も小さいが,表面や内部がかたい岩石や金属でできていて平均密度は大きい。これらを地球型惑星という。一方,火星よりも太陽から遠い木星・土星・天王星・海王星の4つは,どれも比較的大きく質量も大きい。内部に岩石はあるが,水素やヘリウムでできている部分が多く,平均密度は小さい。これらを木星型惑星という。
※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.171>
3 地球
惑星の環境はp.168図6のように多様であり,そのなかでも地球には大量の水が液体として存在し,それが大気中と地表の間を循環している。地球表面は,酸素をふくむ大気でおおわれ,太陽からの距離が適度であるために,液体の水が存在できる適度な温度に保たれている。地球のように,生物が発生し,存在し続けるためには,適度な重力,恒星(→p.176)からの適度な距離,豊富な液体の水,酸素などが必要であると考えられている。
図8 太陽から受け取るエネルギー
※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.264>
発展 第二の地球はいつ見つかるか
夜空にかがやく星は,太陽と同じような恒星である。太陽系では,太陽(恒星)のまわりを,それぞれ環境の異なる8つの惑星が公転している。では,ほかの恒星も太陽系のように惑星をもっているのだろうか。
近年,観測技術の発達によって,恒星の中には,複数の惑星(太陽系外惑星)をもち,太陽系と似たようなすがたの恒星もあることがわかってきた。恒星とその周囲をまわる惑星をまとめて「惑星系」という。こうした惑星の中には地球型惑星もたくさんあることがわかっている。太陽系は,銀河系にたくさんある惑星系の1つなのである。
また,太陽系外惑星の中には,液体の水が存在する可能性がある天体も見つかってきている。
※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.172>
太陽系には惑星以外にも,衛星,小惑星,すい星に分類される天体がある。
4 衛星
月は地球から約38万kmの距離にあり❶,約1か月かけて地球のまわりを公転している。月のように,惑星などのまわりを公転している天体を【衛星】という(図9)。
月は地球に最も近い天体であり,赤道半径約1700kmの球形で,岩石でできている(図10)。表面にはクレーターとよばれる,隕石が衝突したあとが多数見られる。また,大気はないため,天気の変化などはない。
図9 太陽・惑星・衛星の関係
図10 月の表面のようす
❶ カモオアレワとよばれる岩石からなる天体は,地球の公転とほぼ同じ軌道で,太陽のまわりを公転している。これは,月に他の天体が衝突するなどして宇宙に放出された,月の一部である可能性があるといわれている。
※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.173>
地球以外の惑星にも衛星がある。たとえば,木星のイオ・エウロパ・ガニメデ・カリストや,土星のタイタンなどで,それぞれの環境は異なっている(図11)。
図11 衛星の環境
5 小惑星
太陽系の天体には,惑星や衛星などの大きなものだけではなく,小さなものもある。主として火星と木星の軌道の間で太陽のまわりを公転しているたくさんの小さな天体を【小惑星】❶という(図12)。
日本の探査機「はやぶさ」「はやぶさ2」は,小惑星「イトカワ」「リュウグウ」の岩石を採取して,地球に持ち帰ることに成功している。
図12 小惑星
❶ 小惑星は,主に岩石でできている。大きなものでも直径数百kmで,直径1km以下のものは何十万個もあると考えられている。
※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.174>
6 すい星
主に氷でできていて,太陽に近づくと尾を伸ばす天体を【すい星】という(図13)。その多くは,太陽の近くを通る細長い楕円形の公転軌道をもち,海王星の軌道の外側にある天体(太陽系外縁天体)の集まりや,そのさらに遠くからやってくる。
※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.264>
発展 どこまでが太陽系?
太陽系外縁天体の多くは,惑星と同じような軌道面をもっている。その広がりを「エッジワース・カイパーべルト」とよんでいる。この領域に属する天体は,冥王星,カロン,エリスなどのように名前のついている天体で,その半径が1000kmを超える場合もある。
これらの天体のさらに外には,「オールトの雲」とよばれる領域があって,そこにはすい星のもとになる天体があり,すい星はそこから太陽めがけて落ちてきて地球に近づくと考えられている。オールトの雲がなぜあるのかは諸説あるが,太陽系ができたときに中心に集まりきれなかった天体の名残であるといわれている。
エッジワース・カイパーベルトとオールトの雲は図のようにつながっていると考えられている。つまり,オールトの雲が太陽系の縁ということができる。
ニュース
- 寒い火星をあたたかく 2025年5月7日他の星を地球に似た環境に人工的につくり変えることを,テラフォーミングといいます。太陽系の隣の惑星である火星は,テラフォーミングの最有力候補とされていますが,現時点では人類の居住には適していません。これは,火星の平均気温が-60℃と低く,水が液体の状態で存在できない(※)ことが,大きな理由のひとつです。また大気の状態は,気圧が地球のおよそ150分の1しかないうえ,成分の組成が地球とは大きく異なり,酸素が0.13%程度ときわめて少なくなっています。 この環境を人が住めるものとするためには,まず,火星をあたためることが第一となります。そのため,過去には小惑星を衝突させて温室効果ガスを得る方法や,地球から持ち込んだフロンガスを大量に排出して温暖化を図る方法などが提案されましたが,いずれも現実的ではありませんでした。そこで,米ノースウェスタン大学の研究チームは,現実的な方法として,人工ナノ粒子を生成し,この粒子を大気中へ拡散させることで温暖化を促進する方法を提案しました。この方法がこれまでのものより”現実的”といえる理由は,地球からの持ち込みによるものではなく,もともと火星に存在している,ごく小さな塵(ちり)を利用する点にあります。研究チームは,火星の塵は,そのままでは温度を下げる効果がありますが,約9μmの短い棒状の粒子へと加工して特定の形状や大きさに揃え,上空へと放出・拡散することで,温暖化に役立つことを発見しました。棒状の微細粒子は熱を閉じ込め,太陽光を火星の地表へ散乱させることで,表面温度を30℃以上上昇させる可能性があるそうです。 ただしこの方法には,地球の年間金属生産量の3,000分の1に相当する,微細粒子の大規模な製造工程が求められ,また,継続的な放出も必要となるため,現時点での実現はまだまだ難しいといえます。それでも,研究チームによれば,この方法は従来の火星温暖化案より5,000倍以上効率的であり,火星移住への一歩となるアイデアであると報告されています。 ※火星の水は地下に氷の状態で閉じ込められていますが,近年,地下深くに液体の水が発見されたとの報告があり,研究の進展が待たれています。 もと記事リンク(外部サイトに繋がります。公開から時間がたつと繋がらない場合があります) 論文リンク
- 【地球の「月」は,宇宙ではレアな存在? 地球外生命体がいる星の条件とは】 2023年3月1日太陽系の惑星は多くが衛星をもちます。地球の衛星・月の半径は地球の約1/4以上ですが,実はこれは太陽系の衛星としては例外的な大きさです。この大きな月の存在が,地球に生命が誕生し進化できる環境をもたらしたと考えられています。 そこで,地球以外に生命が存在する星を探すために,月のような大きな衛星をもつ惑星の条件をシミュレーションで求める研究が行われました。その結果,地球の6倍以上の質量を持つ岩石惑星と,地球の1倍以上の質量を持つ氷の惑星では,大きな衛星ができないことが分かりました。このことから,今後の地球外生命体の探査では,より小さい惑星をターゲットにすべきと研究チームは提案しています。 もと記事リンク 論文
- 【日本の宇宙探査機,火星の衛星「フォボス」へ】 2023年3月1日2020年代の前半に計画されていた日本の火星の衛星への探査計画。このたび,火星の二つの衛星「フォボス」と「ダイモス」のうち,「フォボス」へ向け,2024年に探査機を打ち上げるという日程で中間報告が取りまとめられました。 火星探査計画では,「はやぶさ」「はやぶさ2」同様,フォボスの表面から「砂」を採取するサンプルリターンを計画しています。火星や火星の衛星がどのように形成されたかという謎を解き明かすことに加え,地球から火星へ往復する技術を開発することが期待されています。 もと記事リンク
- 【JAXAの情報誌「宇宙(そら)のとびら」 全巻無料公開中!】 2023年3月1日JAXAが発行している情報誌「宇宙(そら)のとびら」のバックナンバーがHPで無料公開されています。2007年夏の創刊号から最新号まで,全55号がPDFで読み放題! 宇宙に関わる仕事をしている方へのインタビュー,宇宙探査の解説,実験や工作など,毎号さまざまな記事が掲載されています。 最新の第55号でおすすめなのは,特集「宇宙トイレの歩み」。なくてはならない設備だけれど,テレビなどではなかなか見ることがない宇宙船の「トイレ」に迫ります。 もと記事リンク
- 【火星で「地球では生物にしか作れない」炭素の比率が見つかる】 2023年3月1日NASAの火星探査機「キュリオシティ(Curiosity)」が,地球上ならば生命の証拠とみなされる炭素を含む岩石を発見した,という研究結果が発表されました。 炭素には原子核に含まれる中性子の数が異なる同位体が何種類かあり,地球上の生物は中性子の数が少ない(軽い)炭素を選択的に使うため,生物が関わった物質では軽い炭素の比率が高くなります。今回火星で採取された岩石には,軽い炭素が火星の大気や隕石よりもずっと大きな比率で含まれていました。地球上であれば生物の関わりを示唆する結果ですが,この研究を発表した研究者のクリストファー氏はその点には慎重です。もしかすると地球とは全く異なる自然現象の結果かもしれず,今後のさらなる研究が期待されています。 もと記事リンク 論文