※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.176>
2|恒星と銀河
1 太陽のすがた
太陽は,惑星よりもはるかに大きく,自ら光を放出する天体である。このように,自ら光を放出する天体を【恒星】という。太陽は巨大な気体(主に水素とヘリウム)のかたまりで,表面温度は約6000℃,中心部の温度は約1600万℃である(図18)。
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皆既日食(→p.207)のときや特殊な望遠鏡で太陽を観測すると,【プロミネンス】(紅炎)や【コロナ】(図19)を見ることができる。プロミネンスは,約1万℃の濃いガスで,太陽表面から噴き出した炎のような形で出現する。コロナは太陽を取りまくガスの層で淡くかがやいて見え,宇宙空間に広がっている。コロナの温度は100万℃以上である。
太陽の表面に見える黒い斑点を【黒点】という❶(図20, 21)。日がたつにつれ黒点が動いて見えるのは,太陽が自ら回転しているためである。太陽に限らず,すべての惑星は内部の仮想の軸を中心に回転している。この運動を【自転】といい,自転の軸を自転軸という。太陽が1回自転するのにかかる時間(自転周期)は赤道付近で約25日である。
太陽は,大量の光や熱などのエネルギーを宇宙空間へ放射しており,地球にとどくのはそのほんの一部(約20億分の1)にすぎない。しかし,そのエネルギーによって地表の平均温度は適度に保たれ,地球の大気や水の循環が起こり,天気が変化する。また,太陽からの光エネルギーで植物は光合成を行っており,これが地球上の生命活動を支えている。このように,太陽は,地球上で起こる自然現象や,生命活動の重要なエネルギー源となっている。
図22 太陽の影響
❶ 黒点が多く見られるときは太陽の活動が活発になっている。このようなときは,人工衛星の故障や電波障害が起こったり,オーロラが観測されたりしやすくなる。
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2 銀河
宇宙には,太陽以外にも多くの恒星があり,夜空にかがやくほとんどの星は恒星である❶。私たちから同じ方向に見える恒星でも,実際にはそれぞれちがう距離にある。恒星までの距離を表すときは,光年という単位を使い,光が1年間に進む距離(約9兆4600億km)が1光年である。
図24 銀河の例
銀河は宇宙全体の中にわかっているだけでも約2兆個あると推定され,実際はこれよりはるかに多いと考えられている。
❶ 太陽の光が最も遠い惑星の海王星に達するのに約4.2時間かかる。太陽系に最も近い恒星のプロキシマケンタウリに達するのには約4.2年かかる。
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恒星は宇宙に一様に広がっているのではなく,集団をつくっている。このような,恒星や星雲(ちりやガスの集まり)からできた集団の1つひとつを【銀河】という。宇宙には,このような銀河が数えきれないほどある。このような銀河のうち,私たちの太陽系をふくむ恒星や星雲の集団を【天の川銀河(銀河系)】という。
図25 天の川銀河の星団や星雲の例
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発展 どこまでが太陽系?
太陽系外縁天体の多くは,惑星と同じような軌道面をもっている。その広がりを「エッジワース・カイパーべルト」とよんでいる。この領域に属する天体は,冥王星,カロン,エリスなどのように名前のついている天体で,その半径が1000kmを超える場合もある。
これらの天体のさらに外には,「オールトの雲」とよばれる領域があって,そこにはすい星のもとになる天体があり,すい星はそこから太陽めがけて落ちてきて地球に近づくと考えられている。オールトの雲がなぜあるのかは諸説あるが,太陽系ができたときに中心に集まりきれなかった天体の名残であるといわれている。
エッジワース・カイパーベルトとオールトの雲は図のようにつながっていると考えられている。つまり,オールトの雲が太陽系の縁ということができる。
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発展 宇宙はいつはじまった?
1929 年,天文学者ハッブル(アメリカ,1889 〜1953 年)は,数多くの銀河を観測して,遠くにある銀河ほど速いスピードで遠ざかっていることを発見した。こうした観測をもとに,ガモフら( アメリカ,1904 〜1968 年) は,1948 年に,宇宙は最初に超高温で高密度の状態であり,そこから爆発的に膨張がはじまったという考えを発表した。これが「ビッグバン」とよばれる現象である。
この考えによると,ビッグバンがはじまって最初の約3 分間で,水素やヘリウムの原子核ができた。さらに,ビッグバンから約38 万年後には,これらの原子核が,まだ自由に動いていた電子をとらえて,原子となったといわれる。さらに時間がたつと,原子が集まって恒星や銀河ができていった。
ビッグバンが起こったのはいつごろなのだろうか。天体どうしの距離を表す光年は,同時に時間も表している。たとえば,距離1000万光年の天体を地球から観測したとき,その天体の1000万年前のすがたを見ていることになる。
現在では,130億光年以上離れた銀河が見つかっている。したがって,宇宙が誕生したのは130億年よりも前ということになり,ビッグバンが起こったのは約138億年前だと考えられている。
宇宙は今も激しく活動していて,どこかで物質が集まって恒星や惑星になったり,これらがこわれて物質が散らばったりしている。また,ある原子から異なる種類の原子ができることもある。私たちのからだをつくる物質もその一部なのである。
ニュース
※科学ニュースの更新は2025年4月を目処にはじまります。
- 【観測史上最古,124億年前の宇宙に渦巻き構造を持つ銀河を発見】 2023年3月1日私たちが住む地球がある天の川銀河は,渦巻き状の構造をした「渦巻銀河」です。現代の宇宙において,渦巻銀河は銀河全体の7割ほどを占める,ごくありふれた形です。しかし古い時代にさかのぼるにつれ,渦巻銀河の割合は減少します。 今回発見された渦巻銀河BRI1335-0417は,124億年前に存在していた銀河であり,観測史上最古の渦巻銀河です。宇宙誕生から14億年という古い時代の渦巻銀河の発見により,銀河の渦巻き構造がいつ,どのようにできたのかという謎の解明につながることが期待されています。 もと記事リンク 論文
- 【ブラックホールの新画像,多波長観測で謎に迫る】 2023年3月1日2019年,地球から5500万光年にある巨大銀河M87を撮影した映像が発表され,大きな反響を呼びました。そのデータをより詳細にまとめた研究結果がこのたび発表されました。 19の電波望遠鏡による膨大なデータを反映した画像により,ブラックホールの周囲で磁場や粒子や重力や放射線がどのように相互作用しているかが詳細に検討できるようになりました。 この画像から,一般相対性理論を検証したり,太陽系に飛び込んでくる高エネルギーの宇宙線の起源の謎が解き明かされたりといったことが期待されています。 もと記事リンク 論文
- 【最新の宇宙望遠鏡の撮影した宇宙の映像が公開される! ハッブルと比べると?】 2023年3月1日地球上の望遠鏡で遠い宇宙を見ようとすると,どうしても大気などの影響を受けます。ハッブル宇宙望遠鏡は,宇宙からの観測を行えるという点で画期的でしたが,すでに打ち上げから30年以上経っています。そこで,ハッブルの後継機として,新型のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が2021年に打ち上げられ,観測を開始していました。 そして7月12日,ウェッブ宇宙望遠鏡が観測した画像がついに公開されました。ハッブルの観測画像と比べてみると,より明るく,圧倒的な高精細画像で宇宙の姿が写し出されているのが分かります。画像や観測データからは,宇宙で最も遠い天体が撮影できた可能性など新発見も相次いでおり,今後どのような謎が解明されるか,期待がふくらみます。 もと記事リンク
- 【1時間に約3回の電波放射を繰り返す「未知の天体」が見つかる】 2023年3月1日天の川銀河の中で,強い電波放射を繰り返す未知の天体が見つかりました。この天体は30~60秒間という長い時間継続する電波放射を18.18分周期(1時間あたり約3回)で繰り返していて,その周期はパルサー(ミリ秒~数秒周期で瞬間的な電波放射を繰り返す)などのこれまでに知られている天体とは全く異なっています。天体の正体はまだ分かっていませんが,これまで理論上でのみ存在が予測されていた「超長周期マグネター(ultra-long period magnetar)」ではないかと考えられています。 もと記事リンク 論文
- 【日本の研究者が40年前に提唱 超新星爆発の理論を確認】 2023年3月1日巨大な星の最期に起こる超新星爆発という現象には,まだまだ謎が多く残っています。 今から40年ほど前,超新星爆発のひとつの形として,星の中心部で電子が失われる現象が起きて星の爆発が引き起こされる「電子捕獲型」という理論が提唱されましたが,それを裏付ける観測は長い間なされませんでした。 しかし,2018年に観測された超新星爆発についてエネルギーや放出された元素の種類を詳しく分析したところ,この理論を裏付ける観測結果であったことが,このたび発表されました。 もと記事リンク 論文