※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.238>
SDGsを意識して脱炭素社会へ 各地からのレポート(海)
日本は海に囲まれた島国です。私たちは,大昔から,海からさまざまな恵みを受けて生活してきました。だからこそ,それを持続可能な状態に保つ責任があります。
伝統的な鵜飼が行われることで有名なのが,岐阜県の長なが良ら 川がわです。アユは,川底の石に付着している微生物を食べて育ちます。長良川流域に暮らす人は,豊かな生態系を保つ努力を続けています。
神奈川県では,サザエやアワビの食物である海藻を食べてしまうために,害があるとして駆除されたムラサキウニを,食用として養殖する取り組みがはじまりました。ウニにキャベツを食べさせたところ,味がよくなり,食用部分が大きくなりました。三浦半島はキャベツの生産が盛んで,廃棄処分を減らせる長所もあります。
福岡市は,漁業協同組合・NPO法人・大学教授・高校生などにより,海の環境保全のためアマモの生育場所づくりを進めています。アマモは水質を改善し,魚のすみかにもなる海草です。多様な生物を育み,漁業資源を増やすために取り組んでいます。
※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.239>
SDGsを意識して脱炭素社会へ 各地からのレポート(海)
青森県ではホタテガイの養殖が盛んです。2010年,陸奥湾の海水が非常に高温となり,ホタテガイが3分の1程度の生産量になってしまいました。このような状況から水産業を守ろうと,現在は気候変動観測衛星「しきさい」からのリアルタイムデータを活用して養殖を行っています。
愛媛県にあるダイビング研修を行う企業では,2008年より海底清掃活動をスタートしました。海底には,冷蔵庫,業務用エアコンや車のタイヤなど,不法投棄された粗大ゴミが積み重なっていました。賛同してくれた仲間や企業と1トンにものぼるゴミを回収し,今はダイビングを楽しむ人にも「潜るたびに1つの海洋ゴミの回収」をよびかけています。
沖縄では,強い雨により開発現場や農地から赤土が流出し,サンゴ礁などの生態系を変えたり,水産業・観光産業に悪影響をおよぼしたりする問題があります。対策として,畑の傾きを調整したり,周囲にほかの植物を植えたりする方法などがとられています。
※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.240>
基本操作 記録テープから運動を調べる方法
p.27「探究4」から,記録テープの打点の間隔は,記録テープを引く手の動きが速いときほど長くなることがわかる。運動の変化をくわしく調べる場合,次のように記録テープを処理する。
記録テープの間隔は,東日本と西日本で異なります。これは交流の周波数を利用しているためです。
① 0.1秒ごと(5打点または6打点ごと)に記録テープを切り分け,最初の打点の方から順に方眼紙にならべてはりつけていく。
このとき,1つ1つの記録テープの長さは0.1秒間に手が運動した距離を表す。すると,切り分けた記録テープが長いほど速さが大きいことを示す簡単なグラフになる。
ポイント 打点が重なり合う部分は捨て,打点を区別できる点から使う。
記録テープが長いほど速さが大きいことを示すので,速さの変化がわかります。
② はりつけた0.1秒ごとの記録テープの長さを方眼紙の目盛りから読み取り,それぞれの速さを計算する。
〔計算例〕区間アの場合の速さ
1.2cm÷0.1s =12cm/s
計算結果をもとに,横軸に時間,縦軸に 速さをとったグラフを作成することも できます。
※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.241>
基本操作 台車と記録タイマーの使い方
① 記録テープを適当な長さに切って記録タイマーに通し,運動させる物体に取りつける。
② 記録タイマーのスイッチを入れて記録テープに点を打たせながら,物体を運動させる。
※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.241>
基本操作 天体望遠鏡の使い方
① 昼間,遠方の景色をのぞいて,ファインダーと天体望遠鏡の方向を合わせておく。
② 赤道儀の極軸を北極星の方向に向ける。極軸望遠鏡がついている場合は,その視野の決められた位置に北極星が見えるように赤道儀の向きを調整する。極軸望遠鏡がついていない場合は,まず極軸とファインダーや鏡筒が平行になるようにしてから赤道儀全体の向きを調整してファインダーの中央に北極星が見えるようにする(下図)。
③ ファインダーで観測する天体を探し,低い倍率で視野の中央に入れ,天体望遠鏡の接眼レンズをのぞいてピントを合わせる。次に,高い倍率に変えていく。
天体望遠鏡の倍率の変え方
① 望遠鏡の倍率は,次の式で決まります。
$$ 倍率 = \frac{対物レンズの焦点距離}{接眼レンズの焦点距離} $$
② 対物レンズは交換できないので,接眼レンズを交換して倍率を変えます。
③ 観察する天体を視野に入れるときは,焦点距離の長い接眼レンズを選ぶと倍率が低くなり,視野が広くなり,天体を見つけやすくなります。
※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.242>
資料 水没したらドアは開かない
●水深1mでの水圧は?
水1cm³が1gなので,底面積1cm²で高さ1m(100cm)の水の柱を考えると,その質量は100gになり,重さは約1Nです(図a)。よって水深1mでは1cm²あたり1N(つまり1N/cm²)❶の水圧が生じています。
これをもとに具体的な例を考えます。水深1mのプールの底に,10cm四方の排水口のふたがあるとします。このふたを開けることができる力の大きさを,次の式をもとに計算してみましょう。
圧力による力の大きさ 力=圧力×面積
1cm²あたり1Nの水圧なので,10cm×10cmの面積にかかる力は,
1N/cm² × 100cm × 100cm = 100N
100Nは約10kgの物体の重さです。10cm四方の小さなふたを開けるには,10kgの物体を持ち上げる力が必要です。
●水没した自動車のドアは開かない
水深1 mに水没してしまった自動車のドアにかかる力の大きさを考えてみましょう。簡単にするため,ドアの中心の水深が1mであったとします。
ドアの面積が100cm×100cmであったとき,1cm²あたり1 Nの水圧なので,100cm×100cmの面積にかかる力は次のように計算できます。
1N/cm² × 100cm × 100cm = 10000N/cm²
10000Nは1000kg(1トン)の物体の重さです。これを人の力で開けることはできません。実際には,水深が1mに満たなくてもドアが開かなくなる事故が起こっています。このようなときは窓から脱出します。
❶ 圧力の標準の単位はPaだが,ここでは計算のしやすさのために,水圧をN/cm²の単位で考えることにしている。
※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.242>
資料 浮いて待て
誤って水に落ちて沖まで流されたとき,むやみに泳ごうとしてはいけません。浮いたまま救助を待つ方が助かる可能性が高いことがわかっています。では,長時間浮いているにはどうすればよいでしょうか。
人の体が水中にある体積が大きいほど,浮力が大きくなります。そのため,手を水面上にあげて助けをよぼうとしたときに,手の分の浮力が減って,顔まで沈んでしまう可能性があります。また,大声を出すと肺の中の空気が出て胸の体積が減るため浮力が減少します。
最も体力を失わずに水に浮いていられるのは,図のように,横になって体の大部分を水中に沈めた状態でいることです。鼻や口が自然と水面上に出ます。空気を入れたペットボトルなど浮くものを抱きかかえるともっと楽になります。
※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.243>
資料 力は分力の角度で強くなる
● 斜張橋──橋の重さをワイヤーで支える
図の斜張橋では,両側のワイヤーの力A,Bの合力が橋の重さを支えています。柱が高い⒜の方が,柱が低い⒝よりも,ワイヤーにかかる力を小さくすることができます。ただし,実際の設計では,材料費を少なくするなどの点も考慮して柱の高さが決められます。
● 刃で切り分ける
刃は,力がはたらく面積を小さくして圧力を高めるだけでなく,分力も応用しています。たとえば包丁で野菜などを切るとき,包丁が下向きに押す力が小さくても,野菜を左右に押し分ける力は大きくなります。
●ロープを力強くしめる
トラックに積んだ荷物にロープをかけて固定するとき,ピンと張ったロープを横に引いてパンッパンッとはじくことがあります。このとき,図⒜のように,ピンと張ったロープを横に引くと,引いたところを作用点としてロープに沿った方向の大きな分力が生じ,ロープをさらに引きしめる力となるからです。ロープが引きしめられたら,ロープと荷物のすき間がもとにもどるまでの一瞬に,特殊な結び目を通してロープを引き寄せて,ロープがゆるまないようにします。
このようなロープのはたらかせ方を利用すると,図⒝のように,人の手で自動車を引き寄せることもできます。
※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.244>
資料 気づきにくい作用・反作用
作用・反作用は,「2つの物体」の間ではたらき合い,向きが反対で同じ大きさの2つの力です。どのような場合も生じるので「法則」とよばれますが,気づきにくいこともあります。
① 物体にはたらく重力の反作用
重力の場合,「2つの物体」とは地球と物体です。地球が物体を引く重力を作用とすると,その反作用は物体が地球を引く力です。1kgの物体にはたらく重力は約10Nですから,その反作用である物体が地球を引く力の大きさも10Nです。地球はとても質量が大きいので,10Nの力がはたらいてもほとんど動きません。そのため,物体にはたらく重力の反作用があることに気づきにくいのです。
② 物体にはたらく浮力の反作用
水の入った水そうを台ばかりの上に置き,ばねばかりにつるした物体を水の中へ入れます。このとき,物体が10Nの浮力を受け,ばねばかりの示す値が10N小さくなったとしましょう。
このとき,台ばかりの示す値は,ちょうど物体が受けた浮力と同じ10Nだけ大きくなります。これは,物体が受けた上向きの10Nの浮力を作用とすると,物体から水へ下向きに10Nの反作用が生じ,その力が台ばかりへ伝わったためです。
※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.244>
資料 だんだん速くなる運動を体験する
一定の力がはたらく物体がどのように運動するか確かめるには,右のような実験もあります。台車に一定の力がかかっていることは,ゴムひもの伸びでわかりますね。
台車を一定の力で引いてみたら,台車がどんどん速くなって追いつけなくなりました。
つまり物体に一定の力がはたらき続けるだけで,物体はだんだん速くなります。
※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.245>
資料 重いものは速く落ちるか?
●ガリレイの自由落下の実験
重い物体と軽い物体を同じ高さから同時に落下させると,どちらが先に地面に着くでしょうか。16世紀末,イタリアの科学者ガリレイは,それまで信じられてきた「重い物体ほど速く落ちる」という考えを科学的な実験によってくつがえしました。
ガリレイは斜面で鉄と木の球を運動させる実験を行いましたが,後の時代,イタリアのピサの斜塔のてっぺんから球を落下させて同時に着地することを示した話としてよく語られるようになりました。物体は,質量にかかわらず同じように落下するのです(右図(a))。
●真空中で鉄球と羽毛を落下させる実験
私たちは,日常経験から,鉄球よりもはるかに軽い羽毛が,ゆっくり落下することを知っています(右図(b))。といっても,ガリレイがまちがっていたわけではありません。ガリレイが明らかにしたことは,空気の抵抗力など重力以外の力がない場合(あるいは無視できるほど小さい場合)になりたちます。
右図(c)のように,真空に近づけた容器の中で実験を行うと,羽毛も鉄球も同じように落下することが確かめられます。
羽毛を落下させた場合は,受ける空気の抵抗力が鉄球に比べて非常に大きいため,ちがいが生じたのです。(羽毛は空気中で等速直線運動をしますが,その理由はp.246の資料「ここにも等速直線運動」を参照)
発展
重い物体ほど大きな重力を受けるので,速さの増し方は大きくなりそうだが,そうならないのはなぜだろうか。17世紀末にその理由を明らかにしたのは,ニュートン(イギリス)であり,次の式の中に示されている。
$$ 単位時間あたりの速さの変化 = \frac{力の大きさ}{質量} $$
この式が示す運動の法則の一つは,物体が受ける力が大きいほど速さが変化しやすい(→p.33)ことである。またそれだけでなく,「質量が大きいほど速さが変化しにくい」ことも示している。つまり,質量の大きい物体は,静止し続けようとする性質(慣性→p.37)が大きい。
重力による運動では,右辺の「力の大きさ」は重さであり質量に比例した大きさだが,右辺の分母が質量なので,右辺は一定の値になる。つまり,落下運動の場合,単位時間あたりの速さの変化は,質量にかかわらず一定である。地球上の自由落下の運動は,質量にかかわらず,1秒あたり9.8m/sずつ速くなり,この大きさは「重力加速度」とよばれている。
※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.246>
発展 ここにも等速直線運動 ─雨粒 ,スカイダイビング─
雨粒が空から落ちてくるとき,重力を受け続けて速さがどんどん増し,地上に落ちてきたときにはとんでもない速さになってしまわないでしょうか?
上空1000 mから落下した半径1 mmの雨粒の速さは,もし空気の抵抗力がなければ,エアライフルの弾丸並みの秒速140 mという速さになります。しかし,実際には,雨粒が速くなるほど受ける空気の抵抗力が大きくなり,秒速6〜7 mになったとき重力と空気の抵抗力による力がつり合います。力がつり合うと,慣性の法則により等速直線運動をするので,雨粒は秒速6〜7 m(時速21〜25km)のままで地上に落ちてきます。ただし,雨粒の大きさによってこの値は変わります。
航空機から人が飛び降りるスカイダイビングではどうでしょうか。人にはたらく重力と空気の抵抗力による力がつり合うので,やはり,途中から等速直線運動をします。ただし雨粒に比べるとかなり速く,およそ秒速50〜56m(時速200km程度)です。パラシュートを開くと空気の抵抗力が増し,秒速5〜6 m(雨粒の速さ程度)に減速したときに再び力がつり合って等速直線運動に変わります。この程度の速さで地上に降り立てば,安全であるといわれています。
※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.246>
資料 慣性を利用して,海王星よりはるか遠くへ
1977年に打ち上げられたアメリカの探査機ボイジャー1号は,初めて木星や土星に接近して詳細な写真を撮影し,惑星や衛星の環境について新たな発見を重ねて任務を終えました。
現在,ボイジャー1号に飛行のための燃料は残ってはいませんが,今この瞬間も太陽系の外に向かって飛び続けています。それは,大気のない宇宙空間では摩擦がないため,慣性によって,運動を続けることができるからです。
2022年9月5日現在,ボイジャー1号は地球から235億4921万km以上(157天文単位❶以上)離れたところにいます。 地球からは光が到達するのに約21時間49分かかる距離です。この距離は光年に換算すると約0.00249光年に相当します。
❶ 1天文単位=地球と太陽の間の平均距離をもとにした単位で,約1496億mである。
※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.247>
資料 クレーンは動滑車がポイント
クレーンは,図のように,動滑車と定滑車がたくさん組み合わされています。これによって,多数のワイヤーで荷物を支えることになり,実際の荷物の重さよりずっと小さな力で荷物を引き上げることができます。下図の場合,6本のワイヤーで支えているので,6分の1の力でものを持ち上げられます。
※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.247>
資料 てこと輪軸は同じしくみ
てこを使うと,小さい力で大きい力をおよぼすことができます。これは,てこを下図のようにして使うとき,次の関係がなりたつからです。
力点にかける力の大きさ × 力点と支点の距離 = 作用点に生じる力の大きさ × 作用点と支点の距離
たとえば,力点と支点の距離:作用点と支点の距離=4:1であれば,力点にかける力:作用点に生じる力=1:4になり,4分の1の力でものを動かすことができます。また,力が4分の1になったかわりに,動かす距離が4倍になるため,ものを持ち上げるときの仕事の原理はなりたっています。
輪軸は,大小の輪が組み合わさった道具です。大きい輪に力を加えて回すと,小さい輪に大きな力が生じます。このはたらきによって,ドアノブ,ドライバー,車のハンドルなどは,中心の軸を力強く回すときに,手で加える力を小さくてすむようにしています。
下図のように,輪軸の場合も,力点,支点,作用点を考えると,てこの場合とまったく同じ原理がはたらいています。また,滑車やてこと同じように,ものを持ち上げるときの仕事の原理はなりたっています。
※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.248>
資料 エネルギー変換効率は求められる
① 水を入れて370g(約3.7N)にしたペットボトルを1mの高さに持ち上げる仕事を求める。
仕事=力の大きさ × 力の向きに動かした距離
② 右の実験装置を組み立て,手回し発電機でペットボトルを一定の速さでゆっくり1m持ち上げるのに必要な電力量を求める。
電力量=電圧 × 電流 × 持ち上げるのにかかった時間
③ 右の実験装置で,ペットボトルを1m の高さから落として発電したときの電力量を求める。
電力量=電圧 × 電流 × 落ちるのにかかった時間
④ 右の実験装置で,㋐手回し発電機の代わりに電源装置をつなぎ,電圧をかけてペットボトルを一定の速さでゆっくり1m持ち上げたときの電力量を求める。
電力量=電圧 × 電流 × 持ち上げるのにかかった時間
p.60図31を参考に,手順②,③,④で,どのようなエネルギーの変換が起こったか,またどこの段階で,どの種類のエネルギーが発生したか考えてみましょう。
考察として,下図のように考えました。手順②では,3.70Jの位置エネルギーをつくり出すのに,約3倍の電気エネルギーが必要です。
エネルギーの変換と保存の考え方
実験の考察の例です。
❶ この教科書では,もとのエネルギーが別なエネルギーに完全に変換された場合を100%として計算している。
※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.249>
資料 次世代の電池はエネルギー密度がちがう
スマートフォンやノートパソコンなどの持ち歩く電気製品の多くは,充電により電気エネルギーを電池(二次電池→p.158)にたくわえて利用しています。使われているのは,主に「リチウムイオン電池」というもので,他の電池に比べ,同じ体積にたくわえるエネルギーの量(エネルギーの密度)を大きくすることができ,充放電をくり返しても劣化しにくいなど数多くの長所があります。
近年,普及が進められている電気自動車では,エネルギーの密度をより大きくできる電池が求められていて,一般にリチウムイオン電池が使われています。ただし,リチウムイオン電池に使われる液体は可燃性で,高温になったり事故で破損したりすると発火するおそれがあり,エネルギーの密度を大きくするほど,その危険が増してしまいます。
そこで開発が進められているのが「全固体電池」です。リチウムイオン電池の一種ですが,可燃性の電解質の水溶液を使用せず,イオンが移動できる特殊な固体を使っています。全固体電池は,高温・破損による発火の心配がなく,大きなエネルギーの密度で安全にエネルギーをたくわえることができます。また,充電をすばやく行うことができる長所もあり,電気自動車だけでなくさまざまな電気製品への使用が見こまれています。
※このウェブページは中学校理科3年の学習内容です。<3年p.249>
資料 冷たいものの近くでヒヤッとするわけ
冷えこんだ屋外が見える窓の近くに立ったとき,からだが冷えこむ感じがすることがあります。この感じは,必ずしも肌にふれる空気の温度が低くなくても起こります。これには放射(p.61)が関係しています。
放射によって温度が下がる「放射冷却」について説明しましょう。どのような物体も,温度に応じて放射が起こり,外部に熱を出しています。熱を出した物体は熱エネルギーを失って温度が下がります。右図⒜のように,物体から外部に出る熱の量と,内部に入る熱の量が等しいときは,物体のもつ熱エネルギーの増減はなく,温度は変わりません。ところが,⒞のように,入る熱よりも出る熱が多いときは,温度が下がっていくのです。「窓の近くに立ったとき」の例では,冷えこんだ屋外から入る熱は,人の体から出る熱よりも少ないので,窓に面したからだが,熱エネルギーを失って冷えるのです。