※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.67>
2|溶解度と再結晶
1 飽和
水に塩化ナトリウムを入れると,塩化ナトリウム水溶液ができる。しかし,塩化ナトリウムが多くなると,いくらかき混ぜても溶けきれずに,容器の底に残るようになる(図6)。溶質がそれ以上水に溶けきれなくなったときを飽和したといい,その水溶液を【飽和水溶液】という。
2 溶解度
一定の量の水に溶ける物質の質量は,物質によって決まっている。水100gに物質を溶かして飽和水溶液にしたとき,溶けた物質の質量を【溶解度】という。一般に,固体の物質の溶解度は,温度が高くなると大きくなるが,その度合いは物質によって異なっている。
一般に,溶質が水に溶ける量には限界があります。
溶解度のちがいを「いす取りゲームのモデル」で考えてみましょう。
ミョウバンは,水温が高いほどたくさん溶けますね。これは,温度が上がるほど「いす」が増えると考えればいいんですね。
食塩のように,水温を上げてもあまり溶ける量が変わらない場合は,「いす」の数が変化しないと考えるんですね。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.68>
ある物質について,温度ごとの溶解度を線でつなぐと図8のような溶解度のグラフ【溶解度曲線】ができる。水に溶かす物質の質量が溶解度を超えた場合,その物質は溶けきれずに残る。
一般的には,水温が上がるほど,溶ける質量は増えていくんですね。
そうです。ただ,物質によって溶解度曲線は 大きく異なります。p.240の例題で,溶解度の考えに慣れておきましょう。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.69>
塩化ナトリウムと硝酸カリウムでは,溶解度曲線が大きく異なることがわかる。溶解度曲線のちがいをもとに,水溶液から溶質を取り出す方法について,どのように科学的に探究できるだろうか。
探究3 溶質を取り出す
塩化ナトリウムや硝酸カリウムの水溶液から溶質を取り出すには,どのようにしたらよいでしょうか。図10のグラフを見て話し合ってみましょう。
2つの物質を比べると,溶解度曲線がずいぶんちがうね。
グラフの傾きから,どんな仮説が立てられるだろう。
水溶液から溶質を固体として取り出すには,どのようにすればよいか。
溶解度のグラフから考えると,温度を変化させたときに溶け残る量が計算できそうだね。
食塩(塩化ナトリウム)は温度を変化させても,溶質があまり出てこないと思う。
たとえば食塩水なら,水をかわかすと,溶けていた食塩が固体として出てくるよね。
水溶液を氷で冷やせば,溶けている物質が 出てくると思う。
あたためるなら加熱器具が必要だね。温度計も。
溶けていた溶質が出たときに,観察するためのルーペもあったほうがいいね。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.70>
準備
塩化ナトリウム,硝酸カリウム,試験管(4),試験管立て,ビーカー(2),メスシリンダー,電子てんびん,こまごめピペット,加熱器具,温度計,スタンド,スライドガラス(2),ガラス棒,ルーペ,薬さじ,薬包紙,保護めがね,ホットプレートやドライヤー
1.物質を溶かす
試験管ア,イに水を5cm³(5g)ずつ取り,塩化ナトリウム,硝酸カリウムをそれぞれ3g入れる。よくふり混ぜ,全部溶けるか調べる。
2.加熱して溶かす
試験管を加熱し,水の温度を50℃まで上げて,溶ける量が増えるか調べる。
注意!! 加熱した器具は熱くなっているので,やけどに注意する。
3.冷やす
2.の試験管ア,イの水溶液を,新しい試験管に移す。新しい試験管を水で冷やし,水溶液のようすを観察する。
ポイント
2.で溶け残りがあった場合,新しい試験管に上ずみ液を移す。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.215>
基本操作 こまごめピペットの使い方
注意!! ピペットの先はガラスがうすく,大変割れやすいので注意する。
注意!! ピペットの先を上に向けない。液体がゴム球に流れこむと,ゴムがいたんでしまう。
注意!! ピペットの先が容器や液面にふれないようにする。
ポイント
ゴム球を軽く押すと,1滴ずつ落とせる。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.71>
4.水を蒸発させて観察する
それぞれの水溶液を1滴ずつスライドガラスに取り,乾燥させて現れた固体をルーペで観察する。
ポイント
- 溶質が飽和したときは,手順1〜4のいつか。
- 物質を溶かした水溶液を冷やすと,どのような変化があったか。
- 水を蒸発させて取り出した固体はどんな形をしていたか。
ポイント
- 水溶液から溶質を取り出す方法を溶解度曲線をもとに説明する。
- 水溶液から現れた物質の形を比べることで,物質を区別することができるか。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.209>
基本操作 双眼実体顕微鏡の使い方
双眼実体顕微鏡は倍率が20〜40倍で,ルーペで見るには小さすぎる試料の観察に適している。また,2つの接眼レンズと対物レンズをもつので,両目で立体的に観察できる。
注意!! 持ち運ぶときは両手でしっかりと持つ。
ポイント
ステージは取り外しができ,片面は黒く,もう一方の面が白い。試料が見やすい面を使う。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.72>
探究3 結果から考察する
- 塩化ナトリウムは,温めても冷やしても,溶ける量は変わらないようだった。
- 硝酸カリウムを入れた試験管を温めると,硝酸カリウムはすべて溶けた。
- 硝酸カリウム水溶液は,冷やすと針状の物質が現れた。
- 水を蒸発させて出てきた物質の形は,塩化ナトリウムと硝酸カリウムで異なっていた。
- 温度による溶解度曲線の変化が小さい物質の場合,水溶液から水を蒸発させると溶質を取り出すことができる。
- 温度による溶解度の変化が大きい物質の場合,水溶液を冷やすことでも溶質を取り出すことができる。
- 水溶液から現れた物質の形は,物質の種類によってちがう。
※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.73>
3 結晶
温めた水溶液を冷やしたり,水を蒸発させたりすると,それぞれの水溶液で特徴的な形の固体が出てくる(図12)。このようにして得られたそれぞれの固体は,いくつかの平面で囲まれた規則正しい形をしている。この固体を【結晶】という。結晶は純粋な物質であり,結晶の形や色は物質によって決まっているので,物質が何であるかを知る手がかりになる。
4 再結晶
固体の物質を水などの溶媒にいったん溶かし,冷やしたり溶媒を蒸発させたりして,再びその物質を結晶として取り出すことを【再結晶】という。再結晶を利用すると,混合物からより純粋な物質を得ることができる。
硝酸カリウム水溶液を立方体のモデルで考えます。図中の●は,溶けている硝酸カリウムです。グラフと関連させて,温度によって結晶が出たり,溶ける量が増えたりすることを理解しましょう。
ニュース
※科学ニュースの更新は2025年4月を目処にはじまります。
- 【メントスコーラ,あたためるとどうなる?】 2023年3月1日一般的に,固体を水に溶かすときその溶ける量(溶解度)は温度が上がるほど大きくなり,気体は温度が上がるほど水への溶解度が小さくなります。では,それをふまえて「メントスコーラ」について考えてみましょう。 「メントスコーラ」とは,コンビニやスーパーでおなじみの「メントス」というソフトキャンディをコーラに投入するとコーラが勢いよく噴き出す,科学ショーなどでも人気の実験です。 実際にコーラをあたためてメントスを投入した動画では,あたためていないコーラと比べ,噴きだす勢いが違います! 溶解度の理解促進にもつながる実験ですが,もし学校で演示をしようとお考えの際は,実験動画を参照の上,後片付けの容易な場所の選定をおすすめします。 もと記事リンク