※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.208>
3|雨が降るしくみ
1 上昇気流
雲は,気体の水蒸気が液体の小さな水滴に変わることでできる。また,一般に雲は,ほぼ一定の高さから上方に向かって発生していることがわかる(図19,20)。
図21のような条件があると,上昇する空気の流れ(上昇気流)が起こる。上昇気流が起こると,地表の空気のかたまりが上空にまで上昇し,雲ができることが多い。
雲が一定の高さからできるということは,何か決まりがあるんだね。
雲ができはじめる高さは,気温や湿度により変わります。
上昇気流と雲のでき方に関係があるんだね。
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2 上空の大気
雲は水滴であり,もともとの空気にふくまれていた水蒸気が変化して,上空で水滴が発生したと予想できる。この過程をどのように科学的に探究できるだろうか。
探究5 実験室で雲をつくる
上昇気流で,空気のかたまりが上空に上がると,雲が生じます。これを再現する実験を考えましょう。
お菓子の袋を富士山の山頂にもっていくと,ぱんぱんにふくらみます。これは,中の空気が自然に膨張する(体積が大きくなる)ためです。
気圧と露点の変化から,雲ができるしくみをどのように説明できるか。
地上の空気が上昇気流で上空に上がると,やっぱり膨張するんだろうね。
つまり,空気のかたまりが膨張すると,水滴が現れるということかな。
上空の気温は地表よりずっと低いんだよね。それで空気が冷やされて露点に達するんじゃないかな?
膨張は関係ないと思う。
空気を冷やすと水滴が現れることはもう学習したよね。ここでは空気が膨張すると水滴が現れるかを確かめよう。
空気を容器につめて,むりやり広げれば膨張すると思う。容器に空気をつめて,いっきにふたをあければいいんじゃないかな。
空気のかたまりが広がると,ほかにも何か変わるんじゃない?露点が関係しそうだから,温度の変化も調べておこう。
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準備
丸底フラスコ,注射器,ゴム管,ガラス管,二穴ゴムせん,デジタル温度計,スタンド,線香,マッチ
1.フラスコに線香の煙を少し入れる
フラスコ内をぬらし,線香の煙を少し入れる。
雲の水滴は,空気中にあるちりを核としてできます。線香の煙はちりをつくるはたらきがあります。たとえば飛行機雲は,飛行機のエンジンの排気ガスに多くふくまれる水蒸気が凝結してできます。このとき,排気ガスにふくまれるちりが凝結するときの核の役割をはたします。
ポイント
フラスコ内をぬらすのは,湿度を増やして,水滴をできやすくするためである。
ポイント
フラスコ内に線香の煙を少し入れるのは,水蒸気を水滴にしやすくするためである。
2.装置を組み立てる
1のフラスコを用いて装置を組み立てる。
ポイント
わずかな温度の変化がわかりやすいデジタル温度計を使う。
ポイント
ゴムせんに温度計の端子とガラス管をしっかり差しこんで,空気がもれないようにする。
ポイント
ピストンを押しこんだ状態で実験をはじめる。
この実験のピストンを引く操作は,実際の空気の何の変化に対応するんだっけ?
大気を膨張させることを,フラスコ内の空気の膨張で再現しています。
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3.フラスコ内の空気を膨張させる
ピストンを引いたり押したりして,フラスコ内のようすの変化と温度の変化を調べる。
ポイント
ピストンを軽く引けるようなら,空気がもれている。ガラス管と温度計をさしている部分を確認して,すき間がないようにする。
注意!! ピストンはかなり力を入れて引く必要がある。手がすべらないように,ピストンをしっかり持つ。
ポイント
ピストンを押し引きしたときのようすを記録する。
ポイント
フラスコ内の空気のようすから,雲はどのようにして発生すると考えられるか。
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探究5 結果から考察する
- 空気のかたまりを膨張させると,空気の温度が下がる。
- 空気のかたまりを膨張させると,内部に水滴ができる。
上空に上がった空気のかたまりと同じように,フラスコの空気を膨張させると,水滴が生じた。実際に雲ができる状況をうまく再現できた。
上空の露点により,雲のできはじめる高さは変わってくるんだね。
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3 降水が起こるしくみ
空気には,急激に膨張させると温度が下がる性質がある❶。上昇気流により地表から空気のかたまりが上昇すると❷,上空の気圧が低いため,上空で膨張するとともに温度が下がる。やがて,気温が露点に達して空気のかたまりの中の水蒸気が水滴に変わる。これが雲である❸。
雲の粒は,水蒸気をさらに得て成長したり,たがいにくっついたりして大きくなっていく(図24②)。やがて,上昇気流によっても支えきれなくなり,落ちてきた粒が雨や雪である(図24③)。地上に降ってきた雨や雪などを降水という。
たとえばある夏の地表の気温が34℃,湿度80%とする(水蒸気量約30g/m³)。太陽の熱にあたためられた地表付近から上昇気流が発生し,空気のかたまりが急激に上昇する。すると空気のかたまりが膨張し,その温度が約30℃に低下すると,露点に達し雲ができはじめる(このときの高度約500m)。さらに空気が上昇して雲の粒は増える。すると,粒がぶつかり合って大きくなり,上昇気流で粒を支えきれなくなり夕立が降る。
図24 雲ができ雨が降るしくみ
4 水の循環
地表の海や川,湖などが太陽光によってあたためられると,水が少しずつ蒸発し,水蒸気となって大気中にふくまれていく。大気中の水蒸気は,やがて雨や雪となって地表にもどる。このように,太陽光の熱をエネルギー源として,水は地表と大気の間を大きく循環している(図25)。
❶ 逆に,急激に圧縮すると温度が上がる性質がある。
❷ 上昇気流で空気がのぼっていく速さは,一般に毎秒1~数m程度で,徒歩や自転車くらいの速さである。激しい場合は毎秒10m以上になることもある。
❸ 雲の粒である水滴や氷の粒の大きさは,直径0.1mmより小さい