※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.158>
1|コイルと磁界
1 発電
私たちが家庭のコンセントから利用する電流は,発電所にある発電機(図1)でつくられる。このような発電機は,大きなものはバスほどの大きさにもなるが,その原理は小学校で学んだ手回し発電機と同じで,手回し発電機の中にあるモーター(図2)と同じようにコイル❶と磁石でできている。
❶ 発電機の場合,コイルに鉄しんを入れた状態であり,コイルのはたらきが大きくなる(p.166図14)。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.159>
図3のように,モーターの要素を取り出し,磁石の間に電磁石を入れて電磁石を動かすと,乾電池をつながなくても電流計の針が動く。つまりモーターで電流を取り出せることがわかる。この章ではこのしくみについて学んでいこう。
一般に,電気エネルギーを回転させる運動に変えるときに使う機器をモーターといいます。モーターを電気ではなく他の力で回転させて,電流を取り出すときに使う機器を発電機といいます。
2 磁力と磁界
小学校では,コイルに鉄しんを入れて電流を流した電磁石が,磁石と同じはたらきをすることを学んだ(図5)。これは,電流が流れる導線に【磁力】が発生するからである。このように磁力のはたらく空間には【磁界】があるという。
ふりかえり
① 磁石は鉄でできた物体を引きつける。
② N極とN極,S極とS極ではたがいにしりぞけ合う力がはたらく。
③ N極とS極ではたがいに引き合う力がはたらく。
ふりかえり
① 電磁石は,電流の向きを変えると,N極とS極が入れかわる。
② 電流の大きさが同じとき,コイルの巻数が多いほど電磁石の磁力は強くなる。(小学校5年)
③ 力の種類の中の1つに,磁力がある。磁力は磁石のまわりに生じる力である。(中学校1年)
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.160>
磁界のようすは,棒磁石のまわりを鉄粉や磁針で調べるとわかる❶(図6)。磁界の中の各点で,磁針のN極が指す向きを【磁界の向き】という。
磁石のまわりの各点での磁界の向きをなめらかに結んでできるひとつながりの曲線を【磁力線】という。磁力線にはN極からS極に向かう向きに矢印をつける。磁力線の間隔がせまいところほど磁力が強くはたらき,このことを「磁界が強い」という。また,磁力線は,途中で分かれたり,ほかの磁力線と交わったりしない。
図7 棒磁石の極と磁界
1年生では,光を「光線」というモデルで表したね。今度は磁界の向きを「磁力線」というモデルで表すんだね。
❶ 鉄は磁界の中に置かれると磁力をもつようになる。図6に見られる鉄粉の模様は,磁力をもった鉄粉が,N極とS極でくっつき,たくさんつながり合ってならんだ状態である。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.161>
3 導線と磁界
電磁石から鉄しんをぬいて図8のようにすると,電流の流れるコイルのまわりに磁界が生じていることがわかる。では,コイルに流れる電流と磁界の関係について,どのように科学的に探究できるだろうか。
図8は,コイルの中心に透明な板を置き,板の上に鉄粉をまいています。
探究4 電流と磁界の関係
1本の導線に磁界ができるとしたら,その向きはどうなるのかな?
鉄しんがなくてもコイルに磁界ができるということは,電流が磁界をつくっているんじゃないかな。コイルは,1本の導線を巻いたもの。それなら,もとの 1 本の導線にも磁界はできそうだよね。
磁界と電流にはどのような関係があるか。
1本の導線でも,電流を流せば磁界はできると思う。ただ,磁界が弱くてわからないんじゃないかな。
導線に流れる電流の大きさが同じでも,導線に近づくほど,磁界は強くなるんじゃないかな。
コイルのまわりに磁針を置いたり,鉄粉をまいたりしてみよう。
磁界を強くするには,どうしたらいいだろう。
導線を何本も重ねれば,調べやすいかもしれない。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.162>
導線を巻くと,どうして磁界を調べやすくなるのかな?
最終的には1本の導線がどのような磁界をもつか調べたいのですが,1本の導線だとはたらきが弱いのです。導線を巻いてコイルにすると1本の導線が何重にもなるので,はたらきが強くなります。
準備
コイル(エナメル線を20〜30回四角に巻いて束にしたもの),鉄粉,小型容器,ガーゼ,輪ゴム,厚紙の箱,セロハンテープ,磁針,電源装置,抵抗器(電熱線),電流計,スイッチ,新聞紙,クリップつき導線,記録用紙
1.実験の装置をつくる
① 切りこみを入れた厚紙の箱にコイルを差しこみ,切りこみをセロハンテープでふさぐ。
② 鉄粉をまく容器を準備する。
2.磁針で磁界の向きを調べる
① 図のように回路を組み立てる。
② コイルのまわりに磁針を置き,電流を流す。
③ 磁針のN極が指す向きを記録用紙に記録する。
④ 電流の向きを変えて,磁界の向きを調べる。
注意!! コイルや抵抗器が発熱するので,こまめにスイッチを切りながら記録する。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.244>
基本操作 電源装置の使い方
① 電圧調整つまみを0に合わせておく。
② 電源スイッチが切れていることを確認し,プラグをコンセントに接続する。(直流・交流(→p.174)の切りかえスイッチがある場合は,スイッチが直流になっていることを確認する)
③ 端子の+,−をまちがえないように回路につなぐ。
④ 回路の配線を点検してからスイッチを入れ,電圧調整つまみを動かして必要な大きさの電圧にする。
⑤ 実験が終わったら,電圧調整つまみを0に合わせて,スイッチを切る。
⑥ プラグをコンセントからぬく。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.248>
基本操作 電流計の使い方
回路の電流や電圧をはかったとき,予想の値とずいぶんちがうなと思ったら,まずクリップのはさみかたを見直します。
クリップは端子にしっかりかんでいますか?
回路のスイッチを切った状態で,回路の電流の大きさを測定したい部分に,電流計をはさみこむようにつなぐ(このようなつなぎ方を「直列につなぐ」という)。
このとき,電流計の+端子を電源(電池)の+極側に,−端子を電源の−極側につなぐ。
ポイント
目盛りを正面から見て読み取る。
注意!! 電流計を電池だけに直接つないだり,豆電球の両端につないだりしない。大きな電流が流れてこわれてしまう。
注意!! 指針が反対向きにふれたら,すぐスイッチを切って,正しくつなぎ直す。正しくつながないと電流計がこわれてしまう。
注意!! 指針がふり切れたら,すぐスイッチを切って,正しくつなぎ直す。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.163>
3.鉄粉で磁界を調べる
① 厚紙の箱の上に鉄粉をまき,スイッチを入れてコイルのまわりに鉄粉の模様ができたら,すぐにスイッチを切る。
② 鉄粉の模様を記録用紙にスケッチする。
ポイント
鉄粉がこぼれてもよいように,箱の下に新聞紙などをしいておく。箱を指で軽くたたくと,鉄粉の模様がはっきりする。
注意!! コイルや抵抗器が発熱するので,鉄粉の模様ができたら,すぐにスイッチを切る。
ポイント
- 磁針の指す向きを記録用紙の○の中にかく。
- 電流の向きを変えると,磁針の指す向きはどのように変わったか。
- 鉄粉の模様を右のような記録用紙に線でかく。
AとBを流れる電流は逆向きになるね。
ポイント
- 電流が流れる導線のまわりの磁界は,磁針の向きでどのように表されるか。
- 電流の向きが逆になったときの磁界は,磁力線でどのように表されるか。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.164>
探究4 結果から考察する
- 鉄粉の模様は同心円状で,導線に近いところほどはっきりしている。
- 磁針のN極の指す向きは,導線Aのまわりでは時計回り,導線Bのまわりでは反時計回りになっている。
- 電流の向きを逆にすると,磁針のN極の指す向きは逆になる。
- 導線でコイルをつくると,図9(a)のような磁界が生じる。コイルを1本の導線の束だと考えると,1本の導線のまわりには,図9(b)の磁力線が示す向きの磁界が生じると考えられる。
- 磁針のふれから,電流の向きと磁界の向きには決まりがあると考えられる。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.165>
導線のまわりには,導線を中心にして同心円状の磁界ができ,導線に近いところほど磁界が強い。また,導線に流れる電流が大きいほど磁界は強くなる。導線のまわりにできる磁界の向きは,電流の向きによって決まり,図10のように,電流の向きに右ねじを進ませるときのねじを回す向きになる。
導線を曲げると,それにともなって導線のまわりの磁界も変わる。輪にした導線の場合,同じ向きの磁力線が集まって,輪の中心の磁力が強くなる(図11)。
① 磁界の向きは,電流の向きで変わる。
② 磁界は,導線に流れる電流が大きいほど強い。
③ 磁界は,導線に近いほど強い。
④ 磁力線は,導線を中心とした同心円状になる。
電流の向きと磁界の向きの関係は「右ねじの法則」で覚えておくとよいでしょう。
1本の導線を曲げて輪にすると,輪の中央に磁力線が集まりますね。これは,コイルの中心で磁力が強くなることを表しています。
※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.166>
4 コイルと磁界
コイルは,輪にした導線がいくつも連なっている形状である。そのため,コイルの内側ではコイルの軸に平行な磁力線が集まり,磁力が強くなる(図12)。コイルに鉄しんを入れると,鉄しんの先端の磁力がさらに強くなる。
① 磁界の向きは,電流の向きで変わる。
② 磁界は,コイルに流れる電流が大きいほど,コイルの巻き数が多いほど強い。
③ 磁界は,コイルの内側で強い。
④ コイルの内側と外側で,磁界の向きは逆になる。
自分でコイルをえがくときは,導線の前後関係をわざとわかりやすくするのが,ほかの人に上手に伝えるコツです。
コイルの電流と磁界の関係は,「右手の法則」で覚えてもよいでしょう。
図13 巻き方を逆にしたとき
(a)(b) で,電流の大きさ,コイルの巻き数は等しい。
図14 鉄しんのある・なしのちがい
ニュース
※科学ニュースの更新は2025年4月を目処にはじまります。
- 【「方位磁石の北」,「本当の北」から5年で約0.3度西にズレる】 2023年3月1日方位磁石は地球の磁気(地磁気)を利用して方位を知る道具ですが,地磁気の極は北極や南極とは異なる位置にあり,「方位磁石の北」と「地図の北」にはズレがあります。 このズレの角度のことを「偏角」といい,地球内部の変化などを反映して,偏角は常に変わり続けています。このため,国土地理院では5年ごとに偏角など地磁気に関する情報の最新データを公表しており,2022年2月2日に最新版が公開されました。 公開されたデータによると,この5年間で方位磁石の北は0.3~0.5度ほど西にズレています。カーナビやスマートフォンの地図アプリなどでも,このような偏角のデータを用いて補正が行われています。 もと記事リンク