岡山県の天台宗の寺院・圓珠院には,「人魚のミイラ」として長く伝えられてきたものがあります。上半身はヒトかサルのようですが,下半身はヒレがあり,鱗も見えます。
この「人魚のミイラ」の謎に生物学・民俗学の専門家らが迫るプロジェクトの,最終報告が行われました。 結論としては,下半身の鱗は複数の魚の皮を貼り合わせたもの。そして上半身は,哺乳類の専門家が何かの動物だと予想していたほどの出来でありながら,布や紙,綿,石膏などを駆使して作られた精巧な人工物であることが判明しました。 報告を聞いた圓珠院の柆田宏善住職は「『仏様が木を彫って作られたものに魂が宿っている』のと同様のことかなと思います。」と,今後も人魚のミイラを寺の宝として守っていくと話されたそうです。確かに木彫りの仏像も素材で言うなら木ですが,そこに仏様を感じてさまざまな心が喚起されるという点で,単なる「木」ではありません。このミイラも同様に,そこに託されてきた人々の思いや祈りが宿っているといえるのではないでしょうか。