※このウェブページは中学校理科2年の学習内容です。<2年p.41>
理路整然 −智に働けば役に立つ− どうする,正確な質量測定
科学的探究で重要なことのひとつは,「できるだけ正確にはかり,数値化すること」です。調べた内容が数値になっている状態を「定量的である」といい,一方,大まかな傾向を言葉などで表し,数値になっていない状態を「定性的である」といいます。
中学校の探究では,結果を定量的に表すことができず,定性的であることも多くあります。しかし,あなたが社会に出たとき,説得力ある報告をするためには,その内容が定量的であることが求められるようになるでしょう。定量的であれば,他の人が調べた内容と比べやすく,判断しやすいからです。
この探究5では,化学変化の前後で物質の質量を定量的に調べます。科学の歴史の中で見ると,定量的な実験をくり返して,物質の理解の基礎をかためていったのがラボアジェ(フランス, 1743 ~ 1794 年)です。ラボアジェより前の時代の「錬金術師」とよばれる人たちは,定性的な実験をくり返して行いながら,多くの化学変化に関する知識を増やしていました。しかし,手に入れやすい物質から「金」をつくりだすという考えにとらわれ,科学的に正しい物質の理解にはたどりつけませんでした。
ラボアジェは,定量的な実験を行う際に,実験器具をめぐって苦労したそうです。化学変化の前後の微妙な質量変化を精密に調べるためには,当時の一般的なはかりは不十分でした。そのため,職人の協力を得て,精密なてんびんと,質量の基準となる精密な分銅をつくりました。
ラボアジェの研究以降,化学変化の質量についての規則性が明らかになっていき,ドルトンの原子説とつながっていきます。
錬金術師
フラスコに水を注ぎながら何日も煮つめ続けると,底に土のようなものが現れる。"水❶"が"土❶"に変わる証拠だ。
フラスコ自体の質量を正確にはかったら,少し減っていました。その土のようなものは,フラスコの成分が水に溶け出しただけです。
ラボアジェ
錬金術師
物質を燃やすと質量が減る。これは"燃素❶"という物質を燃やす成分が燃えて空気中ににげたためにちがいない。
金属を燃やすと質量が増えることは説明できませんね。"燃素"というものもありません。
ラボアジェ
❶ いずれも,当時考えられていた架空の元素。