これまで,炭素原子どうしが結合する場合,2つの原子が価電子を出し合って共有電子対をつくることで共有結合が形成されることが広く知られていました。しかし,今回発表された東京大学と北海道大学による論文では,炭素原子間の新しい結合様式「-電子結合」が発見され,また,実験的に実証されました。この結合は,炭素どうしが電子1つだけを共有することで形成されるもので,従来の化学結合の理解を根本から覆す可能性があります。
この-電子結合を持つ化合物は,予想に反して非常に安定であり,結晶状態で100℃以上の高温や溶液中の大気下でも扱えることが判明しました。さらに,この結合は近赤外光を吸収する特性を持ち,有機材料の分子骨格を小型化する新しい材料開発への応用が期待されています。
実はこの結合様式は,理論的には約1世紀前に提唱されていたもので,今回の成果は,100年にも及ぶ化学者たちの挑戦に終止符を打つ,非常に重要で,化学結合の理解を深める画期的な一歩として位置付けられています。教科書の内容にも影響を与える可能性があるほど意義深いものです。
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