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小さな世界でジャグリング

普段ジャグリングと聞くと,ボーリングのピンのような道具をいくつも空中に投げ続ける芸をイメージすると思います。それよりもはるかに小さな世界でも,物体が物体を空中に打ち上げ続ける,ジャグリングのような現象が観察されることがあります。これまで,比較的平面であるシリコンオイルの上を,同じシリコンオイルの粒が転がるようにして移動する現象が起こることが知られていました。今回,チリ大学の研究者たちは,「ソリトン波」とよばれる特殊な波を利用して,水滴が水面と分離したまま長時間ジャグリングし続ける現象を発見しました。
ソリトン波は,山と谷が交互に生じる普通の波ではなく,山のみ,谷のみのような単一の起伏によって構成されている波です。実験では,水槽を特定の周波数で振動させて水面にソリトン波を発生させ,水滴の大きさや滴下のタイミングを調整することで,最大90分間にわたり,水滴と水面が一体化することのないジャグリングを実現しました。これは,隆起と沈降をくり返す左右のソリトン波では,水滴を左右の波の間に存在する底よりもわずかに高い位置に固定しようとする作用がはたらいているためと推測されています。研究者らは,この原理を応用することで,同様に波のエネルギーを利用した,2018年のノーベル賞を受賞した技術である「光ピンセット」よりも,さらに大きな粒子を扱える可能性があると考えており,今後の応用に期待がされています。

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