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肉食恐竜には『ほどほど』のものはいなかった?

『肉食恐竜』と聞いて,どのような恐竜を想像するでしょうか? 映画でも取り上げられた,おそろしいキバとアゴをもつ大型のティラノサウルス,あるいは,小型でも狡猾に獲物を追い詰めるヴェロキラプトル…。さまざまなものがあげられると思いますが,では,大型と小型の中間サイズの肉食恐竜はイメージできるでしょうか? 実は,中間サイズのものは化石があまり見つかっておらず,限定的にしか生息していなかった可能性が高いと考えられています。このような肉食恐竜の体サイズの分布は,現在生きている肉食哺乳類では中間サイズのものが多いことと真逆となっており,解明が待たれていました。
この問題について,ニューメキシコ大学では,化石をもとに肉食恐竜の体重の分布を改めて算出したところ,新たな発見がなされました。550種以上の化石を分析し,大型の肉食恐竜がいる地域では中間サイズの恐竜が欠落していることが確認されたのです。その理由は,大型恐竜の幼体にあります。大型恐竜の幼体の生存率の計算結果から,大型恐竜の幼体は長期間にわたり,生態系の中間サイズの捕食者として機能し,独立した中間サイズの恐竜の生存をさまたげていたのです。研究者はこの状況について,“大型肉食恐竜のいる生態系は、彼らの『若者』でいっぱいだった”と述べています。哺乳類では成長が早いためにこのような影響はほぼありませんが,大型恐竜では幼体が10年近く中間サイズで留まり,また成長後は,中間サイズの恐竜の捕食者となるため,中間サイズは生き延びるのが困難であったことが想定されます。
この研究は,体重分布という,ごく基本的な情報の分析から新たな知見が得られた,基礎研究の重要性を示す一例といえます。

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