Logo

あの有名な生物,実は外来種だった

教科書にも写真が掲載されており,誰もが一度は目にしたことがあるであろうミジンコ。全国どこでも見ることができ,現在の日本の淡水生態系を支えている代表的な微生物ですが,実は外来種だったというので驚きです。
東北大学の研究チームは,全国300か所以上の水場から採取したミジンコ(Daphnia pulex)の遺伝子の解析を行いました。このミジンコは,基本的には有性生殖を行わずに無性生殖によって子をふやす生態をとることもあり,祖先となった個体から受け継ぐ遺伝子の特定が比較的容易に可能です。解析の結果,日本のミジンコは,北米産Daphnia pulicariaとの雑種であるクローン生物で,なんとわずか4個体を起源とすることが判明しました。研究ではさらに,北米からの外来種であるミジンコの日本への侵入時期は,700~3000年前であることも推定されました。北米地域との交流といえば,ペリー提督が浦賀に来航してからまだ200年にも満たないので,北米産ミジンコの日本への定着は,人間の活動だけでは説明ができないといえます。
今回の研究結果からは,わずかな個体から全国に生息地を広げていったミジンコは,無性生殖による繁殖力の強さで,これまでにどこかのタイミングで,かつての日本の在来種や固有種を駆逐してしまった可能性が示唆されます。その一方で,有性生殖という手段がないため,遺伝的な多様性が低く,数千年後には絶滅する可能性もあると計算されています。
この研究成果は,日本の淡水生物の由来や進化に新たな視点を提供し,水生生物の侵入・定着のメカニズム解明につながる重要なものであるといえます。

もと記事リンク(外部サイトに繋がります。公開から時間がたつと繋がらない場合があります)

読み取り中...