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もう『パチッ』は怖くない?静電気の“見える化”

冬の乾燥した日に,ドアノブなどの金属をさわると,必ずといっていいほど悩まされる静電気。その原因は,物質間の摩擦による電荷の偏りが原因で発生する,マイナス側からプラス側への電子の流れにともなう放電現象です。人間の皮ふはおおよそプラスに帯電しやすいので,マイナスに帯電しやすい金属に触れると,金属から皮ふへの電子の移動が一気に起こり,そこで発生する『パチッ』のとき,わたしたちはあの不快な痛みを感じています。
静電気の影響は,日常生活ではせいぜい,冬場の限られた時期に限られたタイミングで不快になることがある…程度にとどまります。しかし,精密な電子機器の生産や稼働の現場でとなると,話は変わってきます。機器によっては,大事故につながりかねない誤作動や損傷を引き起こす可能性があるため,静電気の対策は死活問題なのですが,これまではどうしても対症療法を余儀なくされてきました。これは,静電気という存在が目に見えず,事前の対策が立てにくいことが一因です。そのため,静電気を可視化できるセンサーの開発が強く望まれてきました。
そこで,国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)の研究チームは,静電気で発光する材料に着目し,既存の発光物質を調査した結果,あるセラミックスの微粒子が静電気に反応して発光することを発見しました。また,この微粒子は,単に発光するだけでなく,粒の直径がごく小さいため塗料に使うことができたり,電源がいらなかったりというメリットもあります。さらに,発光は肉眼で確認できるため,世界最小の静電気センサーとなることがわかりました。研究チームは,実際にこの粒子を塗ったフィルムが静電気を検知して光るようすの観察に成功しています。
今後は,この新技術を用いて静電気発生のモニタリングや対策の実証実験が進められる予定です。この技術によって静電気の“見える化”が可能となり,データを蓄積することで,トラブルを未然に防ぐことが期待されています。わたしたちの身のまわりでも,冬にドアノブをさわる前に,『パチッ』がくるかどうか一目でわかるようになる日は遠くないのかもしれません。

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