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※このウェブページは中学校理科1年の学習内容です。<1年p.222>

資料 密度で犯人を探せ

 紀元前3世紀,ギリシアの自然哲学者アルキメデスに,こんな逸話が残っています。

 アルキメデスは,国王が職人に作らせた王冠が純金かを調べる仕事を依頼されました。それは,国王から渡された純金の一部を職人がぬすみ,それと同じ質量の安価な銀を混ぜて,国王から渡された純金と同じ質量にしてごまかしている──といううわさを国王が耳にしたからでした。銀を混ぜた金は純金と見た目の区別がつきづらく,また,国王が渡した純金と質量が同じなので,盗んだ証拠がつかめなかったのです。

 アルキメデスは,よい方法がないか考え続けていたある日,町の共同浴場に行きました。浴そうにからだを沈めたとき,あふれ出る湯を見て,すばらしいアイデアが浮かびました。彼はうれしさのあまり「エウレーカ!(みつけたぞ!)」とさけび,はだかのまま家にとんで帰りました。

アルキメデスは,浴そうに沈んだからだの体積と同じ量の湯があふれ出ることに気づいた。

 彼は,すぐに実験にとりかかりました。まず,王冠と同じ質量の金のかたまりを用意し,水を満たした容器に入れて,あふれ出た水の体積をはかりました。次に,同じようにして王冠も調べました。「もし,王冠が純金ならば,同じ体積の金のかたまりを入れたとき,同じ量の水があふれ出るはずだ」と彼は考えました。実際にやってみると,あふれ出た水の量は王冠の方が多く,王冠は純金ではないとわかったのです(右図)。

 アルキメデスが利用した物質の性質は,金や銀といった物質がそれぞれ決まった密度(p.56)をもっていること,金と銀では同じ質量でも体積が異なることです。ただしそれだけでなく,複雑な形をした王冠の体積を調べる具体的な実験方法が必要でした。王冠を高温でとかして,金属のかたまりにもどすわけにもいきません。「水をはった容器からあふれ出た水の体積」は「物体の体積と等しい」,アルキメデスが共同浴場でひらめいたこのアイデアこそが,国王から依頼された仕事を達成する決め手となりました。

銀の密度(10.50g/cm³)と金の密度(19.32g/cm³)から,同じ質量の銀と金で比べると,銀の体積は金の約2倍になる。つまり,金を銀に置きかえるほど,体積は金よりも増えていく。

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