グローバル・データスフィアという考え方は,世界中に存在するさまざまなデータの総量を指しています。この量は近年,爆発的に増大しており,2018年には約33ZB(単位:ゼタバイト。1ZBは1兆GB)であった総量は,2025年には約175ZBにまで膨れ上がるという試算もあります。175ZBというデータ量は,1枚あたりの容量が4.7GB・重量20グラムのDVD-ROMに換算すると,およそ37兆枚・7億5千万トンという途方もない量に相当することから,データの保管場所の整備が急務であることが伝わるかと思います。
一方,わたしたち生物の体内には,膨大な遺伝情報を,非常に小さな細胞の中の,さらに小さな核の中の,さらにごく一部に,きわめて安定して記録・保存しておける,DNAという物質が存在しています。DNAのこの特徴に着目し,シンガポール国立大学の研究チームは,生物学的なしくみを活用した革新的なカメラ「BacCam」を開発しました。これは,DNAに画像情報を直接符号化して保存する技術であり,環境負荷の低い新しい情報ストレージとして注目を集めています。この記録のしくみは,細胞のDNAに光信号を記録し,バーコードで画像識別を可能にし,機械学習によって画像を整理・再構成するというものです。これまでの類似の技術よりも再現性と拡張性に優れており,デジタル機器と生物学の融合による新たな情報保存の道を示す画期的な成果として期待されています。
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