前回に引き続き,暑い季節(※編修部注:記事作成時)なので蚊の特集シリーズです。
蚊がヒトなどの動物から血を吸うとき,長時間吸い続けて見つかり,『ペチッ』とされてしまう危険を避けるため,満腹までではなく,「腹八分目」ほどの量で吸血をやめることが知られています。このようなしくみを実現するには,“血を吸い続ける”という命令に対し,“血を吸うのをやめる”という命令を蚊に伝える何らかの信号が必要と考えられます。吸い続ける命令を出す物質については判明していましたが,吸血をやめる信号については,これまで不明なままとなっていました。この信号がわかれば,蚊の吸血行動自体を止められる可能性が生まれるため,発見が期待されていました。
理化学研究所らの研究チームは,ヤブカの一種であるネッタイシマカを利用して,この“血を吸うのをやめる”信号の解明に取り組みました。その結果,多くの種類の哺乳類で血液が固まるときに生成される,フィブリノペプチドA(FPA)とよばれる物質が,蚊の吸血を途中で停止させる信号としてはたらくことが発見されました。FPAは,吸血の後半で蚊の体内に蓄積し,吸血を促進する物質の作用を上回って,蚊の行動を抑制すると考えられています。
この知見により,蚊の吸血行動を人工的に停止させる手法の開発や,さらには,蚊の吸血行動を介して広まる感染症の拡大を防ぐ新たな対策の開発にもつながることが期待されています。
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