回遊魚とよばれる魚類は,季節の変化や個体の成長に応じて,水中を大きく移動しながらすむ場所を変える特徴があります。では,回遊魚は,目印もない水中をどのようにして長距離移動しているのでしょうか?回遊魚の一種であるニシンにおいては,若い世代は,高齢の個体群にしたがうことで徐々に移動パターンを学習することが知られています。このように,世代間で学習を重ねることで集団としての移動経路を継承してきたニシンですが,いったん高齢の個体数が減ってしまうと,集団としての記憶が失われることが懸念されていました。
ノルウェーで春に産卵を行うニシンは,これまでノルウェー南西の海岸まで長距離移動して産卵していましたが,2021年以降,産卵場が北部へ急移動しました。この原因を探った研究によると,漁業の影響で激減した高齢の個体から,2016年に生まれた大規模な若い世代の集団に対し,回遊経路の継承が困難になっていることがわかりました。また,その結果,若い世代が独自の移動ルートを形成し,高齢の個体がそれにしたがう逆転現象が起きていることも明らかになりました。回遊にともなって大量に産みつけられるニシンの卵は,その水域の生態系を支える重要な資源となっているため,この変化は沿岸の生態系全体にも影響を及ぼす可能性があります。
ニシンは,日本でも北海道沿岸に回遊のルートをもち,かつては春になると海面の色が変わるほど大量に押し寄せる群来(くき)という現象が風物詩となっていましたが,明治~昭和期の乱獲などにより,現在ではその数を大きく減らしています。
もと記事リンク(外部サイトに繋がります。公開から時間がたつと繋がらない場合があります)