放射線は,多量に受けると細胞を傷つける,人体にとって有害な性質があります。その一方で,チェルノブイリ(チョルノービリ)原発事故跡地などには,非常に強い放射線下でも生存できる放射線耐性菌が存在しています。米ユニフォームド・サービス大学保健科学大学院により行われた研究では,この耐性菌を口から『食べる』ことで,他の生物も放射線耐性を獲得できるかというユニークな仮説が検証されました。
実験では,2種類の放射線耐性菌A,Bを準備し,いくつかのショウジョウバエのグループに対し,どちらか一種をエサとして与えた後,強いガンマ線を照射して寿命の変化を観察しました。その結果,耐性菌Aを摂取したグループのオスのハエにおいて,寿命が1〜1.5日延び,特に放射線に弱い腸の細胞の損傷が抑制されるという効果が確認されました。一方,対照実験としてもう一種の耐性菌Bを食べたグループのハエでは,軽減効果は見られませんでした。すなわち,被ばくによるダメージを軽減する効果は,ハエの性別や食べる菌の種類によって異なることが示されました。
この結果は,“放射線によるダメージは,特定の微生物を口から後天的に摂取することで軽減できる”という,被ばく対策の新たな可能性を示しています。将来的には,がんに対する放射線治療の副作用軽減や,大気圏外での宇宙開発,そして原子力災害対応といった分野で,腸を保護するサプリメントのような形での応用が期待されます。今後は,よりヒトに近いマウス等の動物での検証も予定されているとのことです。
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