さまざまな場所で都市化が進む現代,そこでのくらしに適応できるかどうかは,生き物にとって死活問題です。神戸大学などの研究チームは,都市部にくらすスズメバチが何を食べているのかを,DNAを使った最新の方法で解明しました。スズメバチはふつう,幼虫を育てるときには,他の昆虫をえさとして与えていますが,街の中は森に比べて自然が少なく,昆虫の種類も減ってしまいます。そこで研究チームは,コガタスズメバチとキイロスズメバチという代表的な2種類のハチの巣を,それぞれ都市部・郊外からいくつか採取し,さらに巣の中にいる幼虫の腸の内容物を分析することで,食事のメニューを調べました。
分析の結果,この2種類では都会への適応のしかたが異なることがわかりました。コガタスズメバチは,都市部では食べる昆虫の種類を郊外と大きく変えていました。一方,キイロスズメバチは,都市部でも郊外と同じような昆虫を選んで食べており,環境が変わっても好みのえさを探し回っていると考えられます。面白いことに,コガタスズメバチはもともと,キイロスズメバチとの競争に強いハチのため,“強いコガタはもともとと同じものを食べる,コガタに追いやられたキイロは都市部の昆虫を食べることを強いられる”という,分析前の予想とは逆の結果が得られたことになります。このことから,街でのくらしにおいては,環境に合わせてメニューを柔軟に変更して生き残るという生存戦略が有効なことが推測されます。
この研究で,同じ都市部にくらすハチでも,環境変化へ対応する戦略には『個性』があることがわかりました。この知見は,生態の解明や保全への活用といった基礎研究だけでなく,将来的には,都市部で人間の近くに生息するハチへの対策などを考えるヒントになるかもしれません。
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